夕飯と語る覚悟
あれからは簡単な報告をし、腹も減ったために飯屋へ向かう。
王子に言えば、また王女様の手作り料理でも食べていくといいよ
とか言って貰えたかもしれないが、タカってるみたいで嫌だ。
金は貰ってるんだ、別にひもじい思いはしないだろう。
[お疲れ様でした、ケンさん。今からお食事ですか?]
「そうだけど、お前は何をしてたんだよ」
[だって、そちらの時間とこちらの時間は昼夜逆転してるんですよ]
「つまり、寝てたんだな」
こっちは危機的状態になりつつあるのにのんきなもんだ。
「そんなんだから昇進できないんだろ」
[こっちが気にしてる事をズバッと言わないでくださいよ]
「気にしてるんなら直す努力をしろよ」
話しているうちに飯屋に着いたので適当な席に座る。
机の上に置いてあったメニュー表に目を通す。………読めねぇ。
普通に言葉が通じていたから、気にも留めなかったけど文字を読む
ことは出来ないのかよ。言語インストールとか言ってたのに……。
[……もしかして読めないんですか?]
「そうだよ…。それにしてもどれが肉料理なんだ?」
[上から4番目から12番目までがそうですよ。見てたらお腹減ってきました。
食べ物取ってくるので、ちょっと席離しますね]
また通信切りやがった……。まぁ、目的の品がわかったので全部注文する。
金はまだまだあるし、腹いっぱい食べよう。
[戻ってきました。欲しい食べ物を注文する事は出来ました?]
「おかげさまでな。お前は何をポリポリ食べてるんだよ」
[柿ピーですよ柿ピー、最近わさび味にはまってるんですよ]
「久しぶりにその名前聞いたな。しばらく食ってないからちょっくら
恋しくなってきた」
思えば駄菓子の部類の食い物はしばらく食ってないな。
カレーとかなら似た様なもの揃えて自分で作ったりしたけど、
駄菓子の作り方とか材料は流石に知らないから作りようがない。
[残念ですけどそちらへ送れないので私が食べている音だけで我慢して
くださいね。なんなら食レポもつけますよ]ポリポリ
「いらねーよ。ったく…自由な奴だな。お前は」
羨ましいぐらいに自由な奴だ。
[それはそれとしてなんですけど]
「なんだよ」
[そちらでどうやら、かなり展開が進んでるようですけど]
「それか、それがどうしたん…」
「注文された焼き鳥と野菜のグリルです~」
「ありがとうございます。で、それがなんだよ」
注文した料理が来たので食べ始める。これは鳥だったのか。
早速肉を口に放り込む。口に入れた肉はアツアツだがジューシー。
鳥の皮もカリッカリに焼かれているので脂っこさも一切感じない。
[うわ~…いいなぁ]
「……で、なんだよ」
[あ、すいません。つい……。で、そちらの方はかなり展開が進んでる
ようですけど大丈夫なんですか?]
「大丈夫かどうかはわからんが、大丈夫にさせるしかないだろ。
…俺に出来る事は敵を倒すとかそんな事ぐらいだけどな」
そんな魔法も魔術も何でもかなえてくれる不思議な道具も俺にはない。
ないのならば、あるもので自分が出来る事で何かをするしかない。
俺には暴力的な方法で解決する以外にないが。
[大丈夫って言うのは前みたいに騙されてないかって話ですよ。
「今回」は大丈夫なんですか]
それを聞いて、手と口が止まる。
思い出したくないけど、忘れてはならないあれ。
見事に掌で踊らされて馬鹿を見たあれ。
浮かれていて、何も考えなかったがばかりに痛い目を見たあれ。
「わからねぇよ。けど、わからないからって止まったままってのはダメだろ。
なら、やれるべき事をするべきだ」
[そうですけど、もし、そうだとしたら精神的には大丈夫なんですか?]
「ショックで動けなくなるかもしれないし、特に何も思う事もないかも知れない。
いざ対面してみないとなんとも言えないが、一つだけ言えることがあるとすれば
その時は責任取るだけだ」
[それでいいんですか?]
「いいさ、間抜けな理由で来たとしても俺はこの世界のために来たんだ。
もしも、そう言う事があったのなら責任取らないといけないのは当然だろ」
[そこまで覚悟が出来ているのなら何も言いませんよ。せめて無理だけはしないで
下さいね。見てるこっちがはらはらするので]
「あぁ、出来る限りはしないようにするよ、ありがとう」
そう言いながら止めた手を口を動かし始める。
先程までうまかったのに、うまく感じない。
気分次第でこうまで変わるもんだとは……。
「注文されたガッツリステーキセットでーす」
「はい、ありがとうございます」
まだあるんだよなぁ。別に腹に入らないわけじゃあないが……。
顔を叩いて気分を変えようとする。おいしく食べなきゃ失礼だもんな。
[おいしそうだなぁ]
「さっきはあえて無視してたが食いながらあんな話題をよく振れたな。
普通は食べるのやめるよな?」
[お腹が鳴るじゃないですか]
「そんな理由かよ!?」




