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おまたせ(金髪視点)

少しだけ時間を戻してただいま15時を回った頃…

*******

 部屋に入った途端目に映ったこの机にうつ伏せにしている男を殴ってもいいだろうか?せっかく人が先生に書類を届けてきたと言うのに…。

 ずかずかと部屋に入り、その途中で手近にあった書類の束を軽く丸めて、その男のたまに勢い良く振り落とした。パコーンッと良い音が部屋に響く。


「起きろ、というか寝るな!!仕事をしろ!!バ会長!!」


「ああ、紗希」


よろよろと起き出すこのバ会長にイラッとしながらも言うことだけは言っておかねば。捌き切れないとわかっていてもやらねば終わらないのだから。


「もう寝るならちゃんとこの紙山なんとかしてからに…」


「ああ、そっちは終わった」


「へっ」


「で、それは新しいのだ」


“そっちの終わった方”をみればまだ確かに一山ある。確か俺が届けもの、隊員から急な呼び出し、等々こう成してたぶん一時間前の話だったはずなのに膨大な紙を処理していた。この男の処理能力をいつも見ていてぞっとする。もう神がかりとしかいいようがない。で、もう一つの新しい方はまた一山ある。“それは”と言われた方は俺が来るときに雅人を殴った書類の一山だ。丸めていたのを開くと請求書。あいつのバカ力が今も尚発揮されてるとわかる。


「…オマエの処理能力毎回スゴイスゴイ」


「棒読みやめろ」


「はいはい。…お腹空いて倒れたんだろうどうせ。いつもだもんな」


「わかってるんなら叩くな」


「これぐらいやらないと起きないくせに」


毎度のことなのに呆れてしまう。

 お昼過ぎてある程度時間が過ぎると決まって頭から勢い良く机に突っ伏し行動を止めるこの男…。不器用な男なんだか、凄い男なのか正直よくわからん。いつもなら孝太が押しかけて無理やりにでもご飯を食べさせるからすっかり忘れていた。


「もう3時だし、食堂さすがにやってないからな…」


「俺はダイジョウブさ」


「空元気なやつに言われたくない」


なにかあったかと端に置いていた鞄を漁る。…ヤバイ飴しかない。でもないよりはマシだろう。


「とりあえずこれでも舐めとけ」


「へぇ」


「頭には糖だしな!俺は孝太にティーセットでも頼んでくるわ。お前は大人しく、迅速に書類をなんとかしてろ!!あと先生と風紀委員も呼んでおくからな!」


「おおっ」


呆気に取られてるバ会長を放置し部屋を出た。ポケットに入れてた携帯を取り出し素早く電話をかける。


「もしもしー孝太…」


*******

 なんか廊下が煩い音が近づいてくる。電話してそんなに経ってないだがこの煩さを考えるとそろそろか。そう思ったときには思い切りドアが開かれけたたましい音を響かせていた。


「おっおまた…せぇ!」


「全速力で来たんだな」


予想以上に早かったし、あの距離を駆け抜けてきたということを考えると凄い体力。呆気にとられていたら、のろのろと背負っていた鞄を下ろし中を漁る孝太。鞄から水筒とコップを3つ取り出す。さらにコップに水筒の中身を入れて、そして自分で飲んだ。


「お前が飲むのか!」


「いいじゃない落ち着くんだから」


思わず突っ込んでしまった。が、うふふっと笑う孝太に流されてしまった。他の2つのコップにもお茶を入れ、見繕ってくれた軽食を二人に渡す。


「なるべくぽろぽろ落とさないやつ選んできたつもりだけど。お仕事頑張ってね」


孝太に元気付けられた。朝のパンだったけど十分美味いし。急いで持ってきてくれた孝太に俺達はお礼を済ませた。でもまだ有るのよと出されたのがタッパーに詰められたクッキーで、


「クッキーも作っておいたからまたお腹空いたんなら食べなさいね」


ちゃっかりお菓子の準備までしてきてくれる孝太。あいかわらず気が効くな。これでなんとか雅人の気力が持つか…。

任務完了と満足そうな顔の孝太の腕を取る。


「なにかしら」


「手伝ってくれない?」


「また書類運びとかでしょー。わかるんだから」


「…面目ない」


うな垂れながら言う雅人。それに対して全然気にしてない孝太は、


「あら、まさくんも頑張ってるんだから気にしないで。それに頼んだのはさっくんよ。ね?」


「はい、いつも助かってます。ただ、さっくんは辞めてください」


「いい加減慣れればいいのに」


拗ねて言うが、慣れたら終わりで定着するに決まってるじゃないですか、やだーとか決して本人には言えないけど。

出来ることなら書類を届けることは自分でなんとかしたいがとても無理だ。量的に。というか先生とか呼んだ方が早い気がするけど。それにこんなに早く溜まる紙束も考え物…。無限ループじゃん。本当。リコールしちゃえばいいのにって何度も言っても効かねえし。雅人の考えてることわけわからん。

