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一人目の頂点その5


===========[現在・22m]=============

一人の魔術師の男が崩壊する崖に飲み込まれ、瓦礫と共に落ちていく。


「(身体強化無しで地面を破壊するとかあの野郎、どんな身体能力してんだ!?

流石に想定してなかったぞ……)」


瓦礫と共に魔術師の男は徐々に地面へ向かって行く。


「(このまま落ちれば、風の鎧が地面を削るせいで地の底まで沈んじまう。

すぐにこいつを解除して突風で浮かな……いや、待て……

人一人を振り回す程の風を見せたやつをただただ、転落させるか…?

いや、少なくとも俺があいつならただ転落させるだけでは終わらせない。

助かるために風の鎧を解除したところを狙って、拳を叩きこんで勝利する。

恐らく、あいつの狙いはこいつだな……。

だったら、解除はすぐにはせずにあいつを迎え撃った方がいいな)」


男はあえて、助かるための突風を発生させずに遠くなっていく崖を見つめる。

彼の予想通りに異世界から来た青年が飛び降りて、落ちている


[……ッ!!ケンさん、あの人まだ風のバリアを解除してません!!]

「何……ッ!?」

「予想通りに来たな…」


魔術師の男は右手の指輪に魔力を流して、真空波を発射する。

しかし、異世界から来た青年は音で存在に気づき宙を蹴って回避し

崩落し始めている岩の後ろへと移動した。


[ケンさん、どうしますか!?]

「どうするも何も……あいつが解除するまで粘るに決まってるだろ。

引き続き、サポート頼むぞ!アンジュ」


異世界から来た青年は同じ岩にとどまらず、様々な岩へと飛び乗っていく。

その際には岩を蹴落として魔術師の男へとぶつけていく。

しかし、彼が纏っている風の鎧は向かって来る岩を削り弾く。


「岩に隠れて落下するまでの時間を稼ぐ気か……

あいつ、俺に何を使わすために落としたのか忘れたのか?」


落ちる魔術師の男がそう呟くと魔法陣を展開され―――


[ケンさ―――]

「どう………」


異世界から来た青年をサポートする神の使いの少女が気づくよりも前に

突風が青年の真横から吹き荒れ、崖に叩きつけられる。


「ッッ!?……あ、あの野郎ッ!!」

[ケンさん!真空波が来てます、早く回避をしてくださいッ!!]

「了解!」


青年は崖を足蹴に跳ぶ事で真空波を避けて、近くの岩に跳び乗る。

魔術師の男は青年が飛び乗った岩へ向かって真空波を飛ばすが

神の使いの少女の指示のおかげで青年はいともたやすく回避する。


「(……あいつ、しぶとすぎるだろ。さっさと諦めて風バリアを解けっての)」

[ケンさん、焦っちゃだめですよ。こういう我慢比べは焦った方が負けですからね]

「ああ……それはわかっ―――」


青年が神の使いの少女へ言葉を返そうとしたところで

彼の真後ろに魔法陣が展開されていた。

何も前触れがなかったというのに、青年は何か嫌な気配を背後から感じた。

そして、真空波が発射されるよりも早くに青年は動く。

が、距離が余りにも近すぎたために避け切れずに右肩に僅かに被弾する。

しかし、かすっただけとは言え、傷はあまりにも深く、鎖骨を切断し、

肋骨にすら到達する程に切り裂かれ、血が噴き出る。


「グゥッッッッ!!!」

[ケ、ケンさん!?う、後ろからだなんて……!!]

「後ろからは飛んでこない、なんて事はないんだぜ、坊主。

(とは言ったものの、完全不意打ちな上に切り落とすつもりで撃ったのを

ギリギリで避けてくるとかどうなってんだ、あいつのセンス……)」


右腕が機能停止し、切り口からは血が噴き出る青年の背後を突風が襲った。

高さにして三階建ての建物に等しい場所から時速にして100km程の速度で

満足に受け身が取れないまま地面に叩きつけられる。


「ガハッッ!!!?」


しかし、それでも青年は意識を保っているどころか動こうとするが

魔術師の男の追撃は止まらない。

落下中の岩、全てを突風で加速させ、青年を押し潰しにかかる。

流石に今までの蓄積したダメージのせいか満足に動けずに青年は岩の山に

埋もれて行った。


「(完全に沈黙したか……まぁ、ここまでしたんだ。

むしろ、して貰わないと困るが……)」


魔術師の男は安堵の息を吐きながら、風の鎧を解除して

自らの落下速度を殺すべく風を発生させる。















[ケンさん!!今です!!]




突然、青年が埋まっている岩山から魔術師の男目掛けて岩が吹っ飛んでいく。


「……なッ!?」


完全な不意打ちに反応が遅れた男は防ぐことは出来ずに直撃して吹っ飛ばされる。

それとほぼ同時に岩山から血まみれの青年が岩を破壊しながら跳び出し

魔術師の男を物凄い速度で追いかけ、追いつくや否や回し蹴りで男を岩山の方へと

蹴り飛ばす。男はくの字に折れ曲がりながら岩山へ突っ込んで行った。

青年の方は血をぼたぼたとこぼしながら、数歩歩いたところで膝から崩れるように倒れた。

彼を中心に血が広がっていく。


[ちょ、ちょっと!!倒したらすぐに治療するって言ったじゃないですか!!]

「……すまん、ありゃ嘘だ……。ここまで深い傷は……治療出来ん…」

[何を言ってるんですか、せめて止血しようとしてください!!このままだと死にますよ]

「……だろ…な……瞼が……重く……なってき……」

[ちょッ…!?ケンさん?ケンさん!!起きて下さい!!ケンさぁぁぁん!!]


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