表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/10

第11章:ジャロガの日常に


〇ドロメダジャンクション・個人UFO乗り場巨大な発着ゲート。

個人用UFOが音もなく滑り込み、前の機体が発進すると同時に次の機体がぴたりとその場所へ収まる。

誘導員の姿はない。すべてドロメダジャンクション演算システムが制御している。

「地球」

「木星」

「アンドロメダ支部」

などが無機質に流れている。

ジャロガは映画監督、マネージャー、映画製作会社のスタッフと笑顔で握手を交わす。

映画監督

「今日は企画の本筋までお話しできて、本当に光栄でした。」

ジャロガ

「こちらこそです。

世界観が非常に美しい作品ですね。」

責任者

「ははは。

もう相思相愛ですな。」

笑いが広がる。

映画監督たちは軽く会釈し、それぞれ待機していた個人UFOへ乗り込む。

静かに浮上し、

他のUFOと交差しながら、

無数の光の流れへ溶け込んでいく。

ジャロガも自分専用のUFOへ向かう。


〇個人UFO・車内

高級ホテルのラウンジを思わせる落ち着いた内装。

窓いっぱいに宇宙。

無数の航路が光の筋となって交差している。

自動音声

「地球まで二十八分。

本日の航路は銀河標準ルートです。

快適な宇宙の旅をお楽しみください。」


UFOが滑るように発進する。

責任者は窓の外から見送りながら声を掛ける。

責任者

「今回の映画音楽と並行して、

ぜひ次回作もお願いします。」

ジャロガ

「もちろんです。」

少し笑う。

ジャロガ

「最強の音楽を作ります。」

責任者は満足そうに頷く。

扉が閉まる。

静寂。

ジャロガは膝の上へノートパソコンを置く。

迷いなく画面を開く。

そこに映るのは――

喫茶ダイナマイト。


店内は静まり返っている。


誰もいない。

ジャロガ

「……あれ?」

画面をドラッグして視点を変える。

ジャロガ

「別の角度から……。」

その瞬間。

スマホが鳴る。

ジャロガは画面から目を離し、電話に出る。


〇文化ホール・舞台

大歓声。

照明が激しく点滅する。

DJブースの中央。

ジャロガがヘッドホンを付け、

巨大な観客を前にノリノリでターンテーブルを回している。

重低音。

レーザー。

観客の歓声。

イントロだけは、

まるで世界的クラブイベントのように壮大。

ジャロガが勢いよくフェーダーを上げる。

「来るぞ!」

そんな空気が会場を包む。

しかし。

突然。

照明が真っ白になる。

舞台袖から。

小さな園児たちが整列して歩いてくる。

全員うさぎの耳。

カスタネット。

鈴。

タンバリン。

ジャロガも、

いつの間にかうさぎの耳を付けている。

伴奏だけは超本格的。

しかし歌は――


♪『うさぎさん』

♪うさぎさん うさぎさん

どうしてお耳が ながいの

だれに ひっぱられたの?

おしえてくれたら・・・


客席。

保護者たちが大喜びで手拍子。

スマホで必死に撮影している。

ジャロガはDJブースで真顔のままリズムを刻んでいる。


〇保育園・職員室

ジャロガは園長と職員に囲まれている。

机には子どもたちの絵。

折り紙。

手作りのメダル。


保育園教員

「こちらへ来られてると聞いて、

どうしてもお願いしたくて。」


ジャロガ

「楽しかったです」

少し照れ笑い。


ジャロガ

「僕に音楽家として最初に楽曲提供依頼をしてくれたのが

ここ「ハッチュリ保育園」の園長なんですよ。」


教員たちは嬉しそうに拍手する。


新人教員

「え!そうだったんですか!スゴい!」


ジャロガ

「はい、僕の音楽家としての最初の仕事は園歌を作ることでした」


教員

「そこから園児のご家族に評判が広がって。今では地球でも大活躍」


新人教員

「地球でも!?地球にも歌があるんですか?」


教員

「あるでしょ!?(笑)」


ジャロガ

「そう、僕もそこからのスタートだったんで、地球人向けに曲を書くため、地球のAIへ登録して、人間の感情や文化を一から学んだんです」

新人職員

「AIに登録?」


ジャロガ

「ええ。地球人が何に笑って、何に泣いて、何を美しいと思うのか。それを知らないと、本当の意味で地球の音楽は作れませんから」


新人教員

「どんな地球人とマッチングされたんですか?」


ジャロガ

「そうですねぇ……。」

「かわいいですよ。」


教員

「女性?」


ジャロガ

(頷く)

「でも、信じられないくらい怒りっぽい。」


教員たちが笑う。


ジャロガ

「ただ、怒る理由はいつもちゃんとあるんです。」


「だから彼女の理論、間違えてはないんですよね……。」


少し照れ笑い。


ジャロガ

「怒られるたびに、僕も成長させられてます。」


教員

「あ、そうだ。明日はお母さんたちがダンスを披露するんです。」

ジャロガは頷く。


教員

「もちろん音楽はジャロガさんの曲です。ジャロガさん明日は・・・」

一瞬だけ固まる。

ジャロガ

「あ……はい。」

乾いた笑い。


〇ジャロガ自宅・音楽スタジオ(地球)

薄暗いスタジオ。

シンセサイザー。

巨大なスピーカー。

壁一面のモニター。

ジャロガは見慣れない発光飲料を二本並べ、地球では見かけない清涼タブレットを一ケース机に置く。

パソコンを起動する。

画面には再び

喫茶ダイナマイト。

店内は静まり返っている。


ジャロガ

「……やっぱ、誰もいないじゃん。」

画面を切り替える。

入口。

厨房。

店内中央。

異常なし。


ジャロガ

「別の角度……。」

最後のカメラへ切り替える。

沈黙。


床。

誰かが倒れている。

ジャロガ

「……え?」

画面を拡大する。

倒れていたのは、

フミスケだった。


その時。

認証音。


自動ドアが開く。


そこに立っていたのは、

オレンジのヘルメットを被ったセキミ。

ふたりはその場に立ち尽くす

音: 保育園で聴いたあの『うさぎさん』の旋律。しかし、それはもはや童謡ではない。複雑にレイヤーを重ねられ、脳の奥を直接叩くような超重低音ベースと、神経を逆なでするほど執拗に繰り返されるカスタネットの高速打音が、毒々しくリミックスされている。 カスタネットの音は、まるで誰かの心拍を切り刻むような、鋭利で無機質なリズムを刻み続けている。

ジャロガは思わず息を呑む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