表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトルスター〜鄙びた旅館の女将になった私がテッペンを取るまで。  作者: 間宮芽衣


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

【第十二話】一生懸命な人。


「美味しいーっ!!」


私は活ホタテを使った新鮮な帆立丼の美味しさに感動して、思わず声を漏らしてしまう。


「…日菜子、米粒ついてんぞ。」


すると、賢治がそっと口元についた米を取ってくれて、赤面してしまう。


(ぎゃー!!私ってば桐谷さんの前で米粒付けてたなんて恥ずかしいー!!)


「…ありがと。すみません…。」


けれど、桐谷さんは少し笑みを深めただけで、普通にスルーしてくれた。


「──これって、この近くで獲れた帆立ですよね?」


その言葉に顔を上げる。


「っはい!!この近くの平打町が、有名な帆立の産地でして。」


「なるほど。では、ページを作る際に活ホタテであること、それに産地なども書くと良いかもしれませんね。


 社長が料理をされていた方でしたら、お料理に思い入れもあると思いますし。


 飲食店ですと、農家さんや漁師さんの顔を載せてブランディングしているお店なども多いんです。


 ──ほら、作っている人の顔が見えると安心するでしょう?」


その言葉に私と賢治は思わず顔を見合わせる。


「…確かに!それ、やってみます。」


私が食い気味に答えると、桐谷さんが、ジッと私と賢治を見つめてくる。


「な、なんですか?」


「──いえ。お二人って仲が宜しいですよね。


 桜庭さんが家業もお手伝いされているようですし。もしかして、ご婚約などなさっているんですか?」


すると、賢治が何故か少し嬉しそうな顔をしている。


「…あ、あの、ただの幼馴染ですけど。」


私がそう言うと、桐谷さんが口元を上げた。


「そうだったんですね。すみません、踏み入った事を聞いてしまって。」


その言葉に私はブンブン首を振る。


「いえいえ!!あ、き、桐谷さんはどうなんですか?!か、かっこいいので、やっぱり彼女さんとかいらっしゃるんですか?」


ついつい私は自分で墓穴を掘ってしまった。


 そんな私を賢治が何とも言えない顔で見ている。


(ううっ、そんな痛い奴を見るような目で見ねぇでよっ。)


すると、桐谷さんはフッと目を綻ばせた。


「…いえ。今は特におりませんが。」


「──ええっ?!そ、そうなんですか?!ぜ、絶対いると思ってましたっ!!モテそうなのにっ!!」


その言葉に桐谷さんはぷっと笑い出した。


「…ありがとうございます。…まあ、そんな事はないんですが、例えモテたとしても、自分の好きな人じゃないと意味がないので。」


(か、かっこいい!!イケメンは中身もイケメンだったべ!!)


口をあんぐりと開ける私を賢治が可哀想な人を見るような目で一瞥した後、こんな事を言った。


「…そうなんですね。ちなみに、桐谷さんはどんな人が好きなんですか?」


すると、桐谷さんは思案顔をした後、ポツリと言った。


「そうですね。…一生懸命な人、ですかね。」


その言葉に私は目を見開く。


(な、なんですと?!そぃなら私にもチャンスあるかもしれなくない?!)


「…そうなんですね。」


ウキウキとそう答える私の横で賢治が複雑そうな顔をしていた。


──こうして三人のランチは終了した。


 桐谷さんは、いつも通りの国宝級スマイルでお礼を言った後、近くの担当施設さんの所に挨拶回りに行ってしまった。


◇◇


「日菜子、外観の写真はこれがいいんでねぇか?」


桐谷さんが外出した後、私は賢治と一緒に宿の写真を撮影していた。


「うんっ!!良い感じ!!


 いやー、それにしても、古臭い感じは誤魔化しきれないねぇ…。まあ、変に誤魔化すのもどうかと思うけども…。」


すると、賢治がポツリと言葉を漏らす。


「そうだな。築年数も結構経ってるし、改装した方がいいかもしんねぇな。」


「…だよねぇ。…父ちゃんのとこの工務店に頼んだら安くしてくんねぇかな。


 ──あー。お金が必要だね。


 稼働、今七割だけど、出来たら表彰されてた『紫陽花』さんみたいに100%以上取れたら最高なんだけど。」


その言葉に賢治が頷く。


「…んだな。でも、そしたらスタッフも大変だろうし、人雇わなきゃいけねぇかもしんねぇな。」


私達は温泉に移動すると、湯船や洗い場も撮影する。


「──うん!!良い感じ!じゃあ次は客室…──きゃっ!!」


言いかけた時だった。


 油断して滑って転びそうになったところを慌てて賢治が抱き止めてくれて、息が止まりそうになった。


「──っ、」


──賢治は息を吐いた後、心配そうに私の方を覗き込んでくる。


「…大丈夫か?」


その距離の近さに思わずドキドキしてしまう。


「う、うん!!大丈夫!!カメラ!!カメラ何ともなくてよかったね!!」


(何私、賢治にドキドキしてんの!!)


