本拠地探し
街から離れた一つの畑。
バンデが言うにはこの付近で出現したらしい。
それにしても、あの老夫婦に久しく会ってねーな。
また会って、俺がやってないとはいえ謝りたい。
「あいつらは基本的に洞穴などを根倉にして生活してる。今はいても
せいぜい偵察ぐらいだろう」
「そうね、周りに気を付けながら洞穴を探しましょう」
周りに気を張り巡らしつつ、巣らしき場所を探す。
何か後でもあればいいんだが……。
「あ、足跡があります。お、大きさからすると恐らくゴブリンかと」
「この大きさは恐らくゴブリンだ。ほとんど劣化していないところからすると
比較的最近までここにいたな。足跡が向かって行く先はこっちだ」
バンデが指を刺した方向は畑から少し離れた林を指さしていた。
林の中へと入っていくと、血の臭いがした。
「待て……血の臭いがする」
「本当ね、嫌なものじゃあないと良いけど……」
「そ、そんな事言わないでくださいよ」
これが人の惨殺死体じゃなきゃいいんだが、可能性が0出ない以上は否定はできない。
最悪の事態の事を考えて、血の臭いを頼りに発生源を探す。
もしかしたら、こちらの存在に気づいて近くに潜伏している可能性はある。
待ち伏せぐらい、子供でも思いつくからな。俺は飛び掛かれようと対処は出来るが
後ろ2人、特にシェシュルは対処できないだろうから、慎重に行かないとな。
茂み越しに虫が飛び交っているのが見えた。あそこか……。
「俺が見てくるから、バンデ、もしもの時は2人を頼んだぞ」
「あぁ…。お前だから油断はしていないだろうが、慎重にな」
言われなくとも……そう思いながら、ゆっくり近づいていく。
周囲から気配は一切感じないし、俺や後ろの三人以外の呼吸音も特に感じない。
それ以外に聞こえるのは飛び交う虫の羽音と風で僅かになびく枝の音のみ。
ゆっくり近づき覗き込んで見ると、そこにはぐちゃぐちゃになった肉塊が転がっていた。
周りの木には何かを振り回したのか、傷がついている。傷からするに、爪などじゃあなさそうだ。
肉塊の方は腐乱臭はほぼしないところからこうなってから日にちはそれほど立ってないだろう。
しかし、ここまでぐちゃぐちゃだと人なのかはたまた別の生物なのか特定が出来ない。
俺はそういうスキルは持ってない以上は持ってそうな奴に任せた方がいいな。
「バンデ、なんの肉塊かわからねーものが転がってる。お前、調べられるか」
「調べられる事は出来るが……仕方ねぇ、やるか」
3人はこちらへ向かい、バンデが肉塊やその周辺を調べ始める。
シェシュルはそちらへ目を向けていないところを見ると、刺激が強すぎたようだ。
「大丈夫か」
「は、はい、大丈夫です。で、でもいつ見ても慣れませんね。こ、こういうものは」
「慣れなくて正解なものだ。無理に慣れなくていいぞ」
普通は見るような物じゃあない、見慣れてるほうが問題だ。
「アシェルは大丈夫なのか?」
「寒気がする程度よ、問題ないわ」
「坊主、これを見てどう思う?」
バンデがそう言って指を刺したもの、それは肉に埋もれていた鞄のようなものだった。
野生の動物がこういうものをつけているわけがない。って事は……。
「恐らく旅人か何かだろう。街の人間ならすでに騎士隊の連中が動いてるはずだからな」
「だな、周りの傷からして武器か何かで抵抗したのかはたまた武器を持った何かに殺されたか」
「こ、これはゴブリンの手によるってわけですか?」
「可能性としては大きくなったってとこね。盗賊がやったって可能性も否めないけど」
「残っている骨の太さからして大人なんだが、それにしては肉の量が少なすぎる。
やせ型だったとしても言い訳が出来ん程にな、で、ゴブリンは人の肉も食う。
