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魔法感染  作者: 正午
7/10

護衛

更新が遅くなってしまい申し訳ありません。作者の諸事情により執筆が遅れてしまいました。それでも楽しんで頂ければ幸いです。

  「...それにしてもどうすっかな、これ...」


  ユウは獅子型の体内にあった赤い宝石を見てボヤく。拠点の自室の窓からは月明かりがさしている。

  ユウは青年が消えたあとしばらくしてからセラ達と合流し、拠点まで戻っていた。アーロンや他の怪我人は医務室で治療を受けていた。


  「どの道もう一回セントラルに報告しなきゃな...」


  ユウはまだ誰にも青年の事、宝石の事を話していなかった。皆獅子型討伐によって疲弊していた事から、余計な不安を煽らないようにするためだ。


  「とりあえずルドベキアの連中についてけばいいか。...それにしても考える事が多すぎるな...」


  ユウはため息を漏らした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  翌日、ユウは傷の回復したルドベキアのメンバーとともにセントラルのある府中区域を訪れていた。アーロンと共にセントラル本部の応接室に入る。室内には信玄が座っていた。


  「よう、玄爺。これ土産な」


  ユウは手土産を信玄に渡す。


  「すまんのぅ。では、早速で悪いが獅子型討伐の件について聞かせてもらおうかの」


  信玄がユウ達に話をするよう促す。


  「私は途中で気絶してしまったからね...話はユウ君に任せよう」


  アーロンが少し申し訳なさそうな雰囲気で言うがユウは気にしなくていいとかぶりを振り、話を始めた。


  「獅子型討伐自体は成功なんだけどな。幾つか気になる事があってな...」


  「ほう、気になる事とは?」


  アーロンが話の先を促す。


  「あぁそれがな――――――」

 

  ユウは赤い宝石の事青年の事、獅子型が作られたモノだという事を順を追って話した。


  「私が気を失っている間にそんな事が...」


  アーロンが衝撃を受けたように言う。


  「そんな事があったとはのぅ」

 

  信玄も深刻そうに言う。


  「まぁ、今俺が知ってることはそれくらいだ。ただ事実なら俺はあの男が許せない。あいつのせいでリュウさんが死んだって言っても過言じゃないからな」


  凍えるような低い声でユウが言った。


  「ユウ君...」


  アーロンも少々表情が曇った。その顔見てユウは申し訳なさそうに目を伏せる。


  「悪いな、熱くなった。それで今後の対応についてなんだが...」

 

  「その事については儂がセントラルの他のメンバーに掛け合っておこう。宝石の件も調べておこう」


  信玄の言葉にユウとアーロンは首肯する。


  「サンキュー玄爺、じゃあ後のこと頼んだよ」

 

  そう言ってユウとアーロンは部屋から出ようとする。そこでユウは信玄に引き止められた。


  「いや、ユウだけ少し残って貰っていいかの...」


  「?...わかった」


  「では、私はこれでお暇しよう」


  「あぁ、またなアーロンさん」


  ユウの言葉にアーロンは軽く手を挙げて答え、部屋を後にした。残ったユウは怪訝そうな顔をして信玄を見る。


  「それで、なんで俺を残したんだ?」


  「それがのぅ...」


  信玄にしては珍しく歯切れが悪い。


  「ユウ、お前さんは昨日獅子型を倒した後、直ぐに報告したじゃろ?」


  「あぁ」


  確かにユウは詳細は省いたが獅子型を討伐したことだけは討伐当日に信玄に報告していた。


  「報告は直ぐにセントラル上層部で共有した」


  それも当然といえば当然だろうあの獅子型は異例であったし、セントラルでも注目されていてもおかしくなかったのだから。先を促すようにユウは信玄を見る。


  「そこで上層部の役員の1人が獅子型を倒すほどの実力を持つお前さんに護衛を頼みたいと言い出しおってな...」


  「いや、待ってくれなんでそうなる?」


  ユウはそこで口を挟んだ。獅子型を倒したからといって護衛を頼む理由が分からなかった。セントラルの上層部の人間なら金もあるし護衛を付けるのは納得できる。しかし護衛ならもっと適任がいるはずだし、護衛経験のないユウに頼むのは不自然だった。


  「その依頼者の娘が獅子型討伐の話を聞き、是非護衛に...ということになっての...」


  信玄は更に申し訳なさそうに続ける。


  「ユウ...どうにか頼めんかのぅ?」


  信玄もセントラル上層部の人間で断れないということもあるのだろう。そのためユウは不安げな表情を浮かべながらも承諾した。


  「まぁ玄爺の頼みならしょうがないか...で?護衛の詳しい内容は?」


  「ありがとうな。護衛の内容は本人達から聞いたほうが良いじゃろう。悪いが明日、またここに来てくれるかの」


  信玄の発言にユウは頷く。


  「了解。っとそういう事なら今日泊まる場所探さねぇと」


  「それならここの宿泊用の部屋を使うと良い。こちらで手続きはやっておこう」


  「サンキュー玄爺、色々と悪いな」


  「いやこちらが依頼したようなものじゃからな。寧ろこっちが感謝せねばならんな」


  お互いに頭を下げ軽く微笑を交わすとユウが窓の方を見ながら言った。


  「おっともうこんな時間か」


  ユウが窓の外を見ると空はオレンジ色に染まっていた。セントラルまでの移動と話し合いによってかなり時間が経っていたようだ。話し合いも区切りがつき、ユウが席を立った。


  「じゃあ玄爺また明日な」


  「おぉ、今日はゆっくり休むと良い」

 

  その言葉にユウは首肯し部屋を後にした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  翌日ユウは応接室で依頼者を待っていた。少しの間のあとドアが開いた。入ってきたのは、スーツを着ている小太りの男と黒いドレスのようなものを纏った青みがかった黒髪の可愛らしい少女だった。


