↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波待ち。  作者: 阿部兄弟
最終章 REHARBOR

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/84

最終話 「波待ちと人生」

人生は、

波乗りみたいだと思う。


⸻


良い時もあれば、

上手く立てない日もある。


飲まれて、

苦しくなる日もある。


⸻


それでも人は、

また海へ向かう。


⸻


誰かと出会って。


傷付いて。


支えられて。


少しずつ前へ進んでいく。


⸻


波待ち。


⸻


この物語は、

そんな不器用な大人達の人生の話です。


朝。


⸻


⸻


まだ少し暗い部屋。


⸻


⸻


蒼が目を開ける。


⸻


⸻


昨日の疲れが、

身体に少し残っていた。


⸻


⸻


でも、

嫌な重さじゃない。


⸻


⸻


隣を見る。


⸻


⸻


澪も起きていた。


⸻


⸻


布団に入りながら、

ぼーっと天井を見ている。


⸻


⸻


目が合った。


⸻


⸻


「……おはよう」


⸻


⸻


「おはよ」


⸻


⸻


蒼が少し笑う。


⸻


⸻


「やっぱり起きてた?」


⸻


⸻


澪も小さく笑った。


⸻


⸻


「蒼もじゃん」


⸻


⸻


少し沈黙。


⸻


⸻


でも、

落ち着く静けさだった。


⸻


⸻


澪が、

左手を見る。


⸻


⸻


指輪。


⸻


⸻


まだ少しだけ、

現実感が無い。


⸻


⸻


「なんかさ」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「落ち着かない」


⸻


⸻


最後だけ笑う。


⸻


⸻


蒼は、

天井を見ながら頷いた。


⸻


⸻


「わかるよ」


⸻


⸻


少し間。


⸻


⸻


そのあと蒼が言う。


⸻


⸻


「海行くか?」


⸻


⸻


「……え?」


⸻


⸻


「開店前に」


⸻


⸻


澪が笑う。


⸻


⸻


「え、まじ?」


⸻


⸻


「まじ」


⸻


⸻


「いいね」


⸻


⸻


「行こう」


⸻


⸻


蒼も少し笑った。


⸻


⸻


「その為に店にシャワー室つけたみたいなもんだしな」


⸻


⸻


「確かに」


⸻


⸻


「初めて使うのが私達ってウケる」


⸻


⸻


二人で笑う。


⸻


⸻


海までは歩いてすぐだった。


⸻


⸻


朝の港町。


潮の匂い。


静かな道。


⸻


⸻


砂浜へ出ると、

まだ人は少ない。


⸻


⸻


波の音だけが、

ゆっくり響いていた。


⸻


⸻


二人で海へ入る。


⸻


⸻


冷たい水。


⸻


⸻


でも、

もう慣れた冷たさだった。


⸻


⸻


沖へ出る。


⸻


⸻


ボードへ跨り、

二人で波待ちする。


⸻


⸻


蒼は、

ふと思い出していた。


⸻


⸻


昔、

澪へ言った言葉。


⸻


⸻


『サーフィンって人生に似てるだろ?』


⸻


⸻


『自分で待って、自分で見極めて、乗る』


⸻


⸻


あの頃。


⸻


⸻


初めて二人で海へ来た理由は、

サーフィンを教える為だった。


⸻


⸻


でも今は違う。


⸻


⸻


隣に居る理由が、

ちゃんと変わっていた。


⸻


⸻


「蒼ー!」


⸻


⸻


「波来てるよー!」


⸻


⸻


蒼が振り返る。


⸻


⸻


「おう!」


⸻


⸻


波へ向かう。


⸻


⸻


ボードが波を掴む。


⸻


⸻


身体が前へ押し出される。


⸻


⸻


それが良い波か。


崩れる波か。


⸻


⸻


乗ってみなければ分からない。


⸻


⸻


でも。


⸻


⸻


乗らなきゃ分からない景色がある。


⸻


⸻


波に揉まれて、

痛みを知る。


⸻


⸻


良い波に乗れれば、

気持ちいいし。


自信もつく。


世界も広がる。


⸻


⸻


「おぉー!

