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プロローグ.4


 グオオオォォォォォォ!!!!


 ゴーレムが咆哮を上げながら迫ってくる。

 たかだか岩の怪物ごとき、俺の拳をもってしてなら容易に砕いて撃破できる。

 だが、それはあいつの体が俺が想像する硬度前提の話だ。

 もし、出来なければ抱えている二人も揃って潰れたトマトのようになるだろう。

 その可能性が考えられる限り、今は逃げの一手を選ぶのみだ。


「おい、応急治療だけでもやれないのか?」

「や、やってます!! ア、アシェルさんお願いですから起きてください!!」

「……う……ガハッ!? ゲホッ………」

「血を吐いてるけど大丈夫なのか!?」

[溜まっていた血を吐いただけです、問題はありませんよ]

「そうか、なら良いん―――ッ!!」


 地面の底から何かが突き進んできている、そんな感じがした。

 このままだとそれに捕まる! そう感じたためにすぐにそれから逃げるべく

跳び上がる。それとほぼ同時に地面から巨大な岩の杭のようなものが飛び出てきた。

 岩って事は……すぐに後ろを振り返るとゴーレムが腕を地面にめり込ませていた。

 ゴーレムって岩の体に任せたごり押ししか出来ない野郎だと思っていたが

こいつは思ってた以上に器用なようだ。これはこのままじゃいつか捕まりかねん。


「おい!! お前、こいつ担いで移動できるか?」

「えッ!? ぼ、僕には無理です」


 だよな……もしも、に賭けた俺が馬鹿だったか。


「で、ですが……少し時間を貰えればこの場から離脱する事は出来ます」

「……それは本当か?」

「え?」

「それは本当かと聞いているんだ、やれるのか?」

「は、はい!! や、やれます。け、けど、そうな―――」


 後ろから岩や氷を砕くような音が聞こえたので振り向くと

ゴーレムが体の一部を引きちぎってこっちへとぶん投げてくる。

 それを見てすぐに横へと跳んで躱す。

 空を切った岩は木を吹っ飛んでいき、木をへし折っていった。

 こいつ、こんな事まで出来るのかよ……ッ!


「躊躇してる場合じゃねえな、俺はどうすればいい?」

「は、はい……!! に、20稼いでください。お、お願いします」

「20だな、了解。少々速度上げるから我慢しろよ」


 二人への負担を無視して速度を一気に上げて、ゴーレムとの距離を放す。

 この隙に二人を隠す場所を見つけられれば……


「アンジュ、二人を隠せるような何か近くにないか?」

[それなら、1時の方向に人二人隠せる程度の巨大な木があります。見えますか?]

「ああ、見える。あれだな」


 すぐにその木へと近づいて二人を降ろす。


「俺はあの岩野郎の下に行くから後は頼んだぞ」

「は、はい!! あ、あの、その……」

「気にすんな。今は失敗しない事だけ考えて行動してくれ、な」


 いつまでも一緒にいちゃあ狙われる、子供の頭を軽く数回

ポンポン叩いてからゴーレムへと向かって行く。

 ゴーレムはすでに残り数十mのあたりまで接近していた。

 こいつ、本当に見かけによらず俊敏すぎるだろ……


 グオオオォォォォォォ!!!!


 ゴーレムは俺を見るや拳を振り下ろす。

 即座にその場から跳び退いて躱して、様子を見る。

 避けられた事に怒りを覚えたのか、咆哮を上げながら再度拳を振り下ろして

来るが、何度振り下ろしてこようが当たらなければ意味はない。

 これなら、20稼ぐぐらい朝飯前ってやつだ。


[ケンさん、下から来てます!! 油断しないでください]

「言われなくてもわかってるって」


 さっきと同じように杭のようなものが飛び出してくるのだろう。

 そう高を括っていたが、杭のようなものではなくトラバサミのような

ものが飛び出してきた。


「何ッ!?」


 完全に予想外のものが出てきたため、反応が遅れてしまい片足を挟まれて

動きを封じられてしまった。ゴーレムは動けなくなった俺に対して拳を

振り下ろしてくる。逃げられない以上は、迎撃するまで!!

 体を捻じってその勢いで回し蹴りを繰り出して拳を蹴り砕く。

 なんだ、あっさりいけるじゃん。

 破壊出来るとわかったので片方の足でトラバサミ状の岩を砕いて拘束を解く。


[ケンさん、二人が離脱しました。もう時間稼ぎしなくても大丈夫ですよ]

「了解!!」


 二人の安全を確保できた以上は後はやり返すのみだ。

 すぐにゴーレムの懐へ潜り込んで掌底を叩きこむ。


 ……ォォォォオオオ!!


