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魔法感染  作者: 正午
3/10

任命

少しずつ文量増やしていってます。楽しんで頂けると幸いです。

  ユウが目を覚ましたのは翌日の朝だった。窓から外を見ると空を雲が覆っており雲行きが怪しい。


  「おはよう。よく眠れたかい?」


  ユウに声をかけたのはレンカだ。コーヒーを飲みながらユウを見ていた。「君も飲むかい?」と聞いてきたのでユウもコーヒーを受け取った。


  「ありがとうございますレンカさん」


  ユウは包帯が巻かれた傷を見ながらレンカに礼を言った。


  「いや、これは仕事だしね。......さて起きたばかりで済まないが皆広間に集まっている。戦場で何があったのか話を聞かせてもらおう。」


  「......はい」


  ユウは俯きながら返事をした。着替えを済ませ広間に向かう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ―――――レンカの言う通り既にグラジオラスのメンバーが広間に集まっていた。皆表情が硬い。ユウはメンバーの前に立った。


  「既にみんな知ってると思うがリュウさんたちが死んだ」

 

  リュウのエンブレムを見せながらユウが言うと一層空気が重くなる。そしてユウが続ける。


  「リュウさんたちの墓は後で立てるとして...皆が聞きたいと思っていることを話そう。あの獅子型のことだ。」


  視線を伏せていた者もユウに注目する。救助に行った4人も気になっているのかユウのことを見ている。


  「簡潔に説明すると獅子型は俺達が救助に迎えにいったときに再度現れた。そこからは俺が引き付けて渋谷スクランブル交差点まで誘導して、地面を陥没させてそこに落とした。」


  「じゃあ獅子型は倒せたんですか?」


  セラが少し期待したような問いをユウにするが、ユウは首を横に振った。


  「いや、ダメージは与えられたけど倒せてはいないだろうな」


  その言葉に皆は落胆したような雰囲気になる。


  「あの獅子型について言えることといえば体格、攻撃力、耐久力、素早さ全てにおいて普通の獅子型を上回っているということだけだ」


  そこで考え事をするように口元に手をあてたミナキが言った。


  「そもそもあの獅子型は何なんだろう...今まであんな獅子型がいるなんて報告はなかったよね?」


  「ああ...恐らく【セントラル】のアーカイブにも乗ってないだろうな」


  ユウはミナキの言葉に同意する。

  セントラルは公式に登録された全ての部隊を統括し武器や情報などを提供する組織だ。部隊のエンブレムの発行も行っている。

  情報は全ての部隊で共有できるきシステムになっているため、どこかの部隊が新型の魔物を発見するとその魔物の情報などを直ぐに共有できる。


  「という事は新型ってことだと思う。どう見ても普通の獅子型とは違ったしな」

 

  そこまで話してユウは話題を変えた。


  「あの獅子型のことをこれ以上話しても埒が明かない。それより今はリュウさんたちを弔ってやろう」


 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  ユウの提案を受け、メンバーたちで拠点の裏手にある土地にリュウを含めた十数名の墓を建て、ささやかな葬式を行った。葬式が終わり皆が拠点に戻ってもユウは墓の前に立っていた。これからの不安が隠しきれずユウは呟く。


  「リュウさん......これからどうなるんだろうな...」

 

  ぽつぽつと雨が降ってきた。たちまち大粒の雨に変わる。ユウはそれも気にせず墓の前で俯いている。雨に混じって涙がこぼれていた。


  「まあ...少しずつ頑張って見るよ...」


  不安を押し殺しユウは涙を拭き空を見上げた。少ししてから後ろから足音が聞こえた。


  「ユウさん...そろそろ戻らないと...」


  ユウが戻ってくる気配がなかったためかセラが傘をさして様子を見に来た。


  「.........そうだな」


  ユウは頷きもう一度リュウの墓を見て拠点に戻った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



  翌朝グラジオラスの今後の方針を決めるためメンバーは再度広間に集まっていた。


  「さて、グラジオラスの今後の方針についてだけどまずは新しいリーダーを決めようと思う」


  ミナキの発言にユウも同意する。


  「そうだな。で、誰がするんだ?」


  その質問にミナキは


  「それなら適任がいるじゃないか」

 

  と言う。


  「......は?.........誰?」


  ミナキが誰のことを言っているのか解らなかったユウは思わず聞き返す。


  「君だよ、ユウ」


  ミナキはユウを推すがユウは首を横に振る。

 

  「俺はまだガキだし大人数を背負うような人間じゃないよ。それに他のメンバーの意見もあるだろ?」


  「他のメンバーは君が治療を受けている間に話したら君でいいと言っていたよ。戦闘能力でも申し分ない。それにリュウさんが残りのメンバーを任せたのは君だった、そうだろ?」


  ユウはあたりを見回す。メンバー全員がユウがリーダーでいいという空気になっていた。


  「いや...でもな...皆冷静に考えろよ...」

 

