EX# とあるウォーラビット兄貴の苦難
◆エピソード:
とあるウォーラビット兄貴の苦難 第二週頃~◆
ここ最近、俺様の島ででかい面をして暴れ回ってる奴がいるらしい。
折角、巣穴の整備が終わり、種の数も安定しだしたというのに何ということだ。
この辺りには俺達の身を脅かすような強い奴はいないものと思っていたのだが。
この人生……いや兎生、ままならないものだな。
弱い者は徹底的に喰らい強い者には出来る限り近づかないというのが俺達のモットー。
だからすぐに仲間全員を集め、その暴れん坊への警戒令を発する。
敵は少数なので狩れないこともないが、敵を甘く見て死んでいった仲間達を俺はよく知っている。
俺は慎重なのだ。
その慎重さが俺をこの集落の最年長者へと押し上げてくれた。
御陰で毎日大忙しだ――種付け行為で。
ほんと笑いが止まらない。
だがこの集落のトップとして俺は責任を果たさなければならない。
遠目でチラッと見てみたが、正直あれはヤバイ。
やばすぎる。
完全に狩人の目だ。
俺達の事を明らかに獲物として見ている。
身体の大きさは俺達と変わらないというのに、まるで勝てる気がしない。
すぐ近くにいた獣人の子供2人は以前見た覚えがあった。
だがその頃とは見違えるような強さを身に着けていると一目見て分かった。
いったい何があった?
以前は虐め甲斐のないただの獲物にしか見えなかったというのに、少し見ない間に完全に立場が逆になっている。
数匹がかりで襲い掛かれば仕留められない事も無いだろうが――いや、そのレベルの敵は基本的に俺達は逃げを選択する。
つまり、強者として扱う。
あの3人に近づいてはならない。
見かけたら速攻で逃げるべし。
あれは……悪魔だ。
◇後日◇
……おや、どうもクズハの姐さん。
今日も良い洞窟日和ですね。
……いえいえ、その辺はお構いなく。
姐さん方の御陰で以前よりも住み心地が良くなったくらいでさぁ。
あ、これはいつもの肉です。
お望み通り、今日はメスの若い奴の肉でさぁ。
……え?
仲間を殺める事が辛くないですかって?
ああ、そこは気にしないでくだせぇ。
あっし等は種の本能って奴で数が増えすぎると間引きするんでさぁ。
姐さん達に出会う以前もやってきた事ですぜ?
今更でしょう。
……ま、確かにこいつ等はあっしの子を産んでますがね。
子を産んだメスの寿命は短いんですよ。
何せ子を産むってのは自身の生命を分け与える大仕事ですからね。
遅かれ早かれこいつ等は死ぬ運命だったんでさぁ。
なら、子を産む幸せを満喫した後、寝ている間に旅立つ事が出来たこいつ等の人生はそう悪くないものだと思いやすぜ。
それじゃ、姐さん。
悪魔のおやっさんによろしゅうお伝えくだせぇ。
今後も御贔屓にお願いしやっす。
☆ウォーラビット兄貴率いる集落は幾多の困難を乗り越え、遂に安寧の地を手に入れた。
☆ウォーラビット兄貴が『存在進化』し悪魔の右腕(本兎願望)になる日も近い?




