刑罰と食事とこの街と、その4
ラオージュと一旦分かれて目的の畑へと3人で向かうべく来た道を戻る。
「しかし、あいつを倒すかぁ……どうやってやったのよ」
「そ、そうですよね。あ、あの、風の鎧はどうにかしない限りは
彼を倒すなんて出来ませんし……」
「あれは……崖をぶっ壊す事で落として、無理やり解除させたんだよ」
「ぶ、ぶっ壊すって随分と強引な事したのね」
「で、でも、あの人は浮遊魔術が苦手だと聞きましたから有効だと思います」
え……浮遊魔術………?
ちょっと待ってくれ、無い事を前提で作戦組み立てたんだぞ!?
たまたま使えなかったから負けましたとか……実質負けじゃねえか。
[……良かったですね、あの人が浮遊魔術とやらが苦手で]
ほんとだよ、ほんとにほんとにほんとだよ。
今日一の衝撃だ―――
「……はは…あはははははははははは!!何、あいつは浮遊魔術が使えないから
負けたっての?そんな極術師あるぅ?あはははははははははは!!!!」
「わ、笑いすぎですよ、アシェルさん」
…………ッ!?
突然、大きく口を開けて腹を抱えて急に大声で笑うアシェルにビビった。
俺は突然、でかい音を鳴ったりするのに弱いんだ。
「ヒー……はははははは…ほんと、笑える……帰ったらみんなに言おっと…」
「そ、そんな事をしたら後が怖いですよ?」
「冗談冗談、言うわけないじゃない。でも、ほんと…ふふっ……」
「笑いすぎだろ……」
「だって…笑っちゃうじゃない。誰もが憧れ、畏怖する極術師の敗因が
初歩も初歩の魔術が出来なくて負けましたとか…あはははははは!!」
浮遊魔術は初歩も初歩なのか……。
他にも出来て当然の魔術がありそうだし、調べておくか。
「ははは、ヒー……苦しぃ……」
「おいおい、大丈夫か?」
「はは…だ、大丈夫大丈夫……」
おおきく深呼吸して、呼吸を整えるアシェル。
笑いすぎて呼吸出来なくなるやつ、初めて見た。
「ごめんごめん、話遮っちゃって。それであいつが落下から助かるために
風の鎧を解除したところを狙ったってわけ?」
「ああ、それしか手がなかったからな」
「はぁー…なるほどねえ、その手は思いつかなかったわ」
「さ、作戦次第で極術師に勝てるんですね」
「それもあるけど、なんで争う事になったのよ。普通はあんなやばいやつだって
分かった時点で逃げない?」
「いや、やられっぱなしって許せねえだろ」
「「え………?」」
二人して何言ってんだ、こいつ…と言わんばかりの顔で見つめてくる。
え、やられっぱなしとか許せねえもんじゃねえの?
[普通はこうなんですよ、ケンさん。思考がおかしくなってる事を自覚しましょうね]
なんだよ、その言い方は……。
「……要はプライドのためだけにあんたはあいつとやりあったってわけ?」
「まぁ…そうなるな」
「はは……ようやるわね」
アシェルは完全に阿呆を呆れた顔で見るかのような顔で見てくる。
「そうは言ってもお前も何か譲れないもののためなら立ち向かったりするだろ」
「まぁ、プライドはともかくとして譲れないものって事に関しては同意するわ」
「じゃあ、同類だろ」
「いやいやいや、そんな戦闘狂じゃないわよあたし」
アシェルは顔の前で手を左右に振って否定する。
ものが違うだけで本質は同じだってのに………何故だ。
「ア、アシェルさんが譲れないものってなんですか?」
「今にそれを聞くか、こいつめ」
「や、やめてくださいよぉ~」
アシェルがシェシュルの髪をわしゃわしゃとかき乱す。
「はは、まるで姉弟みたいだなお前ら」
「一年も組んでるんだもの。それだけ長い事組んでたら家族の様なもんじゃない?」
「そんなに組んだ事はねえからなぁ。何とも言えねえかな」
「う、うぅ……ケンさんも止めて下さいよぉ…」
なんて話しているうちに商店街を抜けて、壁の方へ向かう。
その間に散髪屋っぽいとこに、墓場か……あれは。
いろんなものを見ながら壁の前に、出入口であろう関所のような場所の前につく。
大体30mぐらいの壁だがなんのためにこんなもの立ててあるんだ?
[今調べてみましたが、この壁にはかなりの数の刻印術が刻まれてますね。
この大きさですし防御関係ですかねえ]
王子の話だといつ攻め込まれても不思議じゃない状態らしいから恐らくそれだな。
アンジュからの報告から考察しながら関所(仮)を通っていく。
門兵がいる事はいるが、ただただこちらを見てるだけで特に止められる事も
なくあっさり外に出れた。面倒が怒らなくてよかったんだがなんか拍子抜けだ。
外に出るとまず最初に目につくのが、ラオージュの竜巻によってえぐり取られた地面だ。
ここからそこそこ離れてるってのに範囲が相当広いってのが一目でわかるレベルで
土が剥き出しになってやがる。
隣では今からの作業を想像して二名がげんなりしている。
「了解したけども……改めてやる量見ると発言を取り消したくなるわね」
「すまねえ……」




