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プロローグ.3


 シュン……と音と共に上空に放り出され、その事を理解したところで

重力によって真下へと落ちていく。


 なんでこんなところを転移場所に選んだんだよ!!

 と文句を言いたくなるが言ったところでこの状況が改善するわけじゃない。

 すぐに落下先を見て状況を確認する。

 木が一面に広がっており、森だというのが確認できた。

 これなら、着地の際に近くにいる人の事を考える必要はないな。


 次に高さを利用して周りを見渡す。

 遠くに平原が広がっており、その近くには地面が茶色くなっている箇所があった。

 あの広さからして、恐らく畑だろう。

 そして、畑があるって事は所有者がいるはず……目的地が決まったな。


 早速、人がいそうな場所を見つけられたのは幸先のいいスタートだな。

 前は人を数日たっても見つけられなかったせいで死にかけたもんなぁ……

 笑えない過去を思い出したところで落下への対処に入る。


 一つ、深呼吸して空中を数回蹴る事で速度を殺して、一旦浮かび上がる。

 その後、再び落下してそのまま木に突っ込む。

 何本もの枝がクッションになっては折れる音が続き

折れそうにない太めの枝に捕まる事で落下速度を殺しきる。


 ふぅ……と安堵の息を吐き、地面に着地し辺りを見渡す。

 気配も感じず、不可解な音も聞こえず、聞こえるのはせいぜい虫や鳥の声のみ。

 ……今のところ、大丈夫なようだ。

 安全を確認して、畑らしきものが広がっていた方向へと足を進める。


 しかし、魔力関係能力が適正無しって事は俺には魔術とか使えないのか?

 空を飛びまわったり、手からビーム撃ったり、瞬間移動したりとか

 やってみたいと思ったあれらが出来ないのか?

 そんな事を思いながら足を進めているとザザ…ザ……! とテレビの砂嵐の

 ような音が頭に流れる。


[あーあー、聞こえます?]


 その音が止むとアンジュの声が聞こえた。

 そういや通信でサポートしてくれるんだったな、忘れてた。


「聞こえてる聞こえてる。そっちに返してくれるの?」

[いえ、それは私がおおめd……んんっ、申し訳ありませんが出来ませんよ]

「……おおめ、なんだよ」

[な、なんでもないですよ、さぁ…世界を救うべく頑張りましょう!!]


「……まぁ、やるからには頑張るけど一つ聞いて良いか?」

[はい、なんでしょうか?]

「魔力関係能力と適正無しってどういうことだ?」

[あー……えっとですね、ちょっと言いにくいんですが……]

「……パッと言ってくれ、パッと」

[ケンさんは魔法や魔術と言ったものをを使えないって事です。

前の世界のように修行しても使う事は不可能です。0にいくらかけても0ですから]


 俺の中の夢が、憧れが音を立てて崩れて消えた。

 なんで、よりにもよって魔術が存在する世界に来て魔術一切使えないんだよ。

 酷い、酷すぎる。なんて嫌がらせだ。


[げ、元気出してください。えっと……ほら、今のケンさんの体なら

魔術と一緒のような事出来るかもしれないじゃないですか]

「……そりゃそうだが……ふぅぅ、そうだよな!! よし!!」


 頬を両手で叩いて気持ちを入れ替える。

 アンジュが言っていた通り、俺のにはこの体があるんだ。

 無いものに嘆いたところで無いものはないのだから。

 足を進めて、目的の場所である畑らしきものがあるところへ向かう。


[あれ、どこに行くべきかわかってるんですか?]

「あぁ、向こうに畑みたいなものが見えたからそこに行こうと思ってな」

[確認しますね……確かにその方向に大きな畑がありますね。

そして、その近くに街もあります]

「街もか……」


 これはついている。

 早速人が集まる場所に行けるのは幸先がいいぞ。


[はい、畑の方がここから大体115km、街は140kmぐらい先にありますね]

「それぐらいなら、走って行った方が良いか?」

[そうですね、ケンさんの足の速さなら暗くなる前には着くと思います]

「よし! じゃあ、走るか」


 別に野宿しても良いんだが、早く着いて損はない。

 すぐさま走り出して、街がある方向へと向かって行く。

 幸い、障害物は木ぐらいしかなくこの程度の障害物なら走る際に一

切の支障はない以上、徐々に速度を上げて行く。


[おぉー……相変わらず速いですねえ]

「このままだと、どれぐらいに着きそうだ?」

[そうですね……明け方ぐらいになりそうです]

「そうか、だったら……ッ!」


 なら、もっと速度を上げた方が良いか。

 更に足を速く動かし、森を抜けたところで大きな地響きと共に何か重い物が

落ちたような音が響いた。聞こえてきた10時の方向を見ると土煙が上がっていた。


 …………あそこか

 足を止めて、土煙が上がっている方向を見ていると再び同じような音と

地響きが起こる。これはたまたま起きたのじゃなくて何かが能動的に起こしているな。


[気になるんですか?]

「まぁ……な」


 何が原因で土煙が上がっているのだろうかが気になる。

 ……時間には余裕あるし、見に行くだけ見に行こうかな?

 興味を持ったがために気持ちが揺れていると人の声が聞こえた。

 ――――それも悲鳴の声が


「アンジュ、土煙が上がってる方向に人はいるか?」

[ちょっと待ってくださいね……はい、二つの反応がありますね。

そのうち、一つの反応が弱くなってはいますが……]


 弱くなっている、そう聞いた瞬間に土煙が上がっている方向へ走り出した。

 ここまで知った以上、知らん顔は出来ない。

 今まで以上の速度で進んでいくと巨大な岩が飛び散り、木々はへし折れていた。

 まるで、巨大な怪物が暴れまわった後み――――


 グオオオォォォォォォッッ!!!!


 まるで巨人のいびきの様な声が轟いた。聞こえた方向へ目を向けると

巨大な岩の塊が転がっており、そのそばに子供が尻もちをついていた。

 さっきの悲鳴はあの子の声か……?


「おい、大丈夫か」

「……ッ!? ぼ、僕はだ、大丈夫ですけど……ア、アシェルさんが……!!」


 子供が震えながら指を向けた先には血を流しながらぐったりとしている人が

転がっていた。……あれ、生きてるのか?


[ッ!! ……ケンさん、すぐにその二人を連れてその場から離れてください]

「何?」


 ……ゴゴゴゴ!!


 アンジュの指示を聞いた直後に音を鳴らしながら、巨大な岩が立ち上がり

こちらへゆっくりと顔を向けた。おいおい…………こいつ、動くのかよ。


[その岩は岩の怪物、ゴーレムです! いくらケンさんでもその二人がいる状態だと

不利です。逃げてください]

「言われなくてもわかってるっての!!」


 ゴーレムは巨大な岩の腕を容赦なく振り下ろしてきた。

 それを見るやすぐに子供を抱えて、倒れている人へと走って躱して

倒れている奴を回収する。


「ア、アシェルさん、しっかりして下さい!!」

「………ガハッ!! ゲホ………」

[ケンさん、その女性の方そのままだと死んじゃいます]

「言われんでもわかってる、街はどっちだ!!」

[そこから5時の方向です、急いで向かってください]

「了解!!」


 それを聞いて言われた方向へと走り出すと 後ろからゴーレムの声が聞こえてくる。

 ああいうやつは総じて足が遅い、すぐに振り切って――そう思っていたが

地響きを響かせながらゴーレムが結構な速度で追って来た。

 マジか……こいつ、その姿で追ってこれるのかよ!?


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