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魔法感染  作者: 正午
5/10

修行

魔法感染5話です。楽しんでいただける嬉しいです。

  「おらぁぁぁ!!」


  バチィ!!


  修行初日、ユウは御岳山山頂付近で《岩》に電撃を纏った拳を打ち込んでいた。


  「くそっ!!難しいな」


  トウコがユウに課した課題は【魔力の収束】簡単に説明すると魔法を打ち込む際に拡散していた威力を一箇所にまとめ、威力を上げるというものだ。


  『ユウ、お前の魔法は威力が拡散し過ぎてるんだよ』


  ユウは師匠のトウコの言葉を思い出していた。以前ユウは魔力を集中させた拳で道路を砕いたことがあったがそれでも魔力が拡散して威力が落ちていたという。


  「それにしても難易度が高ぇな」


  そんな事を言いながらも黙々と拳を岩に打ち続ける。

 

  ガッ!!


  何度目かの打ち込みで魔力の集中を切らし強化されていない拳が岩に当たった。

 

  「っ~~~~~~!!」


  思わず拳を抑えてしゃがみ込む。


  「くそ...痛ってぇ...」


  しかしすぐに拳を握り直し打ち込みを続けた。山に拳と岩がぶつかる音が響き続ける。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  一方その頃、セラはログハウスでトウコと机を挟んで座っていた。眼前では湯のみに入ったお茶が湯気を立てている。


  (あれ?私も修行するんじゃ......?)


  セラは首をかしげていた。そこでトウコは口を開く。


  「あいつは...ユウは部隊ではどんな感じなんだい?」


  「どうって...部隊エースで最近にはリーダーになって...」


  そこまで聞いてトウコは首を横に振る。


  「あぁ...そうじゃなくてね。ユウはちゃんと人に関われているかい?」


  「えぇ、大丈夫ですよ。今ユウさんがリーダーやってるのだって皆に推薦されたからなんですから...」


  「..........そうかい...ユウが...」


  トウコが感慨深いといった様に何度も頷く。そして切り替えるように息を吐いた。


  「さて、じゃあ修行と行こうか」


  お茶を飲み干しセラがトウコに目を向ける。


  「はい...それで私は何をすれば?」


  「まずはあんたの魔法を見してみな」


  「わかりました」


  セラが机の上に氷を生成する。


  「ほう...氷の魔法か...なかなか応用の効きそうな魔法だね」


  「...それで私は何をすれば?」


  セラが少し急かす様な口調で言う。


  「まずは...そうだね、あんたが着けてるエンブレムを氷で造ってもらおうかな」


  「はぁ...それはまた何でですか?」


  「なんでだと思う?」


  理由を問うセラに面白がるように言うトウコ。

 

  「形が少し複雑だからですか?」


  セラが着けているグラジオラスのエンブレムは花を象っていて少々複雑な形をしている。この複雑な形を生成するには細かな魔力操作を行いながら形を作っていく必要があるためトウコはこの課題を出したのだとセラは思った。


  「そうだ...それにこのエンブレムを正確にそして素早く造ることが出来てればあんたの魔法は全体的に強化出来る。魔法の展開速度もね。」


  「っ...!」


  前から強化しなければと思っていた魔法の生成速度の遅さという点が克服出来るとわかり思わず息を呑むセラ。


  「そら、さっさとやってみないか」

 

  「はい!」


  セラは氷でエンブレムを造りはじめた。


  「さて、私はユウのほうを見てくるかね...」


  トウコはユウの修行場の岩の前に向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  「おらぁぁぁ!!」


  バチィィィィィ!!


  ユウが拳を叩きつけた岩が綺麗に真っ二つになった。

 

  「ほう...いい感じじゃないか」


  そんな事を言いながらトウコが歩み寄ってくる。


  「なんだ師匠こっちに来たのか。セラは?」


  「あの子にはもう課題を出しておいたよ。それにしてもあんたは飲み込みが早いね...もうほとんど出来ているじゃないか」


  「時間があんましないからな。少しでも早く出来る事は出来るようにしないと...」


  「そうかい...」


  トウコが母親のように優しげな目を向ける。


  「......どうだい?久々に組手でもやってみるかい?」


  トウコが微笑みながら言うとユウも微笑む。


  「いいね、久々に師匠と組手か...」


  二人は一度距離を取る。


  「今回は魔法はなしの魔力強化のみでやる。いいね?ユウ...」

 

  「OK、師匠」


  二人の緊張が高まる。どこかで鳥の鳴き声がした。それを合図に二人が距離を詰める。


  「っ!!」


  まず仕掛けたのはユウだ。右拳をアッパー気味に振り抜く。


  「ふっ!!」


  しかしユウの拳はトウコの掌によって受け流される。そしてスキが出来たユウに手刀を叩き付けた。


  「...ちっ!!」


  ユウは体を捻り回避。すかさず距離を取る。


  「へぇ...あれを避けるかい。なかなか腕を磨いたみたいじゃないか」


  「師匠のほうこそ前よりも早くなってないか?」


  「まだまだ弟子には負けられないからね」

 

  「弟子としてはそろそろ勝ちたいもんなんだけどな」


  「楽しみにしてるよ」


  今度はトウコが仕掛ける。一瞬で距離を詰め、手刀の突きを放ってくる。ユウはその腕を掴み勢いを利用してトウコを地面に叩きつけるようにして投げた。


  「ぐっ!!」


  トウコが呻き声を上げる。


  「よし!!」


  「っまだ!!」


  一本取ったという気の緩みが出ていたユウの足を取り転倒させる。ユウは受身を取るのに失敗し地面に頭を打った。


  「っ痛っぅ!!」


  「ははは、まだまだ甘いね」


  それを見てトウコが笑う。


  「チクショウ...」

 