その事からして、恐らくゴブリンだろう」
嫌な予想が当たっちまった。犠牲者がいる以上さっさと討伐するべきだな。
しかし、証拠はあったが居場所がつかめない。
さて、どうしたものか……。
「あっちみたいよ」
アシェルが肉塊の向かい側を指さした。
「何を根拠に言ったんだ、アシェル」
「そっちの茂みをよく見て、葉に少しだけだけど血が付いてるわ。
これはこちら側から入って行かないと付かない付き方よ」
「なら、そっちへ向かうか」
待ち伏せの可能性も想定し、慎重に茂みへ入っていくと茂みに隠れていた血が点々と地面に落ちていた。
どうやら、当たりのようだな。
それを頼りに進んでいくと、木が開けたところに洞穴があった。結構デカいな…。
そして、隣には様々な生物の頭骨で作られた置物が建てられていた。
その中には明らかに人骨らしきものも含まれている。
「堂々とこんなものを置いてるとは、相当に自信があるみてーだな」
「そうね……。これはそこそこ群れの規模も凄そう。より、警戒した方が良さそうね」
バンデとアシェルがその建ててある物を見ている。
確かにそっちへ目が行きがちだが……足元の石ころを拾い、茂みの方へ投げ込む。
「ゲギャッッ!!」
何かがそれに当たったのか苦痛の声を上げた。
「「ッ!?」」
二人はその声にすぐさま振り向く。
そして、その茂みから子供ほどの大きさの小鬼…ゴブリンが数体出てきた。
「ゴブリン…待ち伏せていたか。しかし、良く気付いたな」
「さっき、お前らがそれに注目してる時にな。不可解な笑いが漏れたかのような声がしたんでな。
それがなきゃ気づかんかった。見事なまでの潜伏能力だが…罠にハメた気になって油断したな」
目を引くためにワザとあれを立ててあるとはな…中々頭が回るじゃあないか。
最後に出てきたゴブリンが持っているボーリングの球ほどの大きさの物をぶん投げてる。
それの正体に気づき、受け止める。そして、それを合図にゴブリン達が飛び掛かってくる。
受け止めたため、両手が塞がったが、足はフリーだ。
直蹴りを先頭のゴブリンの頭にぶち込む。頭はザクロのようにはじけ飛び、頭を失った体は
崩れるように倒れ、痙攣を少しした後に動かなくなる。
「「「!?」」」
それを見て、動きが止まるゴブリン。止まっている隙にゆっくりと受け止めた…血みどろの人の頭を置く。
「生存のために食ったって訳じゃなく弄んだか……。なら、死ね。潔くな」
固まっているゴブリンの頭に回し蹴りを入れると頭は吹っ飛び、木に当たるとザクロのように飛び散った。
それを見て、ようやく動き出したゴブリン達は一斉に逃げ出そうとした。
が、逃がすわけもない。すぐに追いつき、かかと落としを喰らわす。
ゴブリンの肉体は潰れたトマトのように当たり飛び散る。
次々と仲間が肉塊に変わったのを見て、腰を抜かしたのか尻もちをつき、
「ゲギャ…ギャ」
こちらへ命乞いをするゴブリン。それを見て拳の構えるをやめる。
「ゲギャァァーーーーー!!」
それを見るや、すぐさま飛び掛かってくるゴブリン。だと思ったわ。
腕を手刀の形にして、縦に一刀両断する。左右それぞれ、その勢いのまま別れて飛んでいき、
べちゃという音と共に地面に落ちる。
「………すげーな…」
バンデがようやく絞り出したかのような声で言った。
2人はまだ絶句してるようだ。
「流石に情けぐらいかけてやろうと思ったが、こんなもん投げてきた以上は話は別だ」
そう言って、地面に置いた頭に目を向ける。
「可哀想に…弔ってやりたいところだが……後にした方が良いな」
「あぁ、これ以上被害者が出る前に一掃するべきだ」
久しぶりに沸点振り切った。やるなら楽に殺してやろうと思ったが、これなら情けはいらないな。




