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今回の話は今までの話よりも、文字数が多めとなっています。
王子たちがこのお茶会で女装する事となった切っ掛け・・・それは、一日前の昼まで遡る。
◇◆◇
走り込みを終え自身の執事を引き連れ、弟王子たちが居た筈の場所に来た兄王子たちは目の前の景色に驚愕した。
何故ならばそこには弟王子たちは居らず、代わりに弟王子にそっくな顔をし、可愛らしいエプロンドレスに身を包んだ幼女たちが居たからだ。
「うっふん、シルビオ様ったら涙目になってかんわいぃわネ~。ホーント・・・食べたくなるじゃねえか」
「・・・ルシアス様に虐められてないのに、なんなのでしょう。この、快感は・・・!」
「「ひいぃっ!?」」
怯えを表す幼女たちを視界に映して声を聴いた瞬間、危険な発言をした変態たちに向かってアルバートとアーヴィルは綺麗な飛び蹴りを変、態共の顔に決めていた。
スローモーションの様に倒れる変態。そして、髪を風に靡かせながら格好良く着地した兄王子達は、幼女こと弟王子達のキラキラした視線に気づき、爽やかに、かつ凛々しく微笑んだ。
「大丈夫かい?僕らの可愛い天使たち」
「今度からは俺らの名前を呼べ。何処へでも駆けつけるから」
「「兄様(兄上)たちかっこいい・・・」」
そんなイケメン発言をした兄王子たちに、弟王子たちはキュンッと、ときめいた。思わず女だったら、兄たちに惚れていた。いや、実際もう男として惚れている。アニキと呼びたいくらいだ。まあ、実際に血の繋がった兄弟であろうと、言われても気持ち的な問題なのだ。
兎に角、兄たちがイケメンすぎてキュンキュンする弟王子たち。見た目が幼女なのもあって、目をキラキラさせ、頬を染めているその姿は、幼い子供の初恋かと錯覚させられるが、彼らの間にはそんな甘酸っぱい感情は無いと、断言できる。何故ならそこにあるのは、兄弟の絆と信頼だからだ。まあ、今回の事もあってその絆と信頼がブラコンと言われる程、深まったかも知れぬが。
王子達が麗しい兄弟愛を深めている横で、執事たちはというと・・・王子達の執事の纏め役である、第一王子の執事、ギルに怒られていた。
「貴様らは一体、自身の主に何を言っているのだっ!!?そういう欲求は声に出さず、思うだけにしないかっ!!」
そうやってモノクルを掛けた目を吊り上げ怒った内容とは、王子を女装させた事ではなく、王子に対し自分の欲求を抑えきれずに声に出したことに対する事に、だった。
その説教を聞いてて、えっ?そこを怒るの?と疑問に感じた者が、唯一その執事たちの中に居た。それは第二王子の執事である少年、ハルクだった。
だが、あえて口には出してツッコまない。理由?理由なんて簡単だ。疲れるから。ただ、それだけだ。
ハルクは怒られている変態執事たちから視線を、ふと外す。すると、目に見えた人物たちに深々と頭を下げその名を、告げる。
「・・・国王陛下、王妃陛下並びに妃様、大変ごきげ・・・」
「公では無いのだから、別に良い」
国王はそう告げると目の前の光景にほう、と目を細めた。その目が段々と面白い玩具を見つけたかの様に、少年の様に輝いた。そして、王妃たちもそれを見つけ、またもや顔を輝かせた。
「あの可愛らしいレディ達は、我が息子達では無いか」
「ルシアスとシルビオですわ」
「随分と愛らしくなってしまわれたの」
「お姫様にしか見えなくなってしまってるわ~!!」
それを聞いたハルクは、今までの事を国王たちに説明した。それを聞き終えた国王はその見目麗しい顔に、ニヤリとした笑みを浮かべると、息子たちに近づき、ぎゅっと彼らをその腕に抱きしめた。
「「「「父さん(親父)(父様)(父上)っ!?」」」」
「そうだ、お前らの愛しのパパだぞ~!!」
いきなりの父の登場に王子達は目を白黒していたが、なんだかんだ皆父が大好きな為、普段忙しくて会えない分甘えまくっていた。その事で王子達は危機判断力が鈍っていた為、気づけなかった。
いつの間にか、王の自室に移動した事に気づけなかった。
そして・・・王が王子達を腕に抱いて逃がさずにしている後で、王妃たちが自分の息子に着せるためのドレスに鬘、化粧道具を持って迫ってくる事にも、気づけなかったのだ。
そしてまたもやその日、城に悲鳴が響いた。
ドレスに身を包んだ王子達は、皆ぐったりしていた。そしてそれぞれ、こういう格好をさせた母たちに涙目になりながらも、キッと睨む。だが、母たちはどこ吹く風とのように、微笑んでいた。そして無情にも王妃が、口を開いた。
「私たちの可愛い王子たち。翌日、その格好でお茶会に参加し、未来に自らの家臣となる者たちを見極めてきて下さいね」
それに王子達は、何を言っているのか理解ができないという顔をする。一体、未来の家臣になる者たちを見極めるのと自分たちが、こういう女子の格好をするのに何の関係が、あるというのだ。
王子達の心情を察してか、王は申し訳なさそうに苦笑を浮かべると、王子達の頭をくしゃと、撫でた。
「王子のまま参加したら、家臣たちは猫を被り、本質が見られないだろう。それに色んな者に話しかけることが出来る為、有能な者を見付けやすくなる。・・・実際に俺は見付けた」
だからお前らも見付けろと言われ、今に至るのだ。
◇◆◇
王子達は一斉に大きなため息を吐き、会場を見回した。
「まあ・・・」
「とにかく」
「・・・有能な人を見付けるために」
「探してくるしか・・・」
「「「「ない」」」」
またもやため息を吐くと、兄王子たちはそれぞれ自分の気になった所に足を進めた。勿論弟たちに、行ってきますと言うのも忘れずに。
行ってらっしゃいと兄王子たちを見送った弟王子たちは、顔を見合わせ、キュッと手を握りあった。
「シルビオ、私たちも行こうか」
「うん。ボクもルーと行く」
幼女姿の王子達は仲良く手を繋いだまま、人の多いところではなく人の少ないところへと、足を進めた。
皆さん今度は、いよいよ主人公中心となる視点になります!
そして、此処で一応王家の者全員と執事全員、登場しました。
皆さんはどのキャラが好きですか?
私は主人公とシルビオの弟王子コンビが好きです。