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魔法感染  作者: 正午
4/10

協力

まだまだ初心者なのでこれから上手く書けるように頑張ります。

  ユウたちが森を駆け抜け府中区域に着いたのは日が傾き始めたころだった。


  「......やっと着いたな...」


  「...そうですね...やっと...」


  森での一件?もあり二人は疲労がマッハだった。


  「とりあえずセントラルに行くか...」

 

  「はい...」


  府中区域の入り口から二人は歩き始めた。


  「それにしても流石府中区域...大きいですね...」


  セラが辺りを見回しながら感嘆したように言う。

 

  「流石府中区域って感じだな...」


  ユウも同意しビル群の間を縫うように歩いていく。

  府中区域は東京で最も被害が少なかったためセントラルが作られた。今では高層ビルが幾つも建っている。内幾つかは戦闘系以外の魔法をもつ非戦闘員用の居住地になっている。

  セントラルの前まで来たところでユウたちに声をかける者がいた。


  「やぁユウ君、セラ君。久しいな」


  ユウたちに声をかけたのは群青色の髪を刈り上げチェーンメイル着たいかにも騎士風の男だった。

 

  「おぉアーロンさん久しぶり」

 

  「お久しぶりですアーロンさん」


  「いつも言っているがアーロンと呼び捨てで良いのだよ?」


  騎士の男アーロンはイギリス人と日本人のハーフで背が高い。彫りが深く少し威圧的に見られることが多いがアーロン本人は気さくでとても心優しい性格をしている。


  「いやいや...大型部隊の【ルドベキア】のリーダーを呼び捨てには出来ないって...」


  「そうか...」


  アーロンは少し残念そうに肩を落とした。

  アーロンがリーダーを務めるルドベキアは総人数が百人越えの大型部隊で世界に存在する部隊の中でもかなり上位の実力派だ。エンブレムは剣と盾をモチーフに作られたもので騎士をイメージしたものだ。そしてセントラルが位置している府中区域を拠点としている。


  「それはそうとどうしたのかな?ユウ君たちがセントラルに出向くとは珍しい......リュウはどうした?」


  アーロンはリーダー同士ということでリュウと気が合い、共に酒を飲んだりする仲だった。そのためリュウがいない事が気になったのだろう。


  「.........その事なんだが..」


  ユウが獅子型のこと、リュウが死んだことを手短に説明するとアーロンは険しい表情になった。


  「そうか......リュウが.........残念だ...すまない、そうとは知らず...」


  アーロンが申し訳なさそうに言った。

 

  「得心が行った。なるほどセントラルに来たのは獅子型の報告ということか...」


  「あとはリーダーについての報告かな」


  ユウが捕捉する。


  「そうか、君がグラジオラスのリーダーになるのか...これからよろしく頼もう」


  「こっちの方こそよろしく」


  二人で握手を交わした。


  「おっと少し暗くなってきてしまったね。また会おう」


  「あぁ今度な」


  アーロンが立ち去ったのを見届けセラと共にセントラルのビルに入る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  「ほう...巨大な獅子型とは...物騒になったものじゃのう」


  ユウとセラはセントラルの一室で机を挟んで白髪の小柄な老人、信玄と話をしていた。彼はセントラルの幹部にあたる人物でそれなりに権力も持っている。


  「物騒なのは昔からだろ?玄爺」


  「玄爺なんて信玄さんに失礼ですよユウさん」


  「いやいや...親しみがあって嬉しいくらいじゃよ」


  そんな信玄にユウが馴れ馴れしく話しているのはユウと信玄が十年以上昔から知り合いだからだ。


  「...いや最近は特に物騒になった......しかし儂の知り合いも連絡がつかない事が増えての...」

 

  信玄が古びた写真を見せながら言ってきた。うち何人かとは連絡がつかないという。そこまで言って信玄は話を変えた。


  「リーダー事と獅子型の件は了解した。獅子型については討伐に協力してくれる部隊を探しておこう......」


  「わかった...ありがとう玄爺」


  ユウは信玄に礼を言ってセラと部屋を出た。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  翌日、宿泊施設に泊まったユウたちは練馬区域に戻ろうとしていたところでアーロンに声をかけられた。


  「やぁユウ君。ここを出る前に会えて良かった」


  「アーロンさん、どうしたんだ?」

 

  「いや獅子型の討伐に協力出来る部隊を探していると信玄さんから聞いてね...うちの部隊で何人か出そう」


  その言葉にユウとセラは目を輝かせた。


  「協力してくれるのか!?」


  「あのルドベキアがですか!?」


  「ああ、協力出来る人数が少なくてすまないが...」


  「それでも充分だ、ありがとうアーロンさん」


  「いや、リュウの仇には私からも挨拶しておかなくてはならないからね」


  アーロンが鋭い雰囲気を纏いながら言った。


  「だがうちの部隊を動かすには少し時間がかかってね...部隊の編成に一週間、部隊同士の連携を取るためにもう一週間、討伐は二週間後くらいになりそうだね...それでも大丈夫かな?」