  なおもしつこく食い下がるユウにセラが


  「グダグダ言ってるのはかっこ悪いですよー」


  などと野次を飛ばしてくる。


  「あぁくそっ...めんどくせぇ。わかったやるよ...」


  ユウが力なく答えるとミナキが言った。


  「僕らでもしっかりサポートするよ。よろしく新リーダー」


  ミナキが少しからかうように言ってきた。


  「あーじゃあまぁサポートよろしく頼むよ」

 

  なんとも軽い感じで決まってしまったリーダーだがメンバーから不満はなかった。


  「そうと決まればセントラルまで行かなきゃな。どのみち獅子型のことで報告しなきゃ行けなかったしいいけど...」


  今すぐにでも獅子型の討伐に向かいたかったが戦力が足りない...。そのためユウはセントラルに情報を公開し他の部隊と連携を取るべく今すぐにセントラルに行くと決めた。

  それにセントラルには部隊のリーダーの変更やメンバーの増減がある時は直接報告をしなければならない。獅子型の報告もあったので特に面倒が増えるということでもない。


  「じゃあ今すぐにでも出るか。森抜けるから時間かかるしな」


  セントラルはユウたちのいる練馬区域から離れた府中区域にある。府中区域は魔物による被害が少なかったためセントラルという大きな組織の拠点を造ることができた。

  練馬区域から府中区域に行くにはその間にある森を抜けなくてはいけない。森はCTVに感染した木々が急激に成長してできたもので魔物も生息している。そのため森を抜けるのは非常に時間がかかる。しかし迂回するほうが時間がかかるため森を抜けるのが一般的になっていた。


  「じゃあ俺は今から出る。ミナキ、留守は頼んだ」

 

  「あ、うんわかった」


  ミナキが了解したのでユウが出勤の準備を始めようとしたところでセラがユウに言う。


  「私も行きます。ユウさんは怪我してますし、心配ですし」


  「え?いやでも...」


  「また怪我したらどうするんですか?リーダーっていうのは部隊全員を背負うってことなんです。怪我されても困りますからついて行きます。いいですね?」


  「アッハイ」

 

  セラが珍しくまくし立てて来たので勢いに押されて承諾するユウ。


  「いつまでも話してたら日が暮れるから行ってくる」


  ユウはメンバーたちにそう言いセラと拠点を出た。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

  ユウとセラは森の中を全力疾走していた。


  「おいセラよ、どうしてこうなった...」


  「ホントですよ、なんでこんなことに...」


  「ブォォォォォ!!」


  ユウたちは体長4~5mの猪型の魔物に追われていた。怒り狂っているため手がつけられない。


  事の発端は拠点を出て森に入って数十分ほど経ったころまで遡る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ――――――ユウたちが森に入ってか

 数十分が経過していた。


  「とりあえず今のところは順調だな」


  魔物との遭遇もなくかなり良いペースで森を進めていた。


  「そうですね。このまま魔物と戦わずに行けるといいですね」


  「おい...フラグみたいなことを...」


  ドゴォン


  ユウたちの背後で木が倒れた。振り返る蛾のような姿をした巨大な魔物がいた。口から触手のようなものが数本出ており、体は紫色の体毛でびっしり覆われていた。


  『うわぁ......』


  ユウとセラは少し青ざめて『マジかよ』といった感じで呟いた。


  「キシャァァァァ!」


  蛾の魔物は鳴き声とともに口から液体を飛ばしてきた。


  『!!』


  ユウは後ろにセラは木の枝の上に、それぞれ躱す。液体が落ちた地面が少し溶けていた。


  「溶解液か.....セラ気をつけろよ!」

 

  「わかりました!」


  蛾の魔物がまだ溶解液を飛ばしてくるがユウとセラは難なく躱し反撃を行った。


  「おらぁぁ!!」


  ユウが右手から電撃を飛ばした。


  「ギィィィィィィ!!」


  蛾の魔物は苦悶の鳴き声を上げ、一旦距離を取った。

 

  「てぃやぁぁぁ!」

 

  しかし木の上に陣取っていたセラが巨大な氷柱を蛾の魔物に投げつける。

  セラの魔法は氷を生成、操作する魔法だ。形を自由に変えることができるので応用性が高い。

  蛾はすんでのところで氷柱を躱すが大きなスキができた。


  「とどめ!」


  セラは追い討ちとばかりにもう一つ巨大な氷柱を放った。


  「キシャァァァァ!!」


  蛾の魔物の土手っ腹に突き刺さり断末魔を上げて魔物は倒れた。


  「おつかれ」


  「お疲れ様です」


  お互いに労いの言葉を掛け合い、木にもたれかかり一息つく。


  「セラ、前に足でまといとか言ってたけどそんな事ねぇじゃねぇか」


  「いえいえ、まだまだ生成速度が遅すぎます。証拠に一回目の攻撃は躱されましたし...」


  「そこまで気にすることでもないんじゃないか?」


  「いえ...いざというときに力が足りないのは嫌ですから...」


  「......そうか」


  ユウはそれ以上は追及せず、話題を変えた。


  「それにしても...まさかフラグ建てた瞬間にあんなのに出くわすとは...」


  「......なんかすみません...」


  「まぁ気にするな、こんな事はもう起こらないはず...」


  バキィ!!


