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詳細の事実に有無を言わせてください

 僕は何をしてるんだろう?


1、ご飯を食べ終えました

2、お風呂を頂きました

3、雅人さんに手当てを二日連続されました






…正解は…






全部でした!!!







これって現実かな、現実なのかな?瞳を閉じたらまた違う部屋に居たりとか…

しないね!変わらないよね!!

そんな現実逃避をしながら、何故か朝と同じ部屋に居ます。


(……流されてる)


いや、もう知ってたけどね。僕の性格上言えない事ぐらい。言えない僕が悪いんだってことは重々わかってる。きっと言えるチャンスだってあったはずなのに。

 僕はこれからのことの詳しい説明を帰り道でも聞かされるもんだとばかり思っていた。もし違ってもきっと僕の新しい部屋に案内されるだろうとのんきに考えていたのが間違い。やけに乗ったエレベーター上がっていくなとは思ったけど、まさか連れてこられた場所は昨日お世話になった雅人さんの部屋に戻ってくるとは予想外。呆然と立ち尽くしていたら先に食べとけと雅人さんに言われて戸惑いながら孝太さんに頂いたお弁当を完食。このときに話してくれてもいいのに他愛もない話で終わりやっと本題かと思えば…。

 まさかそのままお風呂に直行され、オロオロしてるときには着替えが入ったカバンと共に脱衣場に残されていた。立ち尽くしていても仕方ないのでさっさと用を済ませリビングに戻れば待ってましたと言うように、この寝室にまたも連れられ昨日と同様に手当てされた。呆気に取られるばかりでただ流れるまま一人寝室に残された。ここに居ろよと釘を刺されて、


(はぁこれからどうなるんだろう)


…答えのないことを考えては気を落としていくばかりなのに。ため息が止まらず、考え疲れてベットに倒れ込むと顔を埋める。とても気持ちいいけど本当何やってんだろう。


「あーもう…今度こそちゃんと聞こう」


うじうじ悩んでても仕方ない。手を握りこぶしを作り決意を固めてる。


「なにを?」


不意打ち過ぎてビクッと肩が揺れた。反射的に声がした方に振り向いた。…つもりだった。起き上がる前に何かがのし掛かる重みと少しだけ暗くなる。始めは何が起こったかわからなかったが、天井を見上げたはずなのに雅人さんの顔が近くて息を飲む。事態が分からずゆっくり顔反らした。近すぎて真っ白になった頭の中。


(はっ!?なにこれ!?えっとこれ馬乗りだよね?本当近いし、近いし!!逃げれないし…うわっ全然気がつかなかった…)


ちらっとしか見てなかったのに、鮮明に思い出せる雅人さんの顔。ちゃんと乾かして無かったのか髪が多少張り付いている。急いで出たのかもしれない。これがあの¨水も滴る良い男¨なのか…流石イケメン。


「考え事禁止」


理不尽な事を言われて頬をつつかれた。よっぽど思考が飛んでいたらしい。


「あはは…」


とりあえず、笑ってごまかすしかないと思った。でも頬をつつく攻撃は止めないらしい。何故だ!?


「とっとりあえず退こうか?」


「却下」


即答だった。


「いや、この体制どう考えても可笑しいよね!」


「これから伝えることあるからよく聞けよ」


「いやいや、スルーですか!?お互い座って話そう?それにこの態勢疲れるでしょ?」


「却下」


「なんで!!」


「やっと顔見た」


思わず突っ込んだら、額をくっ付けられて嬉しそうに笑う雅人さんがいた。


「目線を反らされるのはのキツいな」


なんか共感してるみたいだけど、それには僕も反論がある。今出来る最大の睨みと共に、


「そっそれは雅人さんがこんなことするからでしょ!!」


強めに言ってやった。が、全く効果が無かったと言うのか雅人さんは笑いっぱなしだ。自分だけテンパってバカみたい。むっとしてしまう。


「だって可愛かったから」


「えっ」


有り得ない言葉が聞こえてきた。『可愛いかった』なんて聞き間違いだ。そんなはず…、


「もう変身後とかヤバイくらいだったし」


「やっヤバイ?そんなに可笑しかった?」


「違う違う。良い意味でだ!……その化粧なしでもかっ可愛いし」


なんか早口で言われ目を反らされた。暗くてちょっとわかりづらいけど。


「そうなの?」


言葉の意味が理解できずに思わず聞き返してしまった。化粧した時ならまだわかる。孝太さんマジックで自分でも驚いたから。でもさすがに化粧なしで可愛いはずがない。とても雅人さんの言葉を信じきれなくて、じっーと雅人さんを見つめてしまう。きっとチワワたちと並べたら絶対劣るのに。


「とっとにかく、大人しく俺の今からい言うことを聞けよ」


「…わかったよ。もう」


珍しく雅人さん慌ててる気がする。…珍しくって言うほど付き合い長くないけど。でもそんな雅人さんの姿を見てたら落ち着いてきた。あれかな、相手がちょっと慌ててると逆に冷静になれる。


(慌ててる姿がなんか可愛いというか、、、…って可愛いって何だ。

 可愛いって小動物とかに使う形容詞だろ?