 すごいじゃん!」


⸻


⸻


澪が笑いながら叫ぶ。


⸻


⸻


蒼も笑う。


⸻


⸻


「当たり前だろー!」


⸻


⸻


蒼は沖へ戻る。


⸻


⸻


「次澪なー!」


⸻


⸻


「はーい!」


⸻


⸻


澪が波へ向かう。


⸻


⸻


ボードが滑る。


⸻


⸻


風を切る。


⸻


⸻


「わー!気持ちいい!」


⸻


⸻


海の上で、

澪が笑っていた。


⸻


⸻


「見たー!?」


⸻


⸻


「今の!凄くない!?」


⸻


⸻


蒼が笑う。


⸻


⸻


「俺に教えられたんだから当然!」


⸻


⸻


「なにそれー!」


⸻


⸻


二人で笑う。


⸻


⸻


静かな海。


朝の光。


⸻


⸻


良い時間だった。


⸻


⸻


「そろそろ上がるか!」


⸻


⸻


「うん!」


⸻


⸻


二人で砂浜を歩く。


⸻


⸻


その時。


⸻


⸻


「あ、てか役場行かなきゃないじゃん」


⸻


⸻


澪が言った。


⸻


⸻


「あー……そうだな」


⸻


⸻


「今日営業終わったら行くか」


⸻


⸻


「二人で」


⸻


⸻


「うん」


⸻


⸻


少し照れ臭そうに笑う。


⸻


⸻


そのあと澪が言う。


⸻


⸻


「そのあと、実家行こう」


⸻


⸻


「そうだな」


⸻


⸻


少し間。


⸻


⸻


「明日から萩原澪になるのかぁ」


⸻


⸻


「なんか変な感じ〜」


⸻


⸻


蒼は、

少しだけ笑った。


⸻


⸻


「休みの日、お父さんのお墓にも報告しに行こうよ」


⸻


⸻


「あぁ、だな」


⸻


⸻


そのあと澪が思い出したように言う。


⸻


⸻


「てか楓ちゃんに言った!?」


⸻


⸻


「言ってない」


⸻


⸻


「けど、催促して来たのはあいつ」


⸻


⸻


澪が吹き出す。


⸻


⸻


「あの子もすごいね〜」


⸻


⸻


「すぐ言いなよ!」


⸻


⸻


「それか休み合わせて、3人でお墓行く?」


⸻


⸻


「その時言おうよ」


⸻


⸻


蒼は少し考えて、

笑った。


⸻


⸻


「そうだな」


⸻


⸻


店へ戻る。


⸻


⸻


REHARBOR。


⸻


⸻


二人でシャワー室へ入る。


⸻


⸻


濡れたウェット。


湯気。


朝の光。


⸻


⸻


生活の匂いがした。


⸻


⸻


そのあと準備をして、

店を開ける。


⸻


⸻


カラン。


⸻


⸻


扉が開く。


⸻


⸻


「いらっしゃいませー」


⸻


⸻


女子高生二人組だった。


⸻


⸻


「えーっと、アイスカフェラテ2つください!」


⸻


⸻


「はいー」


⸻


⸻


蒼がカフェラテを運ぶ。


⸻


⸻


「はい、カフェラテ2つどうぞ」


⸻


⸻


女子高生が笑う。


⸻


⸻


「ありがとうございます!」


⸻


⸻


蒼が言う。


⸻


⸻


「学校は?サボりか?」


⸻


⸻


「違いますよ〜!」


⸻


⸻


「今日午後から授業なんです!」


⸻


⸻


その姿を見ながら、

澪は少し思う。


⸻


⸻


“なんか店主っぽい”


⸻


⸻


少し前まで、

鉄工場で働いてた男が。


⸻


⸻


今はこうして、

海沿いの店で笑っている。


⸻


⸻


なんだか不思議だった。


⸻


⸻


そこへまた扉が開く。


⸻


⸻


サーファーだった。


⸻


⸻


「すいません、アイスコーヒー1つと、ワックスあります?」


⸻


⸻


「ありますよ!」


⸻


⸻


蒼がワックスを探す。


⸻


⸻


サーファーが店内を見回した。


⸻


⸻


「良い店だなぁ」


⸻


⸻


澪が笑う。


⸻


⸻


「ちなみに、シャワー室もあるんで」


⸻


⸻


「海帰りそのまま来ても、全然良いですよ」


⸻


⸻


「えぇ!まじっすか!?」


⸻


⸻


「めっちゃ良いわここ」


⸻


⸻


「仲間にも紹介しときます!」


⸻


⸻


「ありがとうございます!」


⸻


⸻


「はい、アイスコーヒーとワックスです」


⸻


⸻


お金を受け取る。


⸻


⸻


するとサーファーが、

女子高生へ話しかける。


⸻


⸻


「君たちもしかしてサボり?」


⸻


⸻


女子高生達が笑う。


⸻


⸻


「店長と同じ事言ってる!w」


⸻


⸻


「違いますよ〜」


⸻


⸻


「午後から授業です!」


⸻


⸻


「それで、店作ってる時から気になってたんでここ」


⸻


⸻


「だから来たって感じです」


⸻


⸻


「へぇー、

 良いよねここ」


⸻


⸻


客同士が自然に喋っている。


⸻


⸻


温かい空気だった。


⸻


⸻


これからも、

こんな店であってほしい。


⸻


⸻


夕方。


⸻


⸻


「ご馳走様でした〜」


⸻


⸻


最後の客を見送る。


⸻


⸻


夜。


⸻


⸻


レジ締め。


片付け。


洗い物。


⸻


⸻


営業後の静かな店。


⸻


⸻


蒼がエプロンを外す。


⸻


⸻


「よし」


⸻


⸻


「行くか」


⸻


⸻


澪が頷く。


⸻


⸻


二人で店を出る。


⸻


⸻


街灯が、

静かな道を照らしていた。


⸻


⸻


並んで歩く二人の影。


⸻


⸻



"サーフィンは、

人生に似ている"


⸻


⸻


人生は色々な事がある。


⸻


⸻


楽しい事。


辛い事。


⸻


⸻


色々な事がある中でも、

生きていかなきゃならない。


⸻


⸻


その経験を活かすか。


そこで挫けるか。


⸻


⸻


時間は、

待ってくれない。


⸻


⸻


生きてる中で訪れる、

色んな波。


⸻


⸻


それに乗るか。


かわすか。


巻き込まれるか。


⸻


⸻


それは自分次第だ。


⸻


⸻


でも。


⸻


⸻


乗らなきゃ分からない事がある。


⸻


⸻


崩れなきゃ分からない痛みがある。


⸻


⸻


その痛みを知っても、

進まなきゃならない。


⸻


⸻


"その先にある幸せを、待つ為に"


⸻


⸻


「波待ち。」


過去は消えない。


痛みも、

後悔も、

無かった事にはならない。


⸻


それでも人は、

また誰かを好きになって、

未来を選んで生きていく。


⸻


サーフィンみたいに。


人生も、

乗ってみなきゃ分からない。


⸻


その先にある幸せを待つ為に。


⸻


ここまで読んでくれて、

本当に、本当にありがとうございました!


次の作品も楽しみにしてて下さい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。