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一人目の頂点その4

飛んでくる歪みをうまく誘導するべくバク宙などではなく

サイドステップ、ジャンプ、仰け反りなど

出来る限り最小限の動きで回避しながら徐々にやつへと近づいていく。


「こうも難なく躱すほどの身体能力……だと言うのに魔力使用してない。

………こいつ、本当に何もんだ?」


何か考えてるみたいだが、これはでかい隙だ。

後ろへと飛んで行ったのを確認してからやつに向かって走り出す。

おおよそ、後ろの歪みは追いかける形で向かって来ているはずだ。

後はこのまま直前で避けるだけだ。


「そう来るか……」


向かって来る俺を見て、やつは何か呟きながら僅かに笑みを浮かべて立っている。

……野郎、さては俺がやる事に気づいているな?

だと言うのに何もしないって事は相当あのバリアに自信があるのか

果てはそれすらブラフか―――

なんて事を考えていると地面から妙な感覚を感じた。

まるで、何かが下から……まさかッ!!

即座に後ろを振り向くと追ってきているはずの空間の歪みが一つなかった。

それを知ってすぐにバク宙をして追って来る歪みを飛び越える。

追ってきていた歪みは地面から飛び出てきた歪みとぶつかり、地面からの歪みを

破壊し、勢いそのまま野郎へと向かって行き、弾き飛ばされるように消滅した。

事前の事で威力が落ちていたかもしれんがこうもあっさり防げるのか。

いくらなんでも優秀すぎる。どうなってんだ、あのバリア?

そんな事を思っているとやつが指を一本立てて、縦に降ろしているのが見えた。

今、俺がいるのは空中……って事から考えられるの一つだけ、

すぐに宙を蹴って落下速度を上げて半ば無理やり着地する。

そして、着地したとほぼ同時に頭の上を何かが通り過ぎていった。

やっぱり、宙にいる時を狙ってきたか……!!


「……宙を蹴っただと……?」


俺の行動にやつが驚いている隙に切り倒された木へと走り出す。

アンジュから連絡がない以上は、こっちは死なない様に立ち回りながら

早く解析出来るように情報をとれる行動を―――


[ケンさん、解析が終わりました!]


しようと思ったタイミングでアンジュからの報告が入った。

もう、終わったのか、流石だ。


「でかした、全部教えてくれ」

[はい。あのバリアですが、鋼鉄すら温めたナイフで切るバターがごとく切り裂く

高密度の真空波とあの方達も使っていた魔力の壁で構成されていています。

なので、周りにある物は何でも切り取ってしまいます。

その削る能力は異常で山一つ程の質量をぶつけても防ぎきれると思います]

「………マジ?」

[大マジです]


早速、知りたくない情報が来てしまった。

山でも押し潰すの無理っていよいよもって打つ手が

燃費切れまで時間を稼ぐか、苦渋の決断だが逃げるぐらいしかないぞ。


[しかし、ケンさんの一撃なら突破可能だと思われます。

ただ、そんな事をしたら片腕は切り刻まれてミンチになりますので、さ―――]

「隻腕が避けられねえってならそれは最終手段だな」

[……最終手段って…]

「なんだよ?」

[な、なんでもないですよ。それで話の続きなんですが、先程の手段以外に

こちらからの干渉によって突破する方法はありません。

ですが、突破出来ないのならその障壁を消して貰えればいいんです]

「そりゃそうだが、そう言うって事は何か策があるのか」

[……………え、えっと…死んだふ―――]


「どこの誰と通信してるのかは知らんが、よそ見とは随分余裕だな」


アンジュのしょうもない案を聞いていた矢先

やつの声と同時に暴風が吹き荒れ、あっという間に宙へと吹き飛ばされる。

今度は強引に宙へ浮かせてってわけか。

すぐに地上へ戻るべく宙を蹴って地上へと戻―――

ろうとほぼ同時に風の吹く方向が変わり

突風が俺の背中を押して落下速度を急激に上昇した。


「なッ!?」


想定外の速度の上昇に対応出来ずに叩きつけられ、息が一瞬止まる。

その隙に風で宙に浮かせられ、今度は振り回されるように飛ばされ

遠心力を乗せて叩きつけられ、肉は打たれ、骨がきしみ、全身が悲鳴を上げる。

だが、この程度痛いだけでまだ動く事が出来る。

すぐに起き上がって……いや、待て。今の状態は死んだふりするチャンスじゃねえか?

