最終話 「波待ちと人生」
人生は、
波乗りみたいだと思う。
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良い時もあれば、
上手く立てない日もある。
飲まれて、
苦しくなる日もある。
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それでも人は、
また海へ向かう。
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誰かと出会って。
傷付いて。
支えられて。
少しずつ前へ進んでいく。
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波待ち。
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この物語は、
そんな不器用な大人達の人生の話です。
朝。
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まだ少し暗い部屋。
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蒼が目を開ける。
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昨日の疲れが、
身体に少し残っていた。
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でも、
嫌な重さじゃない。
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隣を見る。
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澪も起きていた。
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布団に入りながら、
ぼーっと天井を見ている。
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目が合った。
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「……おはよう」
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「おはよ」
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蒼が少し笑う。
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「やっぱり起きてた?」
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澪も小さく笑った。
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「蒼もじゃん」
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少し沈黙。
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でも、
落ち着く静けさだった。
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澪が、
左手を見る。
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指輪。
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まだ少しだけ、
現実感が無い。
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「なんかさ」
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「ん?」
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「落ち着かない」
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最後だけ笑う。
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蒼は、
天井を見ながら頷いた。
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「わかるよ」
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少し間。
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そのあと蒼が言う。
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「海行くか?」
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「……え?」
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「開店前に」
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澪が笑う。
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「え、まじ?」
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「まじ」
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「いいね」
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「行こう」
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蒼も少し笑った。
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「その為に店にシャワー室つけたみたいなもんだしな」
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「確かに」
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「初めて使うのが私達ってウケる」
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二人で笑う。
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海までは歩いてすぐだった。
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朝の港町。
潮の匂い。
静かな道。
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砂浜へ出ると、
まだ人は少ない。
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波の音だけが、
ゆっくり響いていた。
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二人で海へ入る。
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冷たい水。
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でも、
もう慣れた冷たさだった。
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沖へ出る。
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ボードへ跨り、
二人で波待ちする。
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蒼は、
ふと思い出していた。
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昔、
澪へ言った言葉。
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『サーフィンって人生に似てるだろ?』
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『自分で待って、自分で見極めて、乗る』
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あの頃。
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初めて二人で海へ来た理由は、
サーフィンを教える為だった。
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でも今は違う。
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隣に居る理由が、
ちゃんと変わっていた。
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「蒼ー!」
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「波来てるよー!」
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蒼が振り返る。
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「おう!」
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波へ向かう。
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ボードが波を掴む。
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身体が前へ押し出される。
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それが良い波か。
崩れる波か。
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乗ってみなければ分からない。
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でも。
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乗らなきゃ分からない景色がある。
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波に揉まれて、
痛みを知る。
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良い波に乗れれば、
気持ちいいし。
自信もつく。
世界も広がる。
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「おぉー!
すごいじゃん!」
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澪が笑いながら叫ぶ。
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蒼も笑う。
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「当たり前だろー!」
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蒼は沖へ戻る。
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「次澪なー!」
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「はーい!」
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澪が波へ向かう。
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ボードが滑る。
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風を切る。
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「わー!気持ちいい!」
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海の上で、
澪が笑っていた。
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「見たー!?」
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「今の!凄くない!?」
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蒼が笑う。
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「俺に教えられたんだから当然!」
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「なにそれー!」
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二人で笑う。
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静かな海。
朝の光。
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良い時間だった。
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「そろそろ上がるか!」
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「うん!」
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二人で砂浜を歩く。
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その時。
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「あ、てか役場行かなきゃないじゃん」
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澪が言った。
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「あー……そうだな」
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「今日営業終わったら行くか」
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「二人で」
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「うん」
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少し照れ臭そうに笑う。
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そのあと澪が言う。
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「そのあと、実家行こう」
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「そうだな」
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少し間。
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「明日から萩原澪になるのかぁ」
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「なんか変な感じ〜」
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蒼は、
少しだけ笑った。
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「休みの日、お父さんのお墓にも報告しに行こうよ」
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「あぁ、だな」
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そのあと澪が思い出したように言う。
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「てか楓ちゃんに言った!?」
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「言ってない」
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「けど、催促して来たのはあいつ」
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澪が吹き出す。
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「あの子もすごいね〜」
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「すぐ言いなよ!」
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「それか休み合わせて、3人でお墓行く?」
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「その時言おうよ」
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蒼は少し考えて、
笑った。
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「そうだな」
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店へ戻る。
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REHARBOR。
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二人でシャワー室へ入る。
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濡れたウェット。
湯気。
朝の光。
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生活の匂いがした。
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そのあと準備をして、
店を開ける。
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カラン。
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扉が開く。
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「いらっしゃいませー」
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女子高生二人組だった。
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「えーっと、アイスカフェラテ2つください!」
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「はいー」
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蒼がカフェラテを運ぶ。
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「はい、カフェラテ2つどうぞ」
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女子高生が笑う。
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「ありがとうございます!」
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蒼が言う。
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「学校は?サボりか?」
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「違いますよ〜!」
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「今日午後から授業なんです!」
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その姿を見ながら、
澪は少し思う。
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“なんか店主っぽい”
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少し前まで、
鉄工場で働いてた男が。
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今はこうして、
海沿いの店で笑っている。
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なんだか不思議だった。
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そこへまた扉が開く。
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サーファーだった。
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「すいません、アイスコーヒー1つと、ワックスあります?」
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「ありますよ!」
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蒼がワックスを探す。
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サーファーが店内を見回した。
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「良い店だなぁ」
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澪が笑う。
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「ちなみに、シャワー室もあるんで」
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「海帰りそのまま来ても、全然良いですよ」
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「えぇ!まじっすか!?」
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「めっちゃ良いわここ」
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「仲間にも紹介しときます!」
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「ありがとうございます!」
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「はい、アイスコーヒーとワックスです」
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お金を受け取る。
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するとサーファーが、
女子高生へ話しかける。
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「君たちもしかしてサボり?」
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女子高生達が笑う。
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「店長と同じ事言ってる!w」
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「違いますよ〜」
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「午後から授業です!」
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「それで、店作ってる時から気になってたんでここ」
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「だから来たって感じです」
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「へぇー、
良いよねここ」
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客同士が自然に喋っている。
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温かい空気だった。
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これからも、
こんな店であってほしい。
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夕方。
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「ご馳走様でした〜」
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最後の客を見送る。
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夜。
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レジ締め。
片付け。
洗い物。
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営業後の静かな店。
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蒼がエプロンを外す。
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「よし」
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「行くか」
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澪が頷く。
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二人で店を出る。
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街灯が、
静かな道を照らしていた。
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並んで歩く二人の影。
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"サーフィンは、
人生に似ている"
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人生は色々な事がある。
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楽しい事。
辛い事。
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色々な事がある中でも、
生きていかなきゃならない。
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その経験を活かすか。
そこで挫けるか。
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時間は、
待ってくれない。
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生きてる中で訪れる、
色んな波。
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それに乗るか。
かわすか。
巻き込まれるか。
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それは自分次第だ。
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でも。
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乗らなきゃ分からない事がある。
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崩れなきゃ分からない痛みがある。
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その痛みを知っても、
進まなきゃならない。
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"その先にある幸せを、待つ為に"
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「波待ち。」
過去は消えない。
痛みも、
後悔も、
無かった事にはならない。
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それでも人は、
また誰かを好きになって、
未来を選んで生きていく。
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サーフィンみたいに。
人生も、
乗ってみなきゃ分からない。
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その先にある幸せを待つ為に。
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ここまで読んでくれて、
本当に、本当にありがとうございました!
次の作品も楽しみにしてて下さい!




