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オズモンドとの約束は絶対だ。エルフリートはそんな意気込みで彼が指定したメンバーを揃えるべくスケジュールの調整を頑張った。
エルフリートを迎えに来てくれたロスヴィータとは、あの時に顔合わせをしてしまったが、長く話ができたわけではない。その為、彼女はそのまま食事会のメンバーにおさまっている。一番苦労したのは、アイマルが女性騎士団の指導をしている最中に全員の予定を合わせる事だった。
アイマルがブライスなしで動く事ができるのは、それくらいしかないのだ。他にもなくはないが、個人的な都合の為に様々な部署へ声をかけて回るのは難しい。
ハチャメチャな、とかお転婆だ、とか破天荒だとか言われるエルフリートだが、さすがにそれくらいの常識は持ち合わせている。
よって、迷惑をかけるにしても女性騎士団の中だけにしておこうという事になったのだった。
エルフリートの努力の甲斐あって、全員の都合が合致する日が見つかった。店もちゃんと確保できた。完璧である。エルフリートは思い切りおしゃれをしてロスヴィータと共に約束の場所へと向かう。エルフリートが身に着けているのは、柔らかな生地を幾重にも重ねたワンピースである。
ロスヴィータの服装とのバランスを考えて用意したものであるが、これがなかなか可愛い意匠なのだった。
ロスヴィータが夏の終わりを思わせる夕焼け色の服を着る事が分かるなり、同じような色の服を探したエルフリートが見つけたのが、このワンピースである。
本来、色合わせをするのは“エルフリート”の方である。だからこその同系色というわけだ。因みに、“エルフリート”とレオンハルトは夕闇色を選んでいた。
一応、この服装の色味をお揃いにしたのには理由がある。オズモンドの反応が知りたいのだ。彼がどんな反応を示すのかで、エルフリートたちの秘密をどの程度まで把握しているのか分かるかもしれない。
その反応次第では……という事だ。
本気で知らないのなら、このまま仲良しアピールをして解散すれば良い。知っていてもそれを隠すような動きをするのなら、そうした方が良いとオズモンドが判断したという事だから、曖昧にしたままにすれば良い。
知っていて、それを表に出すようなら、正直に告白し、協力してもらえるようにお願いすれば良い。
とにかく、彼の反応次第だ。オズモンドの考えが知りたいというのは全員一致の意見でもあった。彼と知り合いであるブライスでさえそう言うのだから、この考えはそう見当違いなものではないだろう。
「フリーデ、今日も可愛いな」
「ロスだって、すごく素敵」
ロスヴィータは“エルフリート”の隣に立つには少々普通ではない姿だった。そう、彼女はスーツスタイルだったのだ。
しかし、女性である事をアピールするべく、さりげなく要所にレースが縫い止めてある。過去、男性のスーツにも刺繍を施して豪華にするといった意匠が流行った事がある。あれを参考にしたというわけだ。
エルフリートは彼女の立ち姿を見てうっとりとした。すらりとした体型に、ストレートなスーツ。タイトなスタイルでも素敵だが、さりげなく存在する彼女の凹凸を感じさせないこの服の形は、ロスヴィータを中性的に見せてくれる。
それが、エルフリーデが扮するエルフリートのスーツスタイルとセットとなり、完璧なお揃いコーデになるのである。
「はぁ……完璧」
エルフリートは感嘆の息を吐く。そんな姿をロスヴィータは嬉しそうに見つめていた。その隣には呆れた表情のエルフリーデとレオンハルト、自分は関係者ではないと言いたいかのように視線を逸らすブライスという面々がいた。
注目を集めやすい姿になっている彼らのもとへ、まっすぐに歩いてくる影が見える。オズモンドである。
彼は彼で気合いの入った服装をしていた。店が店だからかもしれないが、オズモンドもきちっとしたスーツスタイルだった。
彼はベージュ色をベースにうっすらとチェック模様が織り込まれた生地のものを身につけている。落ち着いた風に見えるものの、これはかなり高価な生地である。
エルフリートは頭の中でその価値を計算し、オズモンドの経済状況を心配した。
「オズモンド!」
「みなさんお揃いで」
エルフリートが手を振ると、彼は好青年よろしくそれに応えてみせる。何だかちょっと別人みたい。
うーん、緊張してる? 普段と違う丁寧な物腰や柔らかな雰囲気を醸し出す男に、エルフリートは内心で首を傾げた。
「みんな、彼がオズモンド。オズモンド、知っての通り、隣にいるのがロスヴィータ。その隣が兄のエルフリート。あとの二人はもう顔見知りだから紹介はいらないよね?」
「ああ、ありがとう。ほとんどの方はこんにちは。初めまして、エルフリーデ嬢にはカルケレニクス領での工事で一緒に作業をさせていただきましたオズモンドと申します」
あれ、家名は伏せるんだ。珍しい自己紹介だな、と訝しむ。彼の言葉一つひとつを疑ってかかってしまう自分に何となく嫌なきぶんを覚えながら、エルフリートは平然とした笑顔を作った。




