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その武器に何を思う ~愛の先にあったのは絶望の連鎖だった~  作者: 人鳥迂回


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相談

 リーナの説得には長期戦も覚悟していたのだがリーナからはあっさりと許可が出てしまい拍子抜けだった。

 俺に対して余り女性と喋らないで欲しいと言ってきたり、図書室の受付と少し話しただけでも嫉妬してきたリーナとは同じ人間とは思えない。


「本当に良いのか?俺が言うのも可笑しいけどヘイルも女の子だぞ?」


「どういうことですか?」


 ヘイルから少しだけ怒りの籠もった声が飛んでくる。確かに今の言い方では少し語弊があるかもしれない。別にヘイルのことを女だと思っていないわけではなく、リーナの嫉妬の対象にならなかったのが不思議なだけだ。


「勘違いしないでくれ。リーナはちょっと嫉妬深くて、俺が女子と関わろうとするとアレなんだ」


「嫉妬深くはない。ただ嫌な気持ちになるだけ」


「なんでも良いけどさ」


「なるほど。分かりました。横やりを入れてしまって申し訳ありません」


 ヘイルはこちらを向いてはいるもののそれ以上言葉を発することはなかった。再度俺とリーナは向き合い先ほどの続きから会話を進める。


「それでなんでヘイルなら良いんだ?一応聞くけど他の生徒なら?」


「駄目に決まってるでしょ」


「だよな」


「ヘイルが良いのは何となく」


「リーナの匙加減ってことか」


「それとも違う。言葉で説明できないけど」


「もしかしたらですが」


 ヘイルが小さく右手を上げてから話に入ってくる。一応は3人で会話をしているわけなのだから遠慮をしなくても良いのだが、話を遮らないようにタイミングを見計らって意見を述べる。


「私がアーティファクトだからかもしれません」


「どういうことだ?」


「既にロージスさんはリーナさんと契約しています。新しくアーティファクトと契約することはありません。ですので私となら新たな関係性が産まれることもなく安心しているのではないでしょうか」


 確かにヘイルの言うことにも一理ある。リーナの方を見ると少し考え込む素振りをしていた。ヘイルの言っていることが図星だったのだろうか。それにしては考え込む時間がかかっているように思える。


「そういうのじゃない……はず」


 これ以上は埒が明かない。リーナは何となくだがヘイルと一緒に練習することに許可を出してくれた。今はそれだけで充分だろう。


「取り敢えずさ、明日の放課後から頼むわ」


「そうですね。分かりました。リーナさんもよろしくお願いします」


「よろしくね」


 俺たちの最初の顔合わせは大きな問題が起こることも無く終わった。



 その後は特に3人で話すこともなく放課後になった。授業が終わる度にリーナは俺の席へとやってくるが、ヘイルは席にいないか外を見続けているかの何方かであった。用事もないのに態々声をかけることもしない。

 放課後にやる予定は決まっており、練習する場所をソロンに聞きに行くことになっている。連絡とかは特にしていないが、基本的には生徒会室に居ると言っていたので直接向かっても問題はないだろう。


「リーナ」


 帰る準備を先に終え、俺の席まで来ていたリーナに声を掛ける。


「ん」


「今日はソロンのとこ行くぞ。練習する場所を確保しないとな」


「昨日の訓練場はダメなの?」


「分かんねぇ。ただ毎日やるとなれば俺たちが占領するのも悪いだろ」


「私もいるから皆が困る」


「自虐は程々にな」


 リーナの頭に軽く手刀を落とす。痛くするつもりは無く、少し撫でるような強さ。

 冗談で言っているのは分かるが周りからすれば冗談では済まないのだ。本当にリーナがいるから使えないなどというクレームが発生してもおかしくない。


「うし、それじゃ行くか」


「うん」


 広い校舎の中でこの教室から生徒会室まではかなり歩く。階層こそ違えど校内であることには変わらないので大した問題でもない。

 廊下を歩き、階段を登る間も他の生徒とすれ違うことがある。その度に距離を取られるため最初から壁際を歩くので心労という点では本来の距離以上に歩いている気がするのだ。

 ソロンと戦う前よりは悪意を直接感じることも少なくなったので此方に危害を加えてくる心配が少なくなっているだけ不幸中の幸いだ。


 コンコンと生徒会室の扉をノックする。流石の俺でもいきなり扉を開けて中に入る事はしない。

 中から返答の声が聞こえてきたので扉を開ける。俺は生徒会室に来るのは2回目なので中がどうなっているのか分かっているがリーナは初めての生徒会室に少しだけ興味が湧いていたようだ。辺りをキョロキョロと見回していたが殺風景なこの部屋にすぐに興味を失ってしまった。


「ソロン、ちょっといいか?」


「なんだロージスか」


「ロージスくんにリーナちゃん。こんにちは」


「こんにちは」


 中に入ると向かい合って机の上で書類仕事をしているソロンとバレットがいた。

 昔、親が書類仕事をしている時に部屋に入ったら他人には見せられない重要書類を書いている最中だったらしく怒られて思い出がある。

 生徒会長が書類仕事をしているため、俺たちが見たら悪いものの可能性がありすぐに近くには寄らず後ろ手に扉を閉めて入り口で待つことにした。

 

 「2人ともどうしたの?椅子空いてるし座りなよ」


「良いんですか?書類仕事しているみたいですし」


「ただの雑用だ。お前たちが気にする必要はない」


 入り口で待つ俺たちを椅子に座らせるバレット。本人たちが良いと言うのならお言葉に甘えて椅子に座ることにする。2人が対面に座っているため何処に座ろうか迷っていると、バレットは自分の書類を纏めて立ち上がる。そしてソロンの横の席へと移動した。


「ほらほら座って座って」


 2人の対面の席に着席を促されたため移動した。

 

 俺たちが着席すると同時にソロンからの質問が飛んできた。


「それで何のようだ?遊びに来たというわけではないのだろう?」


「ああ。俺の戦い方の話なんだが教えてくれそうな奴に目星が付いてさ」


「名前は?」


「同じクラスにいるヘイル・リズレットって奴」


「ああ!あの子!ロージスくんと同じクラスだったんだね」


 ヘイルの名前を出すと、バレットは食い気味に会話に入り込んできた。ヘイルが上級生と絡んでいる姿は想像できないし、バレットもアーティファクトとして注目していたのだろうか。


「知ってたんですか?」


「一応ね。そっかそっか」


「ううん。なんでも。それで要件は何かな?」


「練習場所とかってどっか良いところないかなって。訓練場毎日使うわけにもいかないからな」


 ソロンは書類を書いていた手を止めペンを置く。


「寮の裏手でもやれば良い。軽い練習や修行などは制限はしていない。ただし、建物や土地への被害は出すな。仮に何かあった場合には実家への弁償の手紙を出す」


「分かった。一応勝手なことをするわけにもいかないと思ってな」


「いい心がけだ。それだけならもう帰れ。僕たちは忙しいんだ」


 この部屋から出る時は大体追い出されている気がする。今日は1人ではなくリーナも一緒。目的は達成したし長々とここにいる理由もないため帰ることにする。


「んじゃ」


「またね。ロージスくん。リーナちゃん」


「また」


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