カノジョ
お兄ちゃんには「カノジョ」がいるらしいわ。
「あっ……「カノジョ」から電話だ。」
「昼に電話があるのってめずらしいね。」
お兄ちゃんの「カノジョ」とはお姉ちゃんも仲良くしているみたいよ。
「電話なんだったの?」
「スマホを機種変したんだって。」
「機種変の報告?わざわざ? さすが「まるでカノジョ」だね!」
「そんな報告いらないんだけど…機能確認は自分の嫁か他でやってくれ。」
「カノジョ」って人は細々としたことも報告してくるみたい。
「あー「カノジョ」から電話だ。」
「出ないの?」
「どうしようかなぁ。明日、会うんだけど…… 出ないと拗ねるし……」
「カノジョ」の機嫌を取るのは大変みたいね。
「おつかれサマ。 今日の電話も長かったね。また職場から?」
「そう、仕事しながら。 二時間半だよ。今夜は映画を観ようと思ってたのに……俺の時間を返してくれ。」
「明日、会うのに今日そんなに話して、明日話すことがあるの?」
「まぁ、なんかあるんじゃない? それより、たまには子どもと奥さんの起きてるうちにさっさと帰ればいいのに。アイツの家庭は大丈夫なのか……?」
「まだ、離婚してないから大丈夫なんじゃない?」
お姉ちゃんはあっけらかんとしているわね。
お兄ちゃんは長電話でお疲れの様子だけど、長電話の間は、わたしはお姉ちゃんの膝でゆっくり休めるから大歓迎よ。
お兄ちゃんの長電話の相手は複数人いるみたいね。
別の夜には
「なんでリモートなんだ! おっさんの顔みながら酒は呑みたくない!」
って、電話ごしに言っていたわ。
お兄ちゃんは男の人にモテるんですって。
……お兄ちゃんって、オスじゃなかったかしら?
お姉ちゃんと一緒に出かけても、男の人にもじもじされながら、にじり寄られたり、温泉に行けば、知らないオジサンやオジイチャンに体を触られたと慌てて出でくるんですって。
お姉ちゃんはその度に爆笑してるわ。
「サウナは危険! 入る時間を注意しないと間違えれば、勘違いされて、すごい、よって来るんだよ。」
とか、
「今日はそんな時間じゃないハズなのに、至近距離で話しかけられたうえに、ペタペタ触られた!!!」
お兄ちゃんの大好きな温泉だけど、お兄ちゃんにとっては恐怖の時間に変わることも多いみたいね。
温もりと涼しさを同時に味わえるって、お兄ちゃんも忙しい人ね。




