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プロローグ.2





 ―――場所は変わり―――






「世界の救世達成おめでとうございます、ケンさん」


 純白の翼を生やし、天使を思い起こさせる姿をしている少女が

ニコニコとした笑顔で激闘を繰り広げていた青年に祝福の言葉をかけていた。


「ああ、ありがとな」


 祝福の言葉を受け取った青年は少女の対面に座り、話を続ける。


「いやー、特に最後の戦いとか凄く見ごたえがありました。見てる私も

白熱しすぎて手に持ったビール缶を握りつぶしてしまうほどでしたよ」

「人が血反吐吐いてボロボロになってるってのに、何肴にしてるんだよ」

「あ……じょ、冗談ですよ冗談。あははははは……はは……」


 疑いの目を向ける青年に冷や汗をだらだらと流しながら表情を変わらずとも

顔色が変わっていく少女は別の話題を切り出す。


「そ、それはさておきあの世界に未練とかはないんですか?」

「……ないわけじゃあないが考えた上で判断したまでだ」

「ケンさんが納得しているのならいいんですけどね。それでこれからどうします?

少しでもや―――」

「いや、すぐにでも次に行かせてくれ」

「休みをとらなくても良いんですか?」

「一刻も早く帰りたいからな。幸い体も傷一つないし問題はねえよ」

「そう……ですか。ちょっと待って下さいね」


 彼女が手を叩くとポンッ!! と音と共に宙に本が出現し、それを広げる。

 そこには日本語で色々な世界の事が書かれていた。


「なんで、日本語なんだ?」

「ケンさんに合わせて言語を変更させておきました」

「そりゃありがたいが……」


 本には数々ある世界の名称、世界脅威などのデータが載っており

どの世界に行くかを決めるべくペラペラと本をめくっていく。


「俺が行っていた世界ってこの世界脅威ってどのぐらいなんだ?」

「確か……ケンさんに分かりやすく言うとBですね。十分に高いですよ」

「あれでBって、上の方になるとどんな事になるんだよ」

「Aになると星そのものの危機、Sにもなると銀河の危機と言った具合です。

これを超えてくると宇宙の帝王とかが出てきたりしますね」

「……その宇宙の帝王って尻尾が生えてて変身する奴か?」

「さぁ、それはわからないですね」


 二人で雑談をしながらページをめくっていく。


「こことかどうですか? ケンさんが欲しがっていた魔術の類もあるようですよ」

「あるのはありがたいだがプラスがついてるじゃないか、大丈夫なのか?」

「こんなものページの染みみたいなものですよ、大丈夫でしょう」

「ほんとかよ……」


 他人事のように言う少女に青年は半ば呆れ混じりに一言を呟く。


「ほんとですって。不安だと言うのなら今の肉体と技術を得た状態で送りますよ」

「それは嬉しいんだが、神の使いがそんなので良いのか?」

「良いんですよ、書類を適当に偽造しておけばバレないんですから」

「……そんなんだから出世しないんじゃねえのか」

「そ、そんな事より次に行くのはこの世界にしますか?」

「ああ、すぐに頼む」

「わかりました、ちょーっと待っててくださいね」


 彼女がそう言って立ち上がるとせっせと絨毯の様なものを敷き始める。

 それには大きな魔法陣が描かれており、それはほのかに光を発していた。


「(今から行く世界を救う事が出来れば、生き帰る権利が得られて帰れるって話だ。

意地でもやってやる、やって帰ってみせる……いや、帰らなければならない)」

「終わりました。さぁ、こちらへ来てください」


 青年は立ち上がって少女が用意した転送の場へと足を運んで光を放つ魔法陣の上に立つ。


「随分と表情が硬いですね、ケンさん。もっと笑顔で行きましょうよ」

「笑顔って……これから全く知らないとこに行くんだぞ。硬くもなる」

「それはそうですけど、硬いを通り越してちょっと怖いんですよ。

それじゃあ、向こうの方々が警戒しますよ」


「そ、そんなに怖い顔してたか?」

「してました。こちらの目的を達成するためには向こうの方々との交流は必須です。

ですので、第一印象は良く思われるようにしましょう。

そんな攻撃的で怖い顔なんて即警戒されちゃいますよ」

「それはそうだが、どうしてもこわばるんだ」

「だったら、楽しい事を考えましょう。ケンさんの世界ではフィクションでしかなかった

魔術が実在する世界に行くんですよ。魔術を使ってやってみたかった事とか

想像してみましょうよ。空を飛んだりとか楽しいと思いますよ」

「……それもそうだな。ありがとな、緊張をほぐして貰って」


「いえ、良いんですよ。ケンさんが頑張ってくれるとその分私の評価も上がって

昇級したり臨時ボーナス出たりするんで、私にも利益はあります」

「…………素直に感謝した俺の気持ちを返してくれ」

「ふふっ、いつものケンさんになったみたいなので転送を始めますね」


少女は手元に別の本を召喚し、中の呪文を唱え始める。


「開くは世界へ至る門、繋ぐはそこへ至る橋……」


少女の声とともに魔法陣の光が強くなっていき徐々に広がり始める。


「この者を送りたまえ、かの世界へ至らせたまえ」


その声と同時にどこからもなく声が聞こえてくる。


[転送場所……世界No.099-10XX-XXXX]


[世界脅威……B+]


[転送者補助担当者……アンジュ]


[転送者性別……男性]


[転送場所……人目につかないところ]


[転送者……ケン ミヤモト]


[転送者性別……男性]


[転送者年齢……20]


[転送先言語理解……0。言語インストール開始します]


青年の名前や年齢等と言った情報が淡々と述べられていく。


[転送者身体能力……AAA]


[転送者魔力関係能力……なし]


[転送者魔力関係適正……なし]


「ちょっと待て!! なしィ!?」

「え……?」


 まさかの言葉に二人は驚愕する。

 しかし、無情にも転送の準備はは淡々と進んで行く。

 青年は魔法陣から出ようするが魔法陣から発生している透明の壁のせいで

出る事が出来ない。彼は透明な壁を叩きながら大慌てで声を上げる。


「アンジュ中止だ!! 止めてくれ!!」

「止めてって言われましても。えっとえっとぉ、中止の術のページは確か……」


[特殊能力…可能性があれば、努力は実る]


[言語インストール完了。転送開始します]


「急いでくれ!!」


[転送まで後、3……]


[……2]


[……1]


「あ、ありま[……0]した」


[転送を開始します]


 シュゥゥゥウン! と音と共に少年はその場から消えた。


「あ……」


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