ジワジワと赤くなった顔を晒すと、賢治の声が上擦る。


「──今なんで目ぇ、晒した?」

「…なんでもない。」


すると、何故か賢治の口元が上がった。


「…ふーん。」

「な、何だべ?」


少し挙動不審になりながら答える私に上機嫌の賢治が言った。


「いや、まだ希望は捨てたもんじゃないなって。」


(…希望? 何言ってんだ?)


「…え?」

「──よし、ほんだば、客室も撮りに行くか。滑ったら危ないから手ェ繋ぐぞ。」


そう言われて、子供の時以来久しぶりに賢治と手を繋いだ。


(…あったかい。…子供の時とは違って大人になったんだな。)


大きな手に自分の手をすっぽりと包み込まれながら、そんな事を思ってしまった。


◇◇


(…よしっ!!いっぱい良い写真撮れた!)


私はホクホク顔で賢治と一緒に管理画面に写真を登録していた。


「これ、ここに入れた方がいいんでねぇか?」


「あ、そうだね。ねぇ、アメニティとかもどうせなら撮影しておきたいね。」


そんな事を言いながら、いつも通り予約の管理をしていたら、あっという間にチェックイン時間まで15分程になってしまった。


「──んだば、俺は帰るわ。頑張れよ。」


ぽんぽんと背中を賢治に優しく叩かれた。


「うん、本当にどうもねっ!」


──お礼を言って賢治を送り出すと、次々とお客様がやってきた。


「ようこそいらっしゃいました。お荷物お預かりします。お連れ様、良かったら向こうにおかけになってお待ちください。


 ──こちらでチェックインのお手続きをお願いします。」


婆ちゃんと連携しながら次々とチェックインをしていく。


 部屋への案内はアルバイトの子達がやってくれた。


 家族連れなどが嬉しそうにしているのを見るとほっこりしてしまう。


(──なんか、子供用にも色々用意してあげたいな。きちんとベビーベッドとかは用意してあるけど、最低限だし。)


そんな事を思ってしまった。


 バタバタとした慌ただしさが落ち着いて、午後六時近くになった所で、桐谷さんと同僚の方がやって来た。


「──初めまして。ステイリンクの後藤です。本日は宜しくお願いします。」


恰幅のいい、貫禄のある感じの男性だった。


「こちらこそ宜しくお願いします。色々ご意見頂けますと幸いです。──どうぞ。」


そう言って、お部屋を案内する。


 後藤さんは興味津々と言った感じでロビーをキョロキョロと見ながらお部屋に向かっていく。


「──こちらのお部屋になります。


 お食事の時間は六時半になります。一階の食事処でのご提供となります。浴衣でも私服でもどちらでも大丈夫です。


 よろしければ館内用の下駄がありますので、そちらをご利用ください。」


すると、後藤さんが笑顔になる。


「へえ。下駄があるなんて洒落てますね。」


「はい。スリッパですと、館内を歩けないので。


 でも、お風呂上がりのお客様ですと、お食事の時靴を履いて頂くのも申し訳ないですし。


 あ、今は見えないんですけど、昼間だと窓から海も綺麗に見えるんですよ。


 明日の朝、良かったらご覧になって下さいね。」


私の言葉に2人が嬉しそうに頷く。


「それでは、失礼いたします。」


お辞儀をして退出する。


(気に入ってくれてるといいけど。)


そんな事を思いながら私は足早に食事処へと向かった。


 食事処では婆ちゃんがせっせとおもてなしをしてくれていたので、私も慌てて配膳などを一緒にする。


 暫くすると、浴衣を着た桐谷さん達がやって来たのでお辞儀をして、ドリンクの注文を取りに行く。


(うわ、国宝級イケメンの浴衣!!カッコいいっ!!)


そんな事を思いながら私は営業スマイルを浮かべた。


「お飲み物は水かお茶ですと、無料でセルフサービスとなっております。


 それ以外は有料となっておりますが、何か注文されますか?」


すると、後藤さんが嬉しそうに頷く。


「おい、桐谷。ビール飲んじゃおうぜ。」

「…そうですね。では、一杯ずつ注文してもいいですか?」


そう言われて私は頷く。


「かしこまりました。ただいまお持ちします。」


ビールを持っていくと2人は楽しそうに談笑していた。


(なんか新鮮だな。──って!

 いけないいけない、他のお客様もおもてなししなくちゃ!)


そんな事を思いながら慌ただしく夜は更けていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