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虚空の少女3

最初こそ恐る恐るだったが少しずつ食べる速度が上がっていき

今は腹が減っているのか物凄い速度で食べている。


「そんなに急いで食べなくともいいぞ」


そんな事を言ったが、構う事なくリスみたいに頬を膨らませながら

どんどん口の中へと入れていく。

あんまり口の中に入れるとのどに詰まらせるぞ。

そんな食べ方をしているからかあっという間に食べ終える。

胃とか大丈夫なんだろうか。


「旨かったか?」

「……………固くなかった…暖かかった」

「そうか、良かったじゃないか」

「………ねぇ…」

「どうした?」

「…………しなくていいの?」

「し、しないに決まってるだろ!!

いいか、今までお前の周りにいた人がどうかは知らないが

これからはそんな事をお前に強制させるようなやつはいないし

いても、俺がそんなやつ追い払ってやる。

だから、そういう事を言うな」

「………………そう言う……人もいた……でも…入れた。

……後に……殴って……刺して………痛かった」


ただただ淡々と語るだけ。

顔には怒りも悲しみも何も見えない先程と変わらない虚空の表情。

それを見てると自然と言葉が詰まった。


「………俺はそんな事しねぇよ」

「…………じゃあ……絞めるの?」

「するわけないだろ」

「…………焼くの?」

「やるわけないだろ!!」

「…………じゃあ……」


そう言うと少女はこちらへ向いて手を広げる。

何を表現しているのかわからない。

まるで誘っているようだが………?


「…………きて……」


この言葉がすぐには理解できなかった。

でも、ほんの数秒立って意味がわかった。

そして、考えていくうちにその本質が分かり始めた。

恐らくこれは防衛手段なんだ。

殴られる事から刺される事から絞められる事から焼かれる事から

自らを守るべくの行動なんだ。

さっきからの行動も、この要求も自らを守るためなんだろう。

詰まるどころか言葉を失う俺に彼女は自ら抱き着いてくる。

そして、そのまま手は俺の下腹部へと進んでいく。

ゾクゾクと寒気のようなものが走り、異常な恐怖感に襲われるが

耐えて、少女の手を掴んで止める。


「そんな事、するな」

「……………なんで?」

「したら、ブツぞ」


片手を上げて牽制し、じっと少女を見つめる。

少女も表情は一切変わることなく、見つめる。


「…………どうして?」

「嫌だから、したくないからするな」

「……………なん…」

「いいな!!」

「………………殴らない?」

「しないなら、絶対に殴らない」

「………………刺さない?」

「しない」

「………………絞めない?」

「絶対にしない」


そう言って、少女と見つめ合う。

少しでも伝わってくれればいいのだが……。

何も読み取れない、感じない虚空の表情で少女は見つめてくる。

短いのか長いのかわからない時間見つめ続けて……


「…………変わった人…」

「変わってはねーよ」


軽くため息のように息を吐く。

少しでも伝わればいいんだが……どうだろうか。


「いいか、俺の前ではそう言う事するなよ」

「………………他が殴ってきたら?」

「助けてやるよ。刺そうとしようが絞めようとしようが同じだ。

だから、そんな事するな」

「………………不思議な人」

「不思議じゃねーよ。とにかく、そういう事するぐらいなら寝てろ」


そう言って少女を寝かせて布団をかける。

少女はずっとこちらを見てくる。

これじゃあ寝る事は出来ても眠る事は出来ない。


「目を閉じないと眠れないぞ」

「…………眠ってたら…殴らない」

「殴らねーよ。別のやつ殴りに来ないようにそばにいてやるから

そんな事考えずに眠れ」

「……………眠ったところ……でするの?」

「するか!!ったく、いいから寝ろ」


しばらくはこっちを見続けていたが、堪忍したのかはたまた

睡魔が来たのかわからないが少女はゆっくりと目を閉じていく。

それから、少しすると寝息を立て始めた。眠ったみたいだな。

こう見ると年相応の女の子って感じだ。

手を頭の方へ移動させて軽く撫でる。

それに反応したのか僅かばかり反応をしたように見えた。

俺には安心した顔に見えた。


「可愛いのですね」

「お前もそう思うか?」

「思うのですよ」

「じゃあ、可愛らしい顔が目覚めないうちに出ようか」

「わかったのです。静かに起きないように出るのです」


二人して音をたてずに静かに病室を後にする。

胸糞悪い事が知れたが、知った以上はこれ以上胸糞悪い事が

あの子に起きてほしくはない。

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