  「いや、こっちも色々準備期間が必要だから大丈夫だ。本当にありがとうアーロンさん」


  「...では二週間後にまた会おう」

 

  そう言ってアーロンは立ち去った。


  「協力が得られて良かったですね...」


  「しかもルドベキアだしな...」


  ユウとセラはアーロンの言葉にまだ実感が湧いていないようた。


  「とりあえず俺たちは拠点に戻るか...」


  「そうですね...」


  二人は身支度を手早く済ませ拠点に向かった。幸い帰りは騒動もなく無事に練馬区域まで戻ることが出来た。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  翌朝拠点に戻ったユウはグラジオラスのメンバーを広間に集めた。


  「とりあえずセントラルで獅子型の討伐に協力してくれるとこ探したらルドベキアが協力してくれることになった」


  集まっていたメンバーがどよめいた。


  「それでだ...あっちは部隊の編成なりで一週間準備期間が欲しいってことと、連携取るための期間でもう一週間かかるから討伐は二週間後な」


  「了解、それで一週間の間どうするんだい?」


  ミナキが聞いてきたのでユウが答える


  「とりあえず戦力強化だな...俺は一週間山に篭るけど皆はどうする?」


  「ユウさん...まだ病み上がりみたいなものなんですし少しは休んだ方が...それに山って危険じゃ...」


  「いや、大丈夫だ...ルドベキアに協力してもらえるんだから少しでも強くなっておきたいからな.....」


  「ユウさん...」


  怪我のことを気にしていないユウにセラが不安げな声を上げる。


  「なら私も行きます」


  「おぉうなんかデジャブ...」


  「ふざけないでください!...ユウさんをこのまま行かせるのは不安です....それに私も強くなりたいですから」


  「わかった...他のやつはどうする?」


  「僕はここに残る人たちをまとめながら訓練しておくよ。それに獅子型がこの街を襲わないという保証もないから誰かが残らないとね」


  ミナキがそう言ったのでユウは少し申し訳ないという感じで頭を下げた。


  「悪いなリーダーになったってのにミナキに任せてばかりで...」


  「いや、僕はサポートできればそれでいいよ。ユウはユウの思うように動けばいい」


  「そうか...ありがとうミナキ.........ミナキはそれでいいとして後はどうする?」


  ユウが聞くと森で修行するというものや拠点に残るという者がいたが山に行くと言う者はセラ以外にいなかった。


  「じゃあ俺達は山行くけど渋谷は物騒だから近づくなよ」


  皆はその言葉に各自了解の意思を示し頷いた。


  「...よし俺達は荷物まとめに行くぞ。セラ、40秒で支度しな」


  「...いや40秒はちょっと...」


  「そんぐらいのイメージでやれってことだよ!...マジレスされるとなんかキツイな...」


  そんなこんなでユウとセラは準備を済ませ出発した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  練馬区域を出たところでセラがユウに問う。


  「それで山ってどこの山なんですか?」


  「御岳山だよ」


  「それはまた何で...?」


  「着けばわかる....」


  はぐらかすかのようなユウの言葉にセラは首をかしげる。

  練馬区域から青梅にある御岳山までは迂回していけば森のような障害物はないが魔力強化したユウたちの足でも少々時間がかかる。何故ユウが御岳山を選んだのかセラにはわからなかった。

 

  「......それにしても玄爺には感謝だな」


  「あぁ...ルドベキアの協力についてですか」

 

  魔力強化を施し所々ひび割れた道路を走りながらユウたちは信玄について話していた。


  「多分ルドベキアが動いてくれたのは玄爺が働きかけてくれたからだと思う」


  「でもアーロンさんは仇が打ちたいって...」


  「アーロンさん個人なら俺からの問いかけでも動いてくれたと思うよ...でもルドベキアみたいな大型部隊になると話は別だ。俺個人の発見じゃ動くのは難しいかっただろう...ルドベキアが動いてくれたのはセントラルでそれなりに権力を持ってる玄爺が話を通してくれたからだと思う」


  「なるほど...そう考えるとルドベキアが動いてくれたのも納得です。本当に信玄さんには感謝ですね」


  「今度菓子折りでも持ってくか」


  「ふふ...そうですね」


  セラがユウの言葉に微笑む。二人はガレキなどを飛び越えながら御岳山を目指す。


  「それでユウさん...そろそろ御岳山に行く理由を教えて貰ってもいいですか?」


  先程の会話から数十分後再びセラが訪ねてきた。


  「そろそろ着くからもうちょっと待て」


  ユウが前方を指差しながら言う。確かに目的の御岳山はかなり近づいてきた。


  「......いい加減教えてくれてもいいのに...」


  「......なんか言ったか?」


  「何でもないです!...急ぎますよ!」


  「お、おう」


  二人は速度を上げ、御岳山までの道を駆けた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  ユウたちは御岳山の麓まで来ていた。