体感高さ7m辺りからかなりの勢いで叩きつけたんだ。

普通なら死んでいるか生きていても動く事は出来ないと判断するだろう。

だったら、ここは相手の動き次第でどうするか決めた方がいいかもしれんな。

そう考えて、あえて動かずに風野郎の様子を―――


「もう動かねえみたいだが、死んだふりって可能性もある。

ここは動きを封じるも兼ねて片足でも切り落としておくか」


このままは絶対にダメだ。

すぐさま、跳び上がるように起き上がってすぐに距離を取る。

それを見て、面食らったかのような顔をした後に笑う風野郎。


「……マジで死んだふりだったのかよ。流石にタフすぎるだろ」

「うるせえよ、引きこもり野郎」

「……引きこもり……クッ…ハハハハ…ハーッハハハハハハハハ!!!

坊主、良いセンス…フフ…してるぜ。ハハハハハハハハ!!」


風野郎は引きこもりがツボったのか大きく口を開けて大笑いする。

風バリアに守られているからって余裕すぎる、正直言ってイラつく。


「ククッ…フハッ…卑怯やズルなんて負け犬の遠吠えは聞いてきたが…フフ…

引きこもりは初めてだ……ハハハハハハハ!!」

「……舐めてんのか、テメェ…!!」

[ケンさん、落ち着いて落ち着いて。今は耐えて下さい]


わかってはいるが、流石に風野郎の態度に更にイラつく。

すぐにでも殴り飛ばしてやりたいが実行すれば隻腕になるんだ、我慢するとも。


「フーーッ…舐めてなんかねえって。むしろ、お前の事を高く評価してるよ」


そう言うと風野郎の足元に魔法陣が展開され、俺は距離を取って身構える。

今度は一体何をしてくる気だ?


「だからこそ、全力で叩きのめさせて貰う。後でねえちゃんが怖いがな……」


上空から音が聞こえ、後方からまるで隕石でも落ちたかのような轟音が轟く。

見ると複数の竜巻が、地面を削り、岩を砕き、木を巻き上げてながら接近していた。

衝撃の光景に驚愕していると再び風を切り裂く音が複数聞こえる。

すぐに連続でバク転をして回避し、更に距離を取る。

前は真空波、後ろからは複数の竜巻。どうすればいい、どうすれば奴に勝てる?

周りにある物を全て削ってくるものに……待てよ………


「アンジュ、確認したいんだがあの風バリアは周りにある物全てを削り取るんだよな」

[はい、解析結果はそうだと書いてありますが……]

「何にでもだな、例えば……自らを浮かすための風でも」

[そうですね。竜巻上になっている都合上、ケンさんを振り回した

突風でも浮かす事は出来ないと思います]

「それが聞ければ十分だ」


後はあいつがあれを出来ない事を願うのみか……やるしかないな。

追撃するべく飛んできた真空波を右に左に躱しながら、奴へと突っ込んで行く。


「突っ込んで来るか……何をする気だ?」


俺が何をして来るか身構えているようだが、何もしてこないなら好都合だ。

範囲内に入るや否や拳を握り締めて地面に向かって拳を穿つ。

バキバキと音を立てて地面が割れ、やつが立っている地面が、がけが崩れ始める。

俺を狙うために高いところにいたのが仇になったな。


「なッッ!!……坊主、テメェ……ッ!!」


更に地面に追撃を加えて、一気に崖を崩壊させる。

崩壊する崖に巻き込まれ、やつは転落していく。

後は――――――


[落下させるですか……確かに突風で浮くことも出来ませんし

有効そうですけど、風のバリアを解けば浮くことは出来ますよ]

「それぐらいわかってる。別に目的は奴を落下死させるわけじゃない。

目的はあいつが助かるために風で浮こうとする事だ」

[そうか、風のバリアを纏っている状態で浮くことは出来ませんから

助かるためには解除するしか手がないですもんね]

「そういう事だ、引き続きサポート頼むぞ」


すぐに崩れていく崖を飛び降りて、やつを仕留めに向かう。


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