64話 ワンショルダーの白いトップスですが脈ありでしょうか?
海に行く前日、神奈月からラインが来ていた。
『明日、一緒に駅まで行きませんか?』
なんかえらい丁寧な言葉遣いで二度見したが、間違いなく神奈月からだった。
おかしいな、あいつなら丁寧な言葉に見せかけて、的確に俺の悪口をしれっと文章に散りばめているはずだが、一体なにを企んでやがるんだ?
……どうしようかな。
まぁいっか。
どうせ、弱味を握られいるから選択権も無いし……それに……。
俺は、しばらくして返事を返した。
『別にいいぞ、この前と同じ駅に8時集合でいいか?』
送信すると、2秒後くらいにラインが返ってきた。
『ありがとう、それでいいわ』
返事はっや。
なんだあいつ、海が楽しみでワクワクしてんのかな?
多分、ないと思うけど。
翌日、俺は少し早く駅に着いていた。
田舎なので、1時間に2、3本しか電車が来ないのを心配して早めに来たんだ。
決して、海が楽しみで寝れなかったわけじゃない。
にしても早く来すぎたな、まだ7時だし。
仕方ねぇ、スマホのゲームでもして時間を潰すか。
しばらくして、俺はゲームに夢中でプレイしていた。
「ん〜ここは、どうしようかな」
「そうね、ここはこっちのカードを先に出して除去した方がいいんじゃない?」
「やっぱそうだよなぁ、ってお前いつからいたんだ!」
「10分前くらいかしら、どっかの誰かさんが気づかないままゲームしてるからね」
まじかよ、全然気がつかなかった。
っていうか、すげぇ気合い入ってる服装だな。
上は、ワンショルダーの白いトップスで、肩や胸元が結構出ている。
そして、襟元がふりふりのレースで装飾されている。
下が、ベージュのワイドパンツで神奈月の毒々しいイメージとは真逆の全体的に柔らかい感じの服装だった。
「つーか、なんかすげぇ格好してんな」
「……似合わないかしら?」
「いや、似合ってると思うぜ、お前がそんな可愛い服を着てくるとは思わなかったからな」
「私は、ファッションとかわかんないから、紫陽花が選んでくれた服を買ってるからね、あの子の趣味よ」
「あいつ、自分ではこうゆうの着たがらないくせにな」
「まぁね、だからこそ無理矢理着させるのが楽しいんだけど」
「相変わらず、どSだな」
「そう?否定はしないわ」
そんな雑談をしながら、俺達は電車に乗った。
駅に着いて、しばらく駅のベンチで座って待っていると文月さんが駅の入り口から入ってきた。
「向日葵ちゃん、おはよ」
「おはよう」
「楓さん、桔梗さん、おはようございます」
文月さんは、目をキラキラさせて神奈月に近づく。
「楓さん、今日の服すっごく可愛いですね!」
「あ、……ありがと」
「楓さん、一生懸命選んで……」
文月さんが、何か言おうとした瞬間、神奈月が文月さんの口を手で抑えた。
「……向日葵ちゃん」
「あっ……いえ、なんでもないです」
文月さんは、額に汗を滲ませて目を泳がせている。
神奈月が、ギロッとこちらを睨んでくる。
俺は、ニヤッと笑って見つめ返す。
「へぇ〜実は、一生懸命選んでたんだ?楓ちゃんかわいいねぇ」
「五月蝿い五月蝿い!!」
「ちょちょ!痛い!バックの角は痛いって!」
俺は、やけくそになって持ってた硬そうなバックの角を俺の頭に打ち付けてきた。
ちょ、そんなに怒らんでもいいやん!
その後、10分くらいして蓮華達が改札口から出てきた。
蓮華のニヤけ顔をいじりながら、文月さんの車で俺達は海まで連れて行ってもらった。