表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/128

虚空の少女2

とにかく一旦落ち着くために呼吸を整える。

びっくりした、本当にびっくりした、予想外すぎた。

呼吸を整え、少女を見る。

相変わらず表情には喜怒哀楽などの一切の感情は見えない。

だと言うのにあんな事をしてくるとはどういう事なんだ。

全く意図が読めない。


「お前、なんで俺のズボンを降ろそうとしたんだ」

「……………だって、そうしなさいって」

「……それは、誰に言われたんだ」

「…………お父さん」

「……お父さんに?」


そう聞くと少女は頷いた。


「………しないと、殴られた、蹴られた、ご飯くれない。

………だから、したいの」


言葉が出なかった。

驚愕したからか、それとも憤怒したからなのかはわからないが

とにかく何も言葉を発することが出来なかった。

父が娘にそんな事をさせてたって事か。

ふざけてやがる。

今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたい。


「そんな事しないからそういう事をしようとするな!!」

「………なんで?」

「なんでって俺が嫌だからだよ」

「……男の人は…みんな嬉しそう……だったよ」

「俺は嬉しくないんだよ」

「……なんで?」

「なんでって俺が嫌だからだ」

「…男の人は……みんな楽しそう…だったよ」

「俺は楽しくないんだよ」

「……なんで?」


ダメだ、会話がループして進まない。

完全に洗脳されてると言った具合なのだろうか。

どうしたものかと考えていると腹の虫が鳴る音がした。

少女から聞こえたようだ。


「腹が減ったのか?」

「………うん……小さいののド」

「よし、待ってろ。行ってきてやるから」


小さいのってのは多分ゴブリンの事だろう。

って事からドが何のことを指すかは………うん、忘れよう。

看護師か誰かに言えば持ってきてくれるかなぁ。


「キコ、悪いがあの子を見てやってくれないか」

「了解なのです、お姉ちゃんらしく振舞って見せるのです」

「お前は力は強いんだから加減しろよ」

「わかっているのですよ」


キコにあの子の事は任せて、看護師を探す。

どこにいるんだろうか。

見渡してみるがそのようなところは見当たらない。

これなら受付まで行って言いに行った方が良さそうだ。

受付に向かってその事を伝えるとすぐに用意してくれるらしい。

なので、病室まで戻って部屋に入る。

と同時にキコが飛び込んできた。あぶなっ!?

咄嗟に受け止める事でなんとかなった。びっくりした……。


「その角度で突っ込んでくるのはやめてくれ。刺さるだろ」

「そ、そうなのでした。ごめんなさいなのですぅ」

「次から気を付けてくれりゃいいんだが、どうしたんだ」

「あぅ…お姉ちゃんらしく振舞えなかったのですよ」


あー……そう言う事か。


「それでも見てくれてたんだろ、ありがとな」


頭をポンポンと軽く撫でるかのように叩いて、少女の元へ向かう。


「もうちょいで飯来るからな」

「……………」


特に喋ることなくこちらを見つめてくる少女。

その虚空の表情からして何を考えているのかわからな………


「そそそそそそれはやめろ!!」


また、ズボンに手を伸ばしてきた。

油断した、まさかまたしてくるとは思ってなかったばかりに……。

この世界に来て、多分一番ビビった。

ラオージュの竜巻より、あいつの灼熱地獄よりビビった。


「………なんで?……しないと食べれないんでしょ」

「そんな事ないからそれは忘れろ。いいな」

「…………忘れたら、殴られる…よ…」

「そんな事するわけないだろ。

もし、してくるやつがいるのなら俺が守ってやるから」

「…………………」

「びゃーーー!?!?だから、そうやって俺のズボンに手を伸ばすな!!」

「………だって…」

「しないから!!しないから!!むしろ、やったら飯抜きにするぞ!!」


手を掴んで阻止する。ちょっと油断したらこれだ。

ここまで動悸が激しくなるとは……もしかして、こいつがラスボスか?


「けん、お顔が真っ赤なのですよ。大丈夫なのですか?」

「………ほっといてくれ」


大きく息を吐いて息を整える。落ち着け、俺。

息を吐ききると後ろからカチャカチャという食器の音が聞こえた。

もう来たのか、ありがたい。

このやり取りが続くとなると心臓が持たない自信がある。


「お持ちしました」

「あ、ありがとうございます」

「あの……悲鳴のような声が聞こえてましたが、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。すいませんでした」


食事を乗せたおぼんを受け取って、少女の前に置く。

それを見て、表情こそ変わってないが明らかに驚いているように見えた。


「………いいの?」

「いいも何もお前のだぞ」

「…………食べたら、殴らない?」

「殴らない」

「………………後でするの?」

「す、するかぁ!!」


俺をじっと見つめた後に恐る恐る食事に手を付ける少女。

どれだけな環境で生きて来たんだ、こいつ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