 とりあえず、捌ける書類は片付けようと持ち上げたとき、目に入った孝太の挙動不審さ。さっきのどうどうっとしていた態度はどこへいった。はっきり言えばいいのに。とりあえず重いから持ち上げた書類は元に戻す。眉をハの字した孝太に向き直って、


「言いたいことがあるんだろう?孝太」


「うん、…みっちゃんの件で言わなきゃいけないことがあるんだけど。良い事と悪い事どっちから先に聞きたいかしら?」


「どういうことだ」


珍しく雅人が手を止める。そりゃ佐藤の事だろうな。気にも止めるか。にしても悪い事って早々この短時間で起こってたまるか。たった8時間だぞ!!おい!!


「えっと、じゃ悪い事から話すわね。みっちゃんの部屋であの転校生組みと鉢合わせしちゃいました」


「「はぁ!?」」


どんな事だろうと思っていたら早すぎるだろ!!確かにあいつら学校に来てて。あーもう油断したのか。思わず下唇を噛む。


「でも華麗に変身したみっちゃんは見られてないわよ!!そこは安心して!!死守したから!!もう変態野郎が居てもうー自我出ちゃったけど」


「えっ孝太の素出ちゃったの」


「…うん」


顔を青くさせながら頷く孝太。よほど頭にきたんだろう。とても上手く隠す孝太の素を引っぺがしちゃうってことはそういうことだ。


「…冴木(会計)か」


「あいつ可愛い系基本置かせるくせに美人好きだもんな」


「やめて、本当にアイツはキモイだから。本当駆逐してやりたいくらいよ」


余程思い出したくないのか鳥肌が立ってて二の腕を擦っている。まぁバレてないし、最悪な事態は逃れたってことで考えればいいのか。とりあえず話を変えるか、


「良いことってなんだよ」


「みっちゃんが可愛く仕上がりました」


「ああ、予想通りじゃね?」


「…」


「あらあら?まさくん無言の同意ね。うふふ」


打って変わってもう大満足って顔でへらへらしてる孝太を一回締めたい。どうにかならんかなこのオネエ。


「もう冷たい目線やめてよ!」


「お前のその行動が受け付けないだよ」


「幼馴染そう言っちゃいやー」


「腐れ縁だろ!!」


『静かにしろ!!』


売り言葉に買い言葉になってつい喧嘩越しになりかけたときに雅人から雷がきた。


「「ごめん(なさい)」」


「たく。…で?」


「で?」


「写メ」


「…ないわよ?」


暫く無言が続いてどうしようこの状況ってくらいこの場の時間が止まった。が、我慢ならなかったのか孝太がまた喋りだして、


「いいじゃない。画像じゃなくてあと数時間すれば本人に会えるんだから」


「そうだが…」


「楽しみは取っていた方が頑張れるわよ」


「ぐ」


こっちはこっちで片付いたようだ。気になる言われ方したから仕事に支障が出なきゃいいけど。


「あと好きなものとか色々聞いたからあとでメールするわね」


「…なんでそんなことを?」


そんなこという雅人に孝太は目をパチパチさせたと思ったら雅人を指しながら、


「…ちょっと無自覚なの!?」


「うん、そうだ」


「信じられない」


驚愕な表情を浮かべた孝太。仲間が増えたっと内心ガッツポーズを決めて、これで遠慮なく巻き込めると思った。このヘタレをどうにかできるはず。恋愛本当疎いとかなんなのこいつ。とかそういう愚痴も言えそうだ。


「佐藤のことは置いておいてとっと運ぶぞ」


「え。ええそうね」


孝太の肩を掴んでこっちの世界に呼び戻したがぎこちない。仕方ないよな。衝撃的な無自覚なんだもんな。あいかわらず首を傾げてる雅人だが、もう放っておこう。もう疲れたから…色々と。


「俺達運んでくるけど、お前はしっかり書類片付けろよ」


「ああ、気張っていく」


雅人をまた机に向かせて、俺達は俺達の仕事をこなすことに専念することにした。



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