 ゴーレムは掌底を受けた胴体が陥没し、悲鳴のような咆哮を上げながら

数歩後ずさった後に片足をつく。更に詰め寄ってゴーレムに正拳突きを

叩きこんで吹っ飛ばす。いくつもの木をへし折りながら転がっていくゴーレム。

 予想以上にあっさり倒せたな。このレベルの奴らが敵なら魔術を

使えなくても余裕持って勝てそうだ。


[ケンさん、まだ終わってませんよ。油断しないでください!!]

「なんだと……?」


 アンジュの忠告を受けた瞬間に何かが俺の足を掴んで地面に引きずり込み

下半身が完全に地面に引きずり込まれる。

 抜け出そうにも何かが今にでも俺を地の底へ引きずり込もうと引っ張ってくる。

 が、 俺の方が力は上だ、逆に引きずり出してやる……!!

 勢いをつけて、一気に体ごと掴んでいるものを引きずり出す。

 それは手の形をした岩で、引きずり出されるや否やゴーレムが飛んでいった

方向へと飛んでいった。ロケットパンチみたいな事まで出来るのかよ。

 そして、地響きを響かせながらゴーレムは先程よりも巨大になって

ゆっくりをこちらへ迫って来た。


 グォォォォォォオオオオオ!!!!


 咆哮を上げて大きくなった拳を振り下ろして来るが、楽々と躱す。

 俺に当たらず、空を切った拳はそのまま地面を砕き、亀裂を走らせる。

 でかくなった分威力は格段に強くなってるようだが、質量が変わろうと

岩の塊である事に変わりは無い。今度は石ころレベルの大きさにまで砕いてやる。


 拳を握り締めて、懐へ潜り込んで同じように正拳を放つ前に岩が拳を放つように

飛び出て来る。即座に体を反らして避けるが、その隙に次に飛び出てきた岩が

俺の腹を捕らえ、それに続けと言わんばかりに次々と岩が俺の体を殴打するように

飛び出して来る。一発だけなら、無視出来たががこの数は流石に……!?


 グオオオォォォォォォォ!!!!


 この怯んだ隙にゴーレムの拳が直撃する。

 一気に吹き飛ばされ、木に勢いよく叩きつけられ視界に火花が走る。


[大丈夫ですか、ケンさん!!]

「……ッ! ああ、心配無用だ」


 背中を中心に激痛が走るがまだまだ耐えられる範囲。

 兄弟子の一発に比べたら可愛いもんだ。


 グオオオォォォォォォォ!!!!


 そんな俺を見てゴーレムは咆哮を周囲に轟かせる。

 勝利の雄たけびってやつか……まだついてないってのに余裕だな、てめえ。

 すぐに起き上がり、ゴーレムに向かって突っ込んで行く。

 相手はそんな俺を見て、拳を振り下ろして来るがそんなトロいの隙でしかない。

 避けて再び懐へ潜り込むとさっきと同じように岩が飛び出して来るが

拳を握り締め、岩が飛び出てくるよりも先にこちらが拳を叩きこむ。

 高速で何度も繰り返し、飛び出して来る岩を破壊しながら拳を叩き込み続ける。


 ……ッ!! オオオオォォォォォッッ!!!!


 胴体が砕かれ、削られるためか悲鳴のような咆哮を上げて後ずさるゴーレム。

 それでもラッシュは止めず叩きこみ続け次々と体を砕き、削っていく。

 そして、最後に掌底を叩きこんでヒビが入った胴体を粉々にして吹き飛ばす。

 ゴーレムは胴体が無くなった事で肩から上だけになり地面へ崩れ落ちる。


 ォォォォ……!!!!


 弱り切った声を上げるが手をやめる事はない。

 拳をゴーレムの顔を思われる部位に当てる。

 ほんの一時だけの静寂の後、ゴーレムは粉々に吹き飛ばされる。

 勝負が終わったのを確認した後、大きく息を吐く。


[おぉー……相変わらず凄いですね。その技]

「まぁ、これは半ば魅せ技みたいなもんだけどな。これやるよりも

拳を叩きこんだ方が早く壊せる」

[それでも凄いですよ。私もやってみたいなぁ]

「そう言うのなら教えてやっても良いんだが、それよりも先に

街に行きたいんだが……ここからならどっちに向かえばいい?」


 ゴーレムとの戦闘中に完全に方向を見失った。

 アンジュがいなければ間違いなく彷徨っていただろうな。


[街は……ここから7時の方向です、ケンさんの足ならすぐに着きますよ]

「了解、さっさと行って情報収集するとするか」


 体に痛みが残ってはいるが無視し、負担など気にせずに走り出して街へと向かった。

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