 あれ?なんでこんなこと思っ…!?)


自分の心に沸き上がった感情に動揺してたら、コツっとおでこに何か当たった。意識がそこで何だと浮上すれば、おでこ同士がぴったりとくっつき、まつげ細部まで見えるくらい整った顔が目の前に有った。


「ちゃんと今の話聞いてたか?」


顎を撫でられてば、自分の立場を思い出す。血の気が引く。


「いや、ちょっと…。飛んでて、でもこの体勢はありえないよ。雅人さん」


「…いいご身分だな」


「めっ滅相もないです。あの、だから離し」


「却下!」


また間髪入れずに否定された。どうにも許されないらしい。こんなに近くで話さなくても良いのにと思うのは僕だけなのか。

 これ橘さんに見られたら、確実にここの居場所も、まして生徒会長の補佐という立場からも退場ものだと思うのに、抜け出せないもどかしさを感じる。


 あの場所に戻りたくないから。転校生のあんなところに戻ることを考えて震えそうになる。

 そんな自分に情けなくて、想像だけでもか細いくなってしまった声で、


「…聞いたら離してくれる?」


「…ああ。まぁそうだな…たぶん」


「?」


含みのある言い方に、もしかしてダメなのかなと思ったら、表情に出ていたらしく、雅人さんに笑われた。


「いや、気にするな。まあ、独り言だ。その状況しだいってことで…。とにかく、もう一度言うからな。口を挟んだり、また呆けり、反論したらそんときは覚悟しろよ」


「かっ覚悟?」


思わず口がひきつる。なにを覚悟すればいいと言うんだ。訳のわからない緊張からか唾を飲み込んでる時にはもう説明が始まっていて、


「決まった事はまず名前だな。明日からは『加賀稔(かがみのり)』と名乗ってもらう。学校の書類も作成して申請したからな。設定は俺の遠い親戚の再従兄弟になってるから、もしあのマリモ軍団が来たときも俺の下の名前で呼べよ。って言っても極力は喋らずに逃げるか、もし俺が近くに居るときは背中に隠れてろ。な?」


微笑まれて同意を求められたからそれは素直に頷く。


「まあ、相手がもし実を探してるかも知れないから、一様嗅ぎ付けても不自然がないように家の方にも裏に手を回してるから、安心しろ。堂々としてていい。だからそのな、再従兄弟って設定だから…部屋移動の件は俺と同じ部屋だからな。実の寝室のベットが来るまでは俺とここで一緒だ」


雅人さんの言葉を遮ることなくなんとか最後まで聞くことが出来た。が、言葉の意味を理解したくない。特に一緒のベットって辺りが…。

少なくとも2、3個は信じられない事があってどれから話せばいいか。僕にとっては雅人さんの言葉をまず信じたくない。

 雅人さんは言い切ったことに満足したのか、少しだけ顔を上げてくれたから多少は距離が空いたけど、微々たるもので、それにじっと見つめられるから本当に居心地が悪い。とりあえず、なにか喋らなきゃって焦って、


「ああ、あのね、理解は出来きたよ。うん、僕は加賀稔なんだね?」


「おう」


「で、その親戚?一緒に住む?あれ幻聴かな?。…それにベットが一緒とも聞こえてきたんだけど?僕なんかの存在なんて床で十分だと思うし…こんな優しくしてもう価値なんて…ないよ」


言いたいことを最後まで言い切ったけど、だんだんか細い声になってしまった。だってさんざん言われてきたんだ。色んな人に『要らない』って、そう思うとずんっと心が重くなる。


(いくら必要って言われても、怖いんだ)


裏切られる恐怖が、優しくされるほど、心に大きな傷を付けるって知ってるから…。

自信がないからとか、そんなことを言われてしまえばそれまでだけど。

 今まで言い聞かされてきたことが、耳から離れない。だから、だから…諦めるように、信じないように、してきたのにはずで、こんなにも言葉にして動揺する自分が大嫌いだ。

 こんな醜い自分を雅人さんに見せたくなくて、せめて背けようとしたら、それすら許されないのか、顔を上げられる。


「なに辛そうな顔をしてるんだ?実のことだから、また悪い想像してるんだろう。まだたった一日だけしか過ごしてないけど、実は絶対溜め込み型だと思うからな。この際不安なら全部吐き出せ!これは命令だ」


「そっそんな…」


「否定は聞かない。思ったことを出すのも、実には大事なことだ。我慢はいずれ壊れて弾けるぞ。それに他人が決める価値とかどうでもいいだろ?俺は俺の意思で一緒にいたいって気持ちが有るんだから」


「意志で…。ここに本当に居ても、いいの?」


強い眼差しで雅人さんに言われたら、つい口にしてた。


「あのな。良いって言ってんだけど。…わからないならこうする」


「へえっ?…っ!?」


言われた途端に首の裏に手をねじ込まれ、そこからのし掛かられたと思い、ビックリして思わず目を瞑ってしまった。が、重さは無く寧ろ引っ張られた感覚とぎゅっと背中を押さえられてる感覚。