  「いやぁ、遅れてすまないね」


  小太りの男が頭を掻きながら言う。


  「いや、気にしないでください」


  相手は依頼者ということでユウは敬語で応対する。言いながら2人に椅子に座るよう促す。2人は着席し男のほうが口を開いた。


  「初めまして僕は譲二と言う。君がユウ君でいいかな?」


  右手をユウに差し出す。ユウはその手を握った。


  「はい、グラジオラス所属で今はリーダーを務めています」


  「そうか、宜しく頼むよ。あと僕は堅苦しいのが苦手でね、普通に話してくれて構わないよ」


  ユウはその言葉に了解し、譲二の隣に座っている少女を目を向けた。歳はユウよりも少し下だろうか。先程から少女の黒い瞳がユウをじっと見つめていた。


  「あぁその子は私の娘だ」

 

  譲二が言うと少女が初めて口を開いた。


  「いかにも、我の名はアヤメと言う。以後宜しく頼む」


  少々変わった口調のためユウは一瞬惚けるが直ぐに気を取り直し言葉を返す。


  「あぁ宜しく」

 

  アヤメとも握手を交わし、ユウは言葉を続けた。


  「えっと...それで依頼のことなんだけど...」


  「あぁその事だね。話は信玄から聞いていると思うが、護衛を頼みたいんだ」


  そこでユウは昨日からの疑問をぶつけた。


  「そのことなんだけど、どうして俺なんだ?セントラル上層部の譲二さんなら護衛くらい居るんじゃないのか?」


  そこで譲二は表情を曇らせる。


  「あぁ居るには居るだかセントラルに来る途中に魔物に襲われて何人かが犠牲になってしまったんだ」


  「詳しく聞かせてもらっても?」


  譲二は首肯し語り始めた。


  「僕達の住んでいるところは横浜地区でね、セントラル本部に用があって横浜からこっちに来たんだ。護衛を何人か付けてこちらに向かっている途中に狼型の魔物の群れに出会してね...」


  そこまではよくある話だろう。結界魔法の張られていない場所に出れば魔物に襲われるのは当然だ。だから護衛を付けていたのだろう。


  「ただその群れが異常だった。1匹を中心にやけに高度な連携をとり次々と護衛を倒していったんだ。そこから僕達は命からがら逃げ延びこのセントラルまでたどり着いた。そこで君の話を聞いたんだ」


  「獅子型のことか?」

 

  「そうだね、今まで確認されていなかったサイズの獅子型を倒した君なら今回の狼型でもどうにかなるのではないかいったところだね...それに娘も君の話を聞いて是非にと言っていたからね」


  「お父様!」


  アヤメが顔を赤くして譲二に抗議の声を上げる。


  「じゃあ今回の護衛っていうのはその狼型から守ってくれっていうことでいいのか?」


  譲二は頷きそれに付け加える。


  「出来れば討伐も、といったところだね。これ以上被害が出る危険もあるし...まぁ無理にとは言えないが...」


  「それは実物を見てからだな。無理そうなら護衛に専念するって事でいいならその依頼を受けるよ」


  「おぉありがとう!」


  「うむ、感謝するぞ」


  2人が感謝の言葉を口にする。


  「そうだ、その護衛に俺の仲間も連れて行ってもいいか?獅子型を倒せたのは仲間のお陰でもあるから...」


  「あぁ、それならなおのこと心強いよ」


  「ありがとう、と言っても急な話だし何人集まるか分からないけどな」


  ここでユウ達は会話を一旦切り上げた。ユウは拠点にいるグラジオラスのメンバーにこの事を話し協力を募った。その後、軽く食事をとり応接室に戻って談笑をしながら時間を潰す。連絡から数時間後、セラが到着した。


  「おっ着たか」


  ユウがセラを応接室に招き入れる。するとセラは呆れたようにユウを見ながら言う。


  「着たか、じゃないですよ全く。まだ獅子型討伐からロクに休んでもいないのにユウさんはまた厄介事をするつもりですか?」


  「いや昨日は休んだし、疲れも溜まってないから大丈夫かなと」


  「そんなのユウさんだけですよ。他の人はまだ疲れが溜まっているということなので拠点で待機してもらってます。ミナキさんは大丈夫そうでしたが残ったメンバーの統率のため残ってもらいました」


  まぁ獅子型討伐から間隔も空いていないし、大して集まることはないだろうと思ってはいたが来たのがセラだけとは予想外だった。


  「悪いな譲二さん仲間を呼ぶと言っておきながら全然集まらなくて...」


  軽く凹みながらユウが譲二を見る。すると譲二は気にするなと笑う。


  「こちらの護衛もまだ残っているし問題は無いよ」


  「そうか、助かる」


  「出発は明日の朝で大丈夫かな?」


  「わかった。じゃあ朝までに準備を整えとくよ」


  そこでユウ達は一旦解散し翌日に向け準備を開始した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  翌日、ユウたちはセントラルの外門に集まっていた。ユウとセラの前にはガタイの良い男が立っていた。


  「ユウとセラだな、俺は護衛隊のリーダーのギンジだ。今日1日だが宜しく頼む」


  「あぁ宜しく」


  「宜しくお願いします」


  それを見て譲二が出発を促す。


  「挨拶も済んだことだし出発しようか」


  『了解』


  全部が了解の意を示し、横浜地区へと出発した。

魔法感染7話を読んでいただきありがとうございます。誤字脱字等ございましたらご指摘下さると幸いです。感想もお待ちしております。次は感想でキャラの説明回があっても良いのでは?という意見を頂きましたのでキャラの説明会にしようかと考えています。

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