  すぐ近くの木がへし折れた。折れた木の近くに全身が赤い体毛で角の生えたゴリラのような形をした魔物がいた。


  「......今のはユウさんのせいですからね...」


  「マジでスンマセンでした...」


  「ヴォォォォ!!」


  ゴリラ型の魔物が自らがへし折った木を掴み、振り回してきた。


  「あぁ...ちくしょう!!撃退するぞ!」


  「はい!」


  「シッ!」


  ユウは短い気迫と共に魔力強化された右の拳をゴリラ型が振り回していた木に叩きつける。


  ドゴン!!


  衝突した拳と木が大きな音を立てた。強化された拳は木を砕き、ユウはそのままの勢いでゴリラ型の鳩尾に拳を突き刺した。


  「ヴァァァァ!!」


  「喰らえ!!」

 

  ゴリラ型が苦悶の声を上げ動きが鈍ったところで突き刺した拳から電撃をゴリラ型に流し込む。落雷でも落ちたのかという轟音があたりを包む。

 

  「今だ!!」


  電撃による麻痺で動きが鈍くなったところでユウが後ろ飛び退きつつセラに指示を出す。


  「これで終わりです!!」


  セラがユウの戦っていた間に生成した巨大な氷の塊をゴリラ型にぶつける。ゴリラ型は堪らず絶命する。


  「ふぅ...とりあえず一段落だな」


  「そうですね。連戦でしたし少し休憩しましょう」


  「そうだな......いや、ちょっとまて何だあれ?」


  セラの休憩しようという提案にのったユウだが何かを見つけたらしくゴリラ型がへし折った木の根本を指しながらセラに問う。


  「え?......何でしょう?猪?」

 

  いつの間にやって来たのか木の根本に齧り付いている小さな魔物がいた。


  「と言うよりウリ坊って感じだな..縦線入ってるし、小さいし...」


  よく見ると体に縦線の模様が入っている。猪型の魔物の子供のようだ。しかし子供が一匹で行動しているとは考えづらい。


  「でもなんで一匹でこんなとこに...」


  ユウが言ったところでセラが


  「あの...ユウさん、私凄く嫌な予感が...」


  「おいやめろ...俺もそう思っていたとこだから」


  「ユウさん...私から言っといてなんですが休憩やめて早く移動しましょう...」


  「あぁ...そうだn」


  ドゴォォォォォン!!!


  ユウが同意しようとしたところで親と思しき猪型が辺りの木を吹き飛ばしながら現れた。


  「ブルルルル!!」


  猪型は子供のすぐ近くにいたユウたちを子供を襲っている敵と誤解したのか明らかに臨戦態勢に入っている。


  「おい、待て落ち着け話せばわかr...」


  「ブモォォォォォォ!」


  当然と言えば当然だが話の通じる気配はない。かなり頭に血が登っているようで手がつけられそうにない。


  「ユウさん!逃げますよ!!」


  「おう!!」


  ユウとセラはすぐさま逃げることを選択した。

  そして今に至る。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


  ――――――ユウたちは数十分は猪型の魔物から逃げ続けていた。

 

  「ブォォォォォォ!!」


  「ちくしょう!今回ばかりは俺もセラも悪くねぇぞ!!完全に冤罪だ!!」


  「そんなこと言っててもあの猪は止まりませんよ!!どうにかして撃退しないと!!」


  「あそこの木にぶつけてみるか.......」


  ユウが走りながら前方の大木を指す。周りの木より二回りほど大きくあれに猪型をぶつければ動きを止められるかもしれない...。

 

  「あの木まで誘導するぞ!!」


  「はい!!」


  もう二人共体力の限界だったためその案で猪型を止めることとなった。


  「ブモォォォォォォ!!」


  猪型が後ろで唸っている。二人は速度を上げつつ大木まで誘導した。


  「............今だ!!」


  大木の目の前に来た瞬間ユウとセラはそれぞれ左右に跳び退く。


  「ブモォ!?」


  標的が急に左右に跳んだため猪型はどちらを狙うか迷い大木に激突した。


  ドォォォォォォン!!


  森全体を揺るがすような衝撃が巻き起こり辺りを土煙が包む。土煙が晴れると大木の前で気絶している猪型の姿があった。かなり強くぶつかったため暫く起きることはないだろう。


  「......何とか......なったな...」

 

  「.........は......い......」


  ユウとセラはお互い息を切らしながらその場にへたりこんだ。


  「......さて休憩もこのくらいにして急ごう。このままだと日が暮れちまう」


  数分間休憩しユウは腰を上げた。


  「そうですね。急ぎましょう」


  まだ疲れた様子だったがセラもユウの発言に同意し立ち上がった。


  「まだもう少し距離があるからな...悪いが少し急ぎめで行こう」


  「気にしないでください大丈夫です」


  毅然とした態度でセラが言ってくるのでユウも頷いた。


  「良し!じゃあ行くぞ!」

 

  ユウの言葉を合図に二人はセントラルに向けて駆け出した。

 

魔法感染3話を読んで頂きありがとうございます。感想、ご意見など頂けたら嬉しいです。誤字などありましたらご指摘下さい

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