 恐る恐る目を開けると、壁が有った。いや、温かいし、背中の感触と押し付けられてるこの状態は考えなくても抱き締められてる。


「まっまさとさん!?」


「ふふふ。実は温もりに慣れてないと感じたからな。不安なら俺が抱き締めてやる。実の仲間なんだから、不安がるな」


背中をトントンとリズムを刻みながらあやされるように、囁かれたが、安心出来るどころか若干パニック状態に陥り、口から出るのは言葉にならず、開けては閉じてを繰り返してしまうほど頭が真っ白になってしまった。


「耳、真っ赤だな。恥ずかしい?」


「うぅー、もう見ないで下さい」


核心的なことを言われて、見せないように雅人さんの胸に顔を埋めたのに片手で顎を持ち上げられる。背中は外す気は無いらしい。が、こんな簡単に持ち上げられるのにも、泣きたい。


「また敬語」


「だって、だってこんなの恥ずかしい!察してよ!!」


「…ヤバイな」


「ヤバイなら離してよ」


「いや、だからそういう意味じゃ…はぁ。いや、もう離さない」


「なんで!?意味がわからないよ」


叫んだにもかかわらず、更に密着するように抱き込まれれば抱き枕状態。


「離したらまた床で寝そうだし」


「そりゃ床で寝るよ!僕と雅人さんの立場を考えたらそうなるって。橘さんにバレたら」


「それなら了承済みだぞ。…あと勘違いしてるようだが紗輝とは出来てないからな。フリだぞ?」


事の衝撃さに驚きすぎて全てが飛んだ。…が、別に付き合う関係なく雅人さんに近くのは取り締まりの対象じゃないんだろうか。


「いや、関係ないとかないから。雅人さんに危害を加えたらただじゃおかないって橘さんに言ってたし、それに近づいた時点でアウトだと僕は考えるよ。今までの経験で危険と判断するし、てかもう離してください」


ビクビクしながら答えたら、ますます抱き締められる力が強くなった。ちょっと苦しいし、もう色々勘弁してもらいたい。


「…落ち着け。今こうされてる行為で実から、やってる行為はないだろ?俺が勝手にやってるだけだ。紗輝から親衛隊に言ってもらうし、それに俺の親衛隊は特殊だ。制裁なんてされないし、させない。それに俺と稔の立場はなんだ?」


「設定だとえっと再従兄弟?」


「そうだ。少なくとも遠いが兄弟って訳だが、中が良い兄弟は演じちゃいかんのか?」


そう聞かれると困る。そういう意味でも牽制がかかるんだろうか。


「それは…あっもうわかった。僕には判断出来ないから雅人さんに任せた」


こうまで言ってくれるんなら、自信が有るんだし、何か手が有るんだろう。


「でも、まだ離さないのはなんで?」


「ああ、なんか気持ち良くて、実の体温高いからかな。よく寝れそう」


雅人さんに言われながら頬で頭をすりすりされた。が、思わずイラッとくる。


「人を本気で抱き枕にしてないかな!?」


「本当の事を言ったまでだ」


「子供の体温ってバカにして」


「かっかしないで寝るぞ」


反論の前に電気を消されて、視界が暗転した瞬間、拘束が離れた感覚に、チャンスと思ってここから逃げ出そうとすれば、起き上がった所でお腹に手を回されてあれよと布団の中へ押し込まれた。

どうやら本気で抱き枕にでもするみたい。


「大人しく寝ろ」


「うぅ」


「それと…」


なにっと思ったときに頬に何か柔らかいものが当たる。


「敬語を使った分のお仕置きな」


「そっそうなの?ってそんなのあるの?」


まだ目が慣れてなくて何されたかよくわからなかったが、痛くないならいいかと思うことにした。が、お仕置きと言う名の何かをした本人が歯切れの悪い言い方。


「…うーまぁ、今決めた」


「えっなにそれ」


呆れながらに、声がした方に顔を向ければ頭を撫でられて、


「まぁ今度またあればそんときは明るいところでやってやるから」


「…それはそれで嫌な予感がする」


お仕置きと言うくらいだし、やっぱ嫌なことだと思う。なんとなくだけど。それに許していいことなのか。それ自体に不安を抱くが、判断する材料が少なすぎて行動出来ないならもういっそ何も考えない方がいいのだろう。軽く息を吐いて、


「もういい。とりあえず、明日もあるんだから寝よ」


「ああ、…俺が寝てから床で寝るなよ」


「…分かってるよ」


お見通しか。思わず一呼吸置いてしまったが、こうなってしまっては降参するしかないようだ。閉じたくない瞼を閉じて、


「おやすみ」


挨拶はきっちりと言ったら、くすっと笑われて、


「ああ、おやすみ」


返された。なんだがむず痒いが、逃げることが出来ないのだから割り切るしかない。撫でられる髪の優しさに意識が暗転したのはそのあとすぐだった。


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