第一話 六回目の人生
「はっ!」
十四歳のペネロペは深い場所から急に浅いところまで引き上げられたかのような気分で目を覚ました。
目の前に広がるのはフィードレッド公爵邸の自室だった。幼い頃からずっと過ごしてきた部屋だ。
部屋のデザインはシンプルながら調度品のセンスはよく、清楚なお嬢様というイメージがありありと浮かんでくる。
ーーまたか・・・
ペネロペは相も変わらぬ自室の風景に深いため息を吐いた。
レイオンに殺人未遂罪で斬首にされてからというもの、ペネロペの悪夢は覚めない。
斬首にされたのに夢?
変な表現だろうが、実際そうなのだ。
レイオンに斬首だと告げられ、断頭台で首を斬られ意識が飛んだ後、ペネロペは公爵邸の自室のふかふかなキングサイズのベッドの上で目を覚ました。
そして、斬首にされたのは夢だったのかと適当に結論づけて、普通にペネロペ・フレデティカ・フィードレッド公爵令嬢としてレイオンと婚約し結婚したところ、レイオンや兄に裏切られ斬首にされた。
しかし、目覚めればまた公爵邸の自室のベッドにいた。
どうなっているのかよくわからず、しかしなす術もなくまたペネロペとして人生を送っていれば、今度は斬首ではなくともレイオンに暗殺され・・・
目覚めればやはり公爵邸の自室のベッド。
『あぁ!もう嫌!!』
何度も何度も訪れる死と目覚めに辟易したペネロペはついに最終手段としてエルサティアの守護神を祀る主神殿を訪れた。
すると、なんともふざけた話が発覚した。
『そなたが生きたいと願っただろう。我はそなたを哀れに思い、そなたの望みを叶えただけ』
『ふざけないで!私は確かに生きたいと願った!!でも、こんな何度も死んでは生き返る人生なんてまっぴらよ!!』
『だろうな。我でも嫌じゃ』
『なら、今すぐ止めて!』
『・・・それは無理な話だな。我はそなたに対して神力を行使してしまった。もし死にたいのなら、この堂々巡りを終わらせたいのなら、そなたが皇太子や兄と出会わかった場合の寿命まで生きることだ』
『本来の寿命?』
『そなたの人生は皇太子やそなたの兄によって狂わされたのなら、その二人に出会わなかった場合の世界線の寿命まで一度も死なずに生き残れば、我の行使した神力は消えるはずだ』
祈祷室に入った途端に聞こえたその声が、神の声だったのかはわからない。
神の存在なんて、人間の妄想かそれとも現実なのかすらわからない不確実なものだのだから。本来のペネロペはそんなあやふやな言葉に耳を貸しはしないだろう。
しかし、ペネロペには他に方法がわからなかったのだ。
人生がこれ以上ループせずに、やすらかに死ぬ方法が。
現在、ベッドで目を覚ましたペネロペは六回目の人生を歩み始めていた。
もう神には祈らない。今度は、レイオンにも兄にも殺されない。死ぬために生き残るという、確かな目標を抱えて。




