62話 白のレースの薔薇柄ですが脈ありでしょうか?
「紫陽花ちゃ〜ん、迎えに来たぞ〜」
俺は、インターホン越しに声をかける。
しばらくして、インターホンから返事が帰ってきた。
「……ちょっと待ってて」
「あの……紫陽花さん、これ3回目なんですけど?」
「大丈夫、君なら待てる!」
「なにその少年漫画みたいなセリフ、もう15分近く待ってるぞ〜」
「……あともうちょっと!もうちょっとだけ!」
「……分かった、あと10分待っとくわ」
「ありがと!」
俺達は、海に行く約束をしていた。
勿論、2人っきりって訳じゃなくみんなで。
と言っても今回は、風鈴は部活でいないが。
すっごくがっかりしてたから、お土産買ってやろう。
今日は一旦、最寄りの駅まで行ってその後、向日葵の車で海の近くまで行くという感じの計画である。
なのでいつも通り、俺と紫陽花が合流して駅に向かおうと思ったんだが、中々紫陽花が出てこない。
一体、何にそんなに時間がかかってるんだ?
それから、10分程待っているとようやくガチャリと扉が開く音が聞こえた。
俺は、扉の方向の逆方向を向いていたので、ぐるっと振り返った。
「ったく、ようやくか……よ……」
俺は、言葉を失った。
その扉の前には、純白のワンピースを着た美少女がいた。
いつものサイドポニーではなく、そのままの肩まで伸びたストレートで、その上にちょこんとカンカン帽が乗せられている。
純白のワンピースは、肩と鎖骨が出ており大人っぽい。ワンピースの白で彼女の肌色がより美しく際立っている。
「どう……かな?」
「……最高」
俺は、顔を隠しながらそう言った。
やばい、可愛い過ぎてニヤけ顔が止まらない。
やっぱり、あのワンピースめちゃくちゃ似合うな。
「……なんで、顔隠してんの?」
「いや……なんでもない」
「……なによ、人が勇気出してこんな格好してるって言うのに、見てくれないの?」
「いや……あの、あーもう!笑うなよ!」
俺は、顔を曝け出した。
視界に再び、彼女の姿が映った。
紫陽花は、ゲラゲラと笑っていた。
「ははひっ!なっ、なにそのニヤけ顔!はははっ!」
「くそっ!笑うなって言っただろう!」
「ははっ!いや、無理だって、あーおもしろかった」
「ったく、だから見せたくなかったのに、つーかなんでこんなに時間かかったんだよ?」
「そりゃ……これ着てたから、覚悟を決めるのに時間がね?」
「まぁそうだな、でもそのワンピース着てくれて嬉しいぜ、7万も払った甲斐があったってもんだ」
「その件は、誠にありがとうございます」
「いいさいいさ、そのおかげで素晴らしい妄想ライフが……」
ふと思い出した。
そう言えば、あんな変態な約束を言った理由って、このワンピースから連想して言ったもんな。
もう一度、紫陽花のワンピース姿を見る。
笑い過ぎて、目に涙が少し出ていてこれもまた可愛い。
気になる。
ワンピース姿の紫陽花の下着が気になる。
「蓮華?どうしたの?」
紫陽花が、心配そうにこちらを覗き込む。
言っても、大丈夫かな?
なんかいつもと雰囲気が違うから、言い出しづらいけど。
ええい!言ってしまえ!
「紫陽花さん」
「……あーはいはい、わかったわよ」
「え?俺はなにも言ってないけど?」
「蓮華が、私をさん付けで呼ぶって事は……どうせあれでしょ?」
「……はい」
「……変態」
紫陽花は、大きくため息をする。
紫陽花「もう、これを着るだけでも結構覚悟したのに!ほら、耳をこっちに向けて!」
俺は、耳を紫陽花に近づける。
紫陽花は、少し背伸びをして肩にちょこんと手を添える。
俺の耳に、吐息が聞こえるほど彼女の顔が近づく。
紫陽花(……白のレースの薔薇柄だよ)