  ユウが笑うトウコを見て悔しそうに言った。


  「でもまさか私が一本取られるとはね。本当に強くなったよ」


  トウコが地面に大の字に寝っ転がりながら言う。二人が並んで横になっている感じだ。


  「そうかな...ありがとう師匠。久々に組手出来て良かったよ」


  「そりゃ良かった。私も久々に楽しめたよ。......そろそろログハウスに戻るかね...」


  辺りを見回すと空はオレンジ色に染まっていた。


  「そうだな、帰ろうか師匠」


  ユウは立ち上がり横になっているトウコに手を差し伸べた。


  「あぁ...帰ろうか」


  トウコはその手を取り立ち上がる。服に着いた土を払い二人はログハウスに帰った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  「......出来ました」


  トウコのログハウスに来てから一週間が経とうとしていた。セラは既に十数秒しないうちにエンブレムを完璧に氷で再現できるようになった。トウコの指導もあり上達も早く、魔力操作の練度もかなり高くなっていた。


  「よく出来ているじゃないか。私が見れるのは今日で終わりだがこの訓練は続けておきな、魔力操作には底が無いこれからも努力を積み重ねていくことだ」


  「はい!」


  「そろそろ行かないと行けない時間じゃないか?」


  トウコが壁の時計を指す。


  「おっと、もうこんな時間か。セラ、直ぐに出るぞ」


  「わかりました」


  二人は手早く準備を済ませ、ログハウスを出た。ログハウスの前でトウコに向かって礼を言う。


  「師匠ありがとう。いろいろ修行付けてくれて助かったよ」


  ユウは魔力の収束の修行の傍らトウコと何度か組手をしていた。そのため攻撃に対する反応速度も格段に上げることができた。


  「本当にありがとうございました。私も課題を進めて、実力がついた気がします」


  「そうかい、役に立った様で何よりだよ」


  トウコは嬉しそうに頷く。


  「それとセラ、あんたも私ことを師匠と呼んでくれていいんたよ?」


  「はい、ありがとうございました師匠。行ってきます」


  「あぁ、頑張ってきな」


  「それじゃあ師匠、またな」


  「死ぬんじゃないよ」


  トウコの言葉にユウは苦笑する。


  「努力はするよ...さて、そろそろ行くか」


  「...そうですね」

 

  二人は少々名残惜しそうにログハウスを後にする。


  「......あの二人がどこまで強くなるか楽しみだよ」


  二人が去った後トウコはそう呟いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  ユウとセラが戻った翌日、アーロン率いるルドベキアの討伐編成チームがグラジオラスの拠点にやって来た。広間にグラジオラス全員とルドベキアの討伐チームが集まる。


  「ようこそ、ルドベキアの拠点と比べたら狭いだろうが討伐までゆっくりしてってくれ」


  「おや?前に見た時よりも強くなったみたいだね」


  アーロンがユウの顔を見るなり言ってくる。


  「そんなのわかるもんなのか?」


  「立場上様々な人を見てきたからね、そういう事には鋭いんだよ」


  「流石...」


  ユウは感心するがすぐに我に帰り話題を討伐の事に移した。


  「さて、一週間後の討伐のことだが...」


  「その事なんだがユウ君こちらから作戦を提案したい」


  アーロンはユウの言葉を遮り作戦を提案した。


  「...どうだろうこの作戦は?」


  アーロンの作戦を聞きユウも頷く。


  「ほう、それなら行けるかもな」


  「だがこれには正確な魔力操作が出来る者が必要なんだ」


  アーロンが問題点を言うがユウは「大丈夫だ」と返した。そしてセラを呼ぶ。


  「...セラこういう事なんだが」


  「......早速修行の成果が発揮できそうな感じですね」


  「いけるか?」

 

  セラは少し難しそうな顔をするが首を縦に振った。


  「やります。やって見せます」


  「サンキュー、セラ」


  「はい、頑張ります」


  そこでユウはアーロンに向き直る。


  「でもアーロンさんの作戦だと獅子型を抑えておく人がいないといけないんだが...」


  「それは私とユウ君を主軸に何名かで交代しつつ抑えよう」


  「わかった。じゃあ残りの一週間でそこのとこを詰めるか」


  それから一週間グラジオラスとルドベキアでの連携の練習が行われた。最初は上手く行かなかったものの一週間のうちにほぼ息を合わせられるようになった。

  一週間後二部隊合同の討伐隊がグラジオラス拠点前に集まっていた。


  「昨日のうちに獅子型を探しに行ったうちのメンバーが獅子型を見つけて追跡している。通信機で現在の獅子型の位置を教えてくれた。まだ渋谷付近にいるらしい、今から渋谷に向かい見つけ次第作戦開始だ。皆、よろしく頼む」


  『了解!』


  ユウの言葉に皆が了解の意を示す。そしてユウとアーロンに率いられた討伐隊が渋谷に向けて移動を開始した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  獅子型は渋谷の廃ビル群にいた。身体にはユウが落下させたときに付いたのか幾つかの大きな傷があった。


  「獅子型発見、皆位置につけ」


  アーロンが指示を出し、皆が位置に着く。獅子型はまだこちらに気がついていない。皆が位置についたのを見計らってユウが指示を出す。


  「...良し、作戦開始だ」


  その言葉を合図に獅子型討伐が始まった。




 

 

 

魔法感染5話を読んでいただきありがとうございます。次の話はバトルを書きたいと思っています。作者の都合で申し訳ありませんがテストが迫っているため投稿ペースが落ちてしまうと思います。すみません(泣)

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