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小説現代長編新人賞一次選考通過作品をもとに手直ししました。
「武器を持たない人たちを虐殺しています。村々の広場で、ユダヤ人を木の枝に吊るして縛り首にし、家ごと、鼠も同然に焼き殺し、コルホーズや工場の内庭で農民や工員たちを銃殺にしています。……彼らは枝に死体のぶら下がった木の蔭で笑い、食べ、眠るのです」
「《病んだ民族》だ」
――クルツィオ・マラパルテ『壊れたヨーロッパ』
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これは夢だ。
夢うつつで汗だくになって、兵舎の木のベッドで寝ている。疑いようもない。毎晩のようにこんな夢を見るから。
私は森の中にいる。さまよい歩きながら、どこへ行くとも知れず歩いている。少し間隔を空けて、子供がついてくるのがわかる。まだ小さな子供。三歳ぐらい。よちよちとついてくる。よく見ると子供は一人ではない。七歳ぐらいの男の子も一緒だ。よく見たら女もいる。女は妊娠している。大きな腹を重たそうに抱え、いかにも大儀そうについてくる。灰色の髪の毛の初老の男もいる。男の後頭骨はぽっかりと穴があいていて、その空洞はぞっとするほど深く、何も見えない。よくみたら女の腹は破れていて、中から液体がぽたぽたとこぼれ落ちている。七歳ぐらいの男の子はこめかみのあたりがひどく損傷していて、眼窩は空洞で目玉はどこにもない。三歳ぐらいの男の子にいたっては頭がない。にもかかわらず意に介さずよちよちと歩いている。
彼らは私についてくる。一定の距離を保って。それ以上近づくでも離れるでもない。私は彼らの気配を背後に感じながら、ひらけた場所に出る。そこには全身迷彩服姿の完全武装した兵士たちがいて、にやにやしながら傍の穴の中を覗き込んでいる。私も穴を覗き込む。本当は見たくもないのだが、覗き込まないわけにはいかない。穴はどこまでも深く暗く、真っ黒で何も見えない。しかし徐々に目が慣れてきて、中が朽ち果て腐った屍の山だとわかる。屍のはずなのだがそれはそれぞれまだ生きていて、もぞもぞと意味のない動きを続けている。山のてっぺんには金髪の薄いドレスを着た少女がいて、だらしなく弛緩した体を晒している。口をあんぐりとあけ、異常に巨大な瞳を見開いて私の顔をジッと見ている。腹にはいくつも穴が空いていてだらだらと経血のような黒い血が流れている。私は傍らの兵士たちになぜ少女にとどめを刺さないのか聞く。兵士は笑いながらこう答える。
「もう腹に八発ぶちこみました。もうすぐくたばるでしょう」
私の後ろの亡霊たちが兵士たちに見つかり、機関銃でなぎ倒される。その後、穴の中に放り投げられる。ガソリンをかけられ火をつけられる。私はそれを黙って見ている。穴の中から耳をつんざくような悲鳴が聞こえる。その辺りでいつも目がさめる。




