年越しそば
「今年も一年お疲れさまでした。ではいただきます」
マイが音頭をとる。なんて言うか、うちでは僕がリーダーっぽいけど、こういう締めの一言的なものは苦手だ。なんか恥ずかしい。だから、だいたいマイがジブルがやる事になる。
「「いただきます」」
テーブルの上には『年越しそば』。僕、マイ、アン、ジブルでリビングの卓を囲んでいる。東方和国では大晦日にそばを食べる。最近の和国ブームにより、王国、魔道都市では六割以上の人がそばを食べるらしい。ジブル談。
最初に七味を入れる。僕的にはうどんは一味でも七味でも構わないが、そばは七味だ。一味より七味の方が出汁っぽいものが入るから、そばの風味に合う気がする。そして、途中で味変。ゆず胡椒だ。ゆず胡椒は万能だ。けっこういろんなものにつけてもいい感じだ。そして汗をかきながらスープを飲み干す。
「なあ、なんでそばなんだ? 別にそばが嫌いって訳じゃないけど、寒いから年越し担々麺でもいいんじゃないか?」
ジブルが即座に反応する。
「ザップ、あんたねー。わびさびって知らないの? 寒いしんしんと雪が降る中、赤々とした炎のような担々麺より、なんかアースカラーでしんみりしたそばの方が合うに決まってるでしょ。それに、薬膳ではそばには体を温める効果があるって言われてるのよ」
「おいおい、そばが体を温める? 確かに食ってすぐは体は温まるが、すぐに冷えるぞ」
「そうですね。私はもう寒くなってきました」
アン、三杯も熱いそば食べたのにもう体が冷えたのか? 変温動物は大変だな。
「わかった、わかった。暖炉の前に行け。燃えるなよ」
ドラゴン娘は、気を抜くと火だるまになる。自分自身が不燃物だから火に近づきすぎるんだよ。
「やっぱ寒い時は、担々麺、それかうどんだ。そばは体が冷える」
やっとマイがスープを飲み干した。そして会話に入ってくる。
「確かに夏におそば食べたら涼しくなるわよね」
「そりゃ、冷たいもの食べたら体も少しは冷えるわよ」
ジブル、しつこいな。本とかの知識を妄信するのはよろしくないな。説明しよう。
「知ってると思うが、冒険者の冬の仕事には氷点下の中外に出る事もある。体が冷えて末端とか痛くなってくる。そういう時に、温かい汁ものを口にする。薬味バリバリ入れるとじんわり汗が出てくる。俺は麺類が好きだから、担々麺、うどん、そば、ラーメン、ちゃんぽんとか色々ためしてみた。何が一番その後の温さの継続力が高いかをな。当然段違いのトップは担々麺。俺が担々麺を愛してる理由のうちの一つだ!」
「それで、そばが最下位だったのね」
マイにセリフを取られた。
「そうなんだよ。だから実践で、そばは体を冷やすんだと思う」
「そうなのね。寒がりのザップが実験したって事は信憑性があるわね。私も今度魔道都市で検証してみるわ」
「あ、けど、それでも問題ないでしょ。だって大晦日は家でゆっくりしてる訳だし、外に居る訳じゃないんだから」
ジブルが頷いて口を開く。
「和国では昔からそばを大晦日に食べてたって事は、大晦日は家に居ようという先人の知恵なのかもしれないわねー」
うん、年越しそばは家族で温かいとこで食べてゆっくりする。それは昔から連綿と繰り返されてきた事なのだろう。
諸説あるかもしれませんが、昔、私がやってみた実験の結果です。
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