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妖精と王子様のへんてこメヌエット(へんてこワルツ5)  作者: 魚野れん
何だかんだで絶好調!

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 ああ良かった。エルフリートは、そっと肩の力を抜いた。オズモンドが何を考えているのかが分かり、また彼がエルフリートの活動に協力的な姿勢を見せているというのは、エルフリートに想像以上の安心感を与えてくれたのだ。

 エルフリートはオズモンドが好きだ。人間として、一緒に活動する仲間として、とても好ましいと思っている。職務に忠実で、しかしエルフリートの信頼に誠実な心を返してくれる。


「オズモンド、ありがとう」

「簡単に俺の言う事を信じて良いのか?」

「うん」


 意地悪な顔をしてオズモンドが聞いてくる。エルフリートは間髪入れずに信じていると答えた。彼は意表をつかれたかのような顔をして数秒固まると、それから破顔した。


「お前だけは、裏切れないな。たとえ仕事だったとしても」

「ううん。仕事の時は仕事を優先して良いよ。オズモンドの仕事は、この国を守る事だもん。私があなたに裏切られる時は、私はこの国にあだなす存在になった時だし。私がそこまで行動するって事は、きっと私なりに強い決意があるはず。オズモンドがそれに引きずられる必要はないよ」


 エルフリートがそう言えば、オズモンドはますます笑みを深くする。


「まあ、私がグリュップ王国を裏切るような真似なんて、するとは思えないけどね」

「はは。そりゃそうだ。けどよ、フリーデがそうじゃなくても、利用されるって場合もある。その時は俺は遠慮なくお前を騙すぜ」

「良いよ。私はオズモンドを信じるから」

「あー……もったいねぇな、ほんと。ブライスが惚れるわけだ」

「おいっ、蒸し返すなって」

「あはは」


 ブライスがオズモンドを睨む。知り合い程度かと思っていたら、普通に仲が良いんだもん。びっくりしちゃう。血縁者だと言われて納得したくらい。

 そんな時、乾いた音がした。しばらく私たちのやりとりを静かに見守っていたエルフリーデが小さく手を叩いたようだ。


「今度は屋敷へ招待しよう。あなたとは違う形(・・・)で、もう一度話がしたい」


 エルフリーデがエルフリーデとして話をしてみたいらしい。エルフリーデが興味を持つなんて、意外。エルフリートはのんきにもそんな事を考える。

 オズモンドは楽しそうににやりと顔を歪ませた。


「俺は浮気とかしないからな」

「知らないよそんなの」


 ちらっとレオンハルトに視線を送り、オズモンドが嘯く。ギリギリの発言をしてくるあたり、ちょっと意地悪だ。対するレオンハルトは、しれっと彼の意地悪を跳ね除ける。ブライスと違って冷静に受け流しているのがかっこいい。


「へへ、レオかっこいいね」

「……当たり前だよ。愛する人たちを信じなくてどうするの」

「きゃあ、愛する人たちだって! フェーデ、私たち愛されてるぅ」


 エルフリートは、エルフリートとエルフリーデを同時に含ませた言葉で「信じる」と言ってくれた事に感極まってしまった。

思わず抱きつけば「お行儀」とエルフリーデが嗜め、ロスヴィータがそっと引き剥がしてくる。

 ごめんなさい。でも嬉しかったんだもん。


「えへへ……」

「懲りてないぞこいつ」


 ブライスの指摘に全員が頷いた。ごめん。でも嬉しいと勝手に体が動いちゃう。エルフリートは悪びれもせずに笑って誤魔化した。


「まあ、こうして妹も信頼しているんだ。くれぐれも彼女を頼むよ」

「肝に銘じておこう」


 終始上品で落ち着いた様子を崩さないエルフリーデに、オズモンドもちゃんとした反応を返すしかないみたい。妹のそんなかっこいい姿を見ていると、自分がちゃんとエルフリートとしての活動に戻れるのか自信がなくなっていく。

 でも、もうそろそろタイムリミットだしなぁ。日々自分の姿が男性的になっていくのを感じているエルフリートは、本当に残されている時間が短いのだと思う。


 妹の振りをして好き勝手しておいて、と脳内でエルフリートとしての自分がムスッとしている姿が浮かぶようだ。ごめんね、でもこっちの生活が楽しくって。


「……お兄様って、なんでそんなに気取ってるの?」

「ぶはっ!」


 エルフリートのぼやきにオズモンドが噴き出した。あっ、ちょっと汚っ! エルフリートは慌てて立ち上がる。

 動揺しないエルフリーデは素知らぬ顔で小さく祈りを捧げて魔法を使った。あっという間にオズモンドによる不意打ち攻撃の痕跡が消えていく。


「へぇ……エルフリート殿は器用系……と」

「いや、これくらいならフリーデもできるはずだけれど」


 視線を向けられ、エルフリートはこくこくと頷いた。できないとは言わせない、という雰囲気である。もちろん、できる。

 ただ、彼女の方が丁寧で綺麗かもしれないけど。


「なら、今度何かあったらお願いしてみよう」

「任せて!」


 もう、何でもいいっ! エルフリートはやけに調子の良い返事をした。気を抜いて大丈夫っていう話じゃないけど、もしかしたら……と思いながら接する必要がなくなったのは本当に気が楽だ。

 それに、頼もしいし。


「オズモンド」

「何だ?」

「ずっと仲良くしてね。私たちと!」

「……物好きなやつら」

「えへへ」


 エルフリートが笑うと、オズモンドもへらりと笑った。今日初めて見る気の抜けた笑顔に、エルフリートはますます笑顔になるのだった。

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