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14. だからコンサルって楽しい!

「皆さん、こんにちは。今日もお忙しそうですね」

「コーデリア様!」

「ようこそいらっしゃいました」


 真っ白な制服に身を包んだクレイグさんとイライアスさんが、揃って私に敬礼する。


「お二人とも、そんなに畏まらないでください」

「いえ、コーデリア様は私たちの救いの女神ですから」

「その通り。コーデリア様のおかげで俺たちの人生は変わりました」


 先日、ワイラー司教を捕まえたあと、ローナン大司教はすぐにハーシェル一家に連絡を取って、〈聖衛士〉としての正規雇用を打診してくれたらしい。


 給金は今までの額の倍以上、その他の待遇も申し分なく、ハーシェル一家は家族で話し合った結果、再び神殿と雇用契約を結ぶことにしたのだった。もちろん私も事前に手紙で話を聞いており、「ローナン大司教様は信頼できる方です」と太鼓判を押した。


「コーデリア様が作ってくださった〈聖衛士〉という誇れる名前を、これからも守っていきたいと思います」


 イライアスさんが胸に手を当て宣言する。

 その表情は自信に満ちていて、これからの輝かしい活躍を予感させた。


「ありがとうございます。皆さんを信じて、これからも見守っていますね」


 すると、遠くからクレイグさんを呼ぶ声が聞こえてきた。


「コーデリア様すみません、新入りが困っているようなので手助けしてきます」

「それは大変。どうぞ行ってきてください」


 クレイグさんを見送りながら、思わず顔がほころぶ。

 これまで敬遠されてきた仕事に、新たな人材が入ってきた。

 〈聖衛士〉はきっと一過性のブームではなく、やりがいのある誇り高い立派な職業のひとつとして続いていくことだろう。


 そんなことを考えていると、ふいにイライアスさんが尋ねてきた。


「さっき仰っていたこと、本当ですか?」

「え? 何のことですか?」

「"これからも見守っている"と……そう仰ったのは本当ですか? これで終わりではなく、またあなたにお会いできますか?」

「ええ、それはもちろん。〈聖衛士〉の発案者としての責任がありますし、実はローナン大司教からも今後も継続してアドバイスしてほしいとご依頼いただいているんです。ですから、これからも時々様子を見にお邪魔させていただくと思います」

「そうでしたか……それはよかったです」


 イライアスさんが安心したように微笑む。

 それから、どこか秘密めいた眼差しで私を見つめた。


「実は雇用契約に関する話し合いの際に、ローナン大司教に言われたのです。私から聖属性の強いオーラが感じられると……」

「えっ? それって貴重な力なのでは……」

「はい。聖騎士の中でも、このオーラを持つ人は数えるほどしかいないとか。ですので、この力をさらに伸ばせるよう、同じ聖属性のオーラを持つ聖騎士の方々との訓練を特別に許可していただけました」

「それはすごいですね。でも、大丈夫ですか? 貴族しかいない中での訓練というのは……」


 貴族は上下関係へのこだわりが強い。

 だから、そんな中に平民がひとりで放り込まれるなんて、嫌な予感しかしなくて心配になる。


 しかし、イライアスさんはそんな私を見てなぜか嬉しそうに笑った。


「私を心配してくださっているのですか? 大丈夫です。この顔のせいで誤解されやすいのですが、私は意外と図太いのです。それに、〈聖衛士〉という肩書きが名ばかりではないと証明したいですから」

「そうでしたか……。では、私はそれを応援しなければいけませんね」

「はい、ぜひ」


 イライアスさんがにっこりと微笑む。

 この儚げで美しい笑みを浮かべる人が図太い性格をしているだなんて、ちょっと信じられないけれど、たしかに長年の偏見に耐えてきたという実績がある。きっと大丈夫だろう。


「また今度お会いするときに訓練のことなど教えてください」

「もちろんです。必ず」

「では、このあとすぐ予定があるので失礼させていただきます。ご家族の皆さんによろしくお伝えください」

「分かりました。どうぞお気をつけて」


 爽やかな風が吹きわたる中、私はイライアスさんと手を振って別れる。


 コンサル業を立ち上げて初めてのお客様。

 この仕事を始めなければ、もしかしたら出会うことはなかったかもしれない。


 そんな人たちと仕事を通じて関わり合い、人生の進み先をきっと良いほうに変えることができた。彼らの笑顔を増やすことができた。


(だからコンサルって楽しいのよね)

 

 心なしかいつもより軽い足取りでステップを刻み、暖かな陽光が差す方向に向かってくるりとターンする。


「さてと、次のお客様のところへ行かないとね」


 実は今回の件を知ったとある飲食店から、赤字経営から抜け出すためのアドバイスが欲しいと依頼があったのだった。


「よーし、この案件も成功させるぞー!」


 自らを鼓舞するように拳を高くあげながら、私は新たな章の始まりに胸を躍らせたのだった。





お読みいただきありがとうございました!

(続きを書くかどうか未定のため、一旦完結にさせていただきます)

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