帰還
なんとか敵から見逃してもらう形で自分部屋から脱出し、誰もいない廊下を足早に孝太さんの部屋へと戻り、ただいま遅い昼食を頂いてる真っ最中です。これまた絶品のオムライスでふわとろ!!ちゃんとチキンライスだし、それをぱぱっと作れる孝太さんの腕がとても羨ましく僕も見習わねば!!後でちゃんとレシピと作り方のポイントを是非聞かせてもらおう。さっきとは打って変わって和やかな時間を過ごしていた。
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昼食も食べ終えさっそくレシピを聞いていた時に机に置いていた孝太さんの携帯が鳴る。ごめんねっと言って電話に出る孝太さんは何度か頷いたあとすぐ電話を切っていた。なんか『ああ、私としたことが失態ね!!今すぐ届けるわ』とか叫んでちょっとびっくりしたけど。そこからの孝太さんの動きが早かった。お茶を飲むために沸かしていたお湯を水筒に入れ、朝大量に焼いたパンの残りを3、4個と冷蔵庫からタッパーを出してそれまた詰めていく。じっとその様子を見ていたら、孝太さんが申し訳なさそうに、
「ごめんなさいね。学校行くことになっちゃった。みっちゃんはこの部屋でくつろいでて!何でも使っていいからね!あとあとこのシュークリーム食べてていいから」
「えっうん、わかった」
「それとぜっったいに部屋から抜け出したり、なんかあっても開けちゃダメよ!!私ちゃんと鍵もってるからね!!来たら絶対変な人なんだから!!」
肩を掴まれて力説された。これたぶん癖なのか。美人さんだから迫力があってちょっと怖いだけど。ここは言われたとおりにするのがベストだと思って思い切り縦に首を振っておいた。それを見届けた孝太さんは笑顔になって「ヨシッ!」って言ってたけど、良く考えたらものすごく子供扱いされてる気がする。僕の内情は複雑だ。
そこから早々と孝太さんは制服に着替えて学校に出かけてしまったけど、正直やることがない僕はとりあえず持ってきた携帯電話を充電してみることにした。せっかく買ってもらったけど最近では目覚まし時計代わりにしか使用されてなかったから、充電切れで画面が真っ暗だったけど。プラグを刺して暫くとすりとランプが付き電源を入れた。特に連絡もなく変わったことはなかった。多少の売り込みくらい。パタンと携帯を折りたたんでしまう。
他にやるべきことをといえば、まだ洗ってない食器類。あと勉強。…勉強しないと。いくら中間が終わったといえすぐあとには期末が待っているんだから頑張らねばいけない。
「まずは食器を洗おう」
すぐ終わることはパパッと終わらせておかねば、誰もいないし気兼ねなく袖を捲る。雅人さんに付けて貰った湿布が目に付いた。
(そういえば、治療してもらってたんだけ)
処置を施してもらったときのことを思い出して、まさか自分が生徒会長様に治療してもらう日がくるなんて思いもしなかったなっと、なんだから暖かい気持ちになった。が、さすがに手首に撒いたまま食器洗いは厳しい。確実濡れる。申し訳ないが洗うのに邪魔だから取ってしまおうと手を伸ばすがちょっと止まる。
(あとでもう一度お礼言っておかなきゃ)
少し湿布を撫でてからゆっくり両手首の湿布を取った。
さっそく食器を洗う。水につけ置きしておいたおかげでするりと汚れが落ちる。つけ置き大事だよね。もともとそんなに量はなかったし、すぐに終わった。時間を見ても10分くらいしか進んでない。
「勉強かぁ…」
気が重いが鞄から勉強道具を出して机に開く。きっと今日はこのあたりでも勉強してたのかなっとか考えながら、教科書とノートを読み返した。予習復習を何度もして、なんとか追いついて成績を上位に食い込ませ特待生という立場で通わせて頂いてるのにこんなんで間に合うのか不安でしかなかった。




