120話 可愛い上腕二頭筋ですが脈ありでしょうか?
「それではエントリーNo3 誤って舞い降りてしまったガチムチメイド!2年 皐月桔梗!!」
とぼとぼと舞台袖から出てくる俺。
静まり返る体育館。
先程まで騒がしかった男どもが、皆一同にスマホの画面しか見ておらず微動だにしていない。
「えっ静かすぎない?」
「仕方ないですね、みんな可愛い女の子を見にきてるんですからね、ほぼ異物混入みたいなもんです」
「俺だって好きで混入した覚えはない!」
「まぁまぁとりあえず自己紹介とチャームポイントをお願いします」
岸田から渡されたマイクを仕方なく受け取る。
「2年 皐月桔梗です、趣味は格闘技、ボクシングでするのも見るのも好きです」
「おい女装も忘れてるぞぉ!」
「そうだそうだ!」
「腹筋見せろぉ!」
「なんか1人脱がそうとしてるやついるんだけど!こわっ!」
普通に自己紹介するだけで、ヤジが飛んでくるんだけど?いつからこの学校の風紀は世紀末になったんだよ。
「えっとチャームポイント……うーん」
チャームポイントってなんだ?
可愛い所って……まぁ長所的なこと言えばいいか。確かポケットの中にあれがあったはず。
俺は、メイド服の両袖を捲り上げる
みんながきょとんとした顔でこちらを見ている。
「チャームポイントは、この可愛く太い上腕二頭筋です」
「おかしいですね、この世の中に可愛いと上腕二頭筋は結びつかないと思いますけど?」
「じゃあ岸田くん、この結束バンドを俺の手首に巻いてくれ」
「えっ?」
「いいからいいから」
「わ、わかったよ」
岸田は、言われた通りに俺の手首に結束バンドを巻いた。
「絶対に解けないくらいギチギチにしてくれ」
「えっ大丈夫?」
「まぁ見とけって」
俺は結束バンドでギチギチに拘束された手首を前に出した。
「はーい、これからこの結束バンドを腕の力で千切ります」
「えっいやいや無理でしょ?」
「大丈夫なんですか?」
心配そうに見てる岸田とアイドル達。
観客は、相変わらず舐め腐った様子で俺を見ていた。
「じゃあいくよ、せーの萌え萌え……ギュン!」
俺は、決めポーズの手でハート作る瞬間に結束バンドを引きちぎった。
弾け飛んだ結束バンドの残骸が落ちる。
弾けるような歓声を期待した俺だったが、結束バンドの落ちる音がくっきり聞こえるくらいに場内は静まり返っていた。
「……あまりの可愛さに声も出ないのか?」
「いや、絶対違うよ!?」




