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ムゲン  作者: タマゴ
7/13

動き始めた夢

野田行宏は焦りを感じながらも、何もできない現状に野田らしくなく苛つきを覚えていた。


野田はその時、医師と学者らを集めた講演会なるものに講演者として参加するために福岡に滞在していた。野田の脳医学、特に夢に関する分野に関しては最先端を進んでおり、野田本人が脳医学の権威と吹聴して回ったのは強ち嘘ではなかった。野田は大勢の有識者を前に講演を行い、講演は順調に進み、無事終了した。

携帯電話が鳴ったのは、午前の講演を既に終えホテルに戻った時だった。電話の相手は中村雅──野田にとっては友人の医者の息子であり、親しくしている相手だった。それ故、何の心配も覚えず電話を受け取ったのだが、電話の内容は全く予想していないものであった。

「野田さん、川野奏海という女子を知っていますか?」

雅からは唐突な質問が電話越しに飛んで来た。野田は記憶の中に心当たりを探した後、

「名前は聞き覚えがあるが、具体的にどういう女の子だったかは覚えていないねえ。僕とどういう繋がりがある子か教えてもらえるかい?」

と、質問に質問を返した。

雅が語った内容は次の通りであった。

川野奏海は何らかの脳の病気で野田の病院に通っている事。その川野奏海が2週間前から学校を休み、連絡も取れない状況である事。