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020.後・襲撃

「本当にありがとうございます」

「頭上げてください、如月さん」

「いえっ、最近八階層で帰って来ない探索者が増えていたんです。魔の八階層って言われているくらいだから仕方ないとは思っていたんですけれど、そのうちの何割かは必ずこいつらの仕業です。その犯人を捕らえて頂いたんだからきちんとお礼をするのはJDA職員としては当然のことです」


 十兵衛たちが帰って来たら受付嬢の如月さんが上司らしき人と共に迎えてくれた。当然捕まえた犯人は既に引き渡してある。

 余罪がどれだけあるのかしっかり吐かせるらしい。屈強な男たちが、折れた腕も関係ないとばかりに連行して行った。


 きっとこれからかなり厳しい詰問が待っているのだろう。自業自得と言うか、それでも奪われた命は帰って来ないので、きちんと死刑判決を貰って欲しいと十兵衛は思った。


「まぁ襲われたから撃退しただけです。一応スマホに証拠も残っています」

「JDAには有望な探索者のダンジョン探索配信を見る職務を持っている人もいるんです。そして望月茜さんの配信ももちろん見ていました。故に銃声と共にドローンが撃ち落とされた事も知っているんです。それだけで十分な証拠になります。もちろん映像の証拠は頂きます。犯罪の証拠となりますので、提出をお願いします」

「はい」

「それよりも上位の探索者相手に戦って勝ってしまう、それも無傷でと言うのが信じられないです。と、言うかクイーンビーやキラービーの巣は単体パーティで挑む物ではないです。そこは自覚してください」


 如月さんがちょっと説教モードに入る。十兵衛は素直に頭を下げた。


「すいません、いけると思ったので」

「いえ、実際戦いは優勢に進めて怪我もなくこなしたのだからその判断は間違っていません。いませんが、常識と言うのがあります。暁の皆さんは少し規格外と言うか、常識外れなところがあるので、そこら辺は留意してくださると助かります。配信を見ていた職員なんかずっとハラハラして見ていましたよ」

「すいません」


 十兵衛としては「すいません」としか言いようがない。

 だがクエストもあり、行けると判断した。放置すれば他の探索者が増えすぎたキラービーにやられてしまうこともあるだろう。総合的に判断して、十兵衛たちがやるべきだと思ったのだ。


 そこに激しい戦闘をすれば梨沙の虫が苦手問題が解決するかもしれないと言う気持ちがなかったと言うと嘘になるが、八割はきちんとした理由を持って挑戦したのだ。

 そしてその挑戦は予定通りに成功した。ならば問題ない、と言うのが十兵衛のスタンスだった。


「あ、多分望月さんの配信が途切れて心配している視聴者がいると思うので、北条さんのアカウントでも良いので生存報告をすると良いと思いますよ」

「そこは思い当たりませんでした。やってみます」

「うん、やっちゃうね」


 茜はマジックポーチからドローンを取り出すと配信開始を声認証で始める。するとコメントが来るわ来るわ、正直目が滑って全部を追う事ができない。

 茜の配信で十万人を超えていたと言うのでそれだけの視聴者が配信が突然途切れた事に寄って心配させてしまっていたのだろう。


(そういう事も考えないといけないんだな。勉強になった)


 十兵衛とて何でも出来るわけではない。更にダンジョン配信界隈はまだ素人と言って過言ではない。

 視聴者は大事なお客さんであり、偶に有用なアドバイスをくれたりもする。更に犯罪などに巻き込まれた時の証人にもなる。


 ダンジョン探索をするに辺り、ダンジョン配信を義務化すると言う法律はきちんと考えられているのだなと思った。

 ただ今回のように狡猾な相手はドローンを無力化してから襲うので、完全な防備とは言えない。


「とりあえず、無事を報告する配信でした。今日はもう上がるので切りますね。ありがとうございました」


 梨沙がドローンに向かってペコリとお辞儀する。そしてすぐに配信を切った。


「これで安心ですね」

「えぇ、大丈夫だと思います。助言ありがとうございます」

「探索者のサポートをするのが受付嬢の公務ですから気にしなくて良いですよ。暁の皆さんにはハラハラさせられていますが」


 くすくすと如月さんは笑って言う。心配を掛けてしまっているかも知れないが十兵衛たちの当面の目標は中層、そしてその先の下層だ。深層はまだ通用しないだろう。もっと中層などでレベルアップして、連携も深めないといけない。更に装備も少なくとも最澄と茜の分は更新しなければならないだろう。


 下層は実力があっても通用しない事が良くある場所だ。その分報酬は良いが、それにつられて命を失っては本末転倒である。

 十兵衛は誰も失わずに下層までしっかり行くプランを頭の中で組み立て、まずは十層をクリアすることを目標にこれからも頑張ろうと誓った。



 ◇ ◇



「いやぁ、十兵衛マジすげぇな。躊躇とか全くなかったもんな」

「えぇ、あれは真似できないわね。私も剣術道場で人を斬る練習をしたことがあるけれど、実際に相手が居て斬れるかって言うと自信がないわ」


 梨沙と十兵衛が白い高級車で去っていった後、最澄は茜に今日の感想をこぼした。

 茜もやはり十兵衛が躊躇いもなく襲撃者を殺した事にショックを受けていた。だがそれは助けられたのだ。殺さずに無力化すると言うのは逆に難易度が高い。


 十兵衛は二人、いや、三人を一瞬で殺し、一人を無力化した。そして無力化した相手は最澄に任せ、帰り道は十兵衛の忍術と忍者刀、そして手裏剣などで全て倒してしまったのだ。

 八層までのモンスターなど十兵衛一人居れば良いと言うのが証明された瞬間であった。


「まぁ対人はすぐ慣れるってことはないだろうけどよ、これからもきっとある。その時にちゃんと覚悟して戦えるようにならないとな」

「そうね、相手は犯罪者なんだから手加減なんてしていたらやられてしまうわ。もちろん一般の地上の犯罪者程度なら私は手加減しても無力化できるけれど、上位の探索者相手にそれができるとは思えないわ。修行あるのみね」

「あぁ、梨沙ちゃんも虫苦手だって言っててもちゃんと戦ってたしな。苦手なんて言ってられないよな」


 最澄と茜は今日のキラービー掃討戦、そして襲撃者撃退の話をしようとギルド北側にあるダンジョンビルの一階にあるカフェに入り、じっくりと話をした。

 カフェの中はかなり明るい雰囲気だったが、二人の雰囲気は真剣そのもので、店員すら近づき難い雰囲気なことは最澄も茜も気付かなかった。


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