  人の手が入らなくなった麓は木々が生い茂り森のようになっていた。斜面がある分森よりも厄介そうだ。


  「よし、じゃあ山頂まで登るぞ」


  「え?修行は?」


  「とりあえずは山頂に行ってからな」


  言うが早いかユウは木々が生い茂っている山道に入っていく。


  「......わかりました」


  セラが少しばかり腑に落ちないというように返事をしユウに続いた。

  山に入ってから数分後、異様な光景が目に入ったためセラが声を上げる。


  「何ですかあれ?黒い影?」


  セラの言う通り木々を伝って黒い影の様なもの高速で近づいてくる。


  「あぁあれか...ムササビの魔物だな」


  「ムササビ?」


  「あぁCTVが発生する前から元々御岳山にいたんだってさ。感染した後は夜行性じゃなくなったみたいだけど...」


  そんな事を言っている間にムササビの魔物が迫ってきた。CTVに感染する前はなかったであろう異常発達した牙でユウに攻撃をしかけてくる。


  「よっと......せい!」


  ユウは危なげなく回避し掌から軽く電撃を放つ。


  バチィ!!


  「ピギ!?」


  ムササビの魔物が奇妙な鳴き声を上げて地面に落ちた。ムササビはビクビクと痙攣している。セラは落ちた魔物を覗き込んでなんとも言えないような顔をした。


  「この牙が無ければ可愛いんですけど...」


  「そうだな...俺もそう思う。さて切り替えて先に進もうか」


  「......そうですね」


  二人は再び山頂を目指して歩き出した。

  二人は程なくして山頂に着いた。しかし山頂には何故か大きなログハウスのような物が建っていた。そのログハウスにユウは躊躇いなく入って行く。


  「え?あっ...ちょっと待ってください!」


  何故家が建っているのかと呆然としていたセラが慌ててユウを追う。


  「ただいま、師匠!いるか?」


  ユウがログハウスの玄関でそんな言葉を発した。

 

  「え?師匠ってどういう...」


  セラが状況についていけないという様に唖然としている。するとログハウスの奥から古びた袴を身に付けた女性が現れた。髪はショートボブのように短く切りそろえられ、左目には傷がありその目は閉じられている。開かれている反対の目は鋭い光を帯びている。見た目は若々しいがどこか浮世離れした空気を纏っているため実年齢を見極めるのが難しい。ユウに師匠と呼ばれた女性はユウを見ると微笑み声をかけた。


  「久々だねバカ弟子」


  「...ここ数日久々というニュアンスの言葉をよく聞く気がする。あとバカ弟子は止めてくれ師匠...」


  こめかみに手を当てながらユウが言った。


  「ユウさんが任務ばっかりして人に会いに行かなかったからでは...?」


  若干ジト目になりながらセラがユウを見た。


  「おっとそっちの女の子は彼女かい?ユウも成長したもんだね」


  「あ〜いやセラは彼女じゃなくて同じ部隊の仲間だよ」


  「はい、ユウさんの《仲間の》セラと言います。よろしくお願いします。」


  セラが仲間という事を強調して言う。どこか氷のように冷たい雰囲気があったがユウは気が付かなかった。


  「そうか私はトウコだ。よろしく頼む。さぁ立ち話もなんだから上がりな」


  ユウの師匠トウコは二人を居間に上げた。一息ついてセラがトウコに質問する。

 

  「なんで山の上に家があるんですか?」


  「元々は神社があったんだけどね...魔物に壊されてしまったんだよ。山には魔物が住み着いてね...神社の立て直しも出来ないということさ。そこに私が家を建てた。家の裏手には神社にいた神様のために祠を建てたから後で見ておきな」


  そこまで聞いてセラは気になっていた事を聞いた。


  「はぁ...それでユウさんの師匠というのは...?」


  「そのままの意味だよ私がユウに魔法の使い方を教えて鍛えたんだから...」


  「なるほどだから師匠と...ユウさん、御岳山に来た意味って...」

 

  「あぁちょっと師匠に頼ろうかとな」


  「ん?何を頼るってんだい?」


  「あぁ実はな――――――」


  ユウはなるべく手短に獅子型のこと、所属していた部隊のリーダーが死に自分がリーダーになったこと、その獅子型を討伐するために修行したいことを掻い摘んで説明した。


  「――――――なるほどそういうことかい...」


  「師匠、頼む!少しでも強くなっておきたいんだ」


  「私もお願いします!」


  二人で頭を下げるとトウコは「やれやれ」と息を吐いた


  「ユウはわかってるかと思うからいいとしてセラ、私の稽古はちょっとばかり癖があるよ。それでもいいかい?」


  「っはい!」


  「いい返事だ。二人ともついてきな、稽古を付けてやる」

 

  それからユウとセラの一週間の特訓が始まった。

 

魔法感染4話を読んでいただきありがとうございます。今回はバトル要素が少なかったです(というより無かったんです)(反省)感想いただけると嬉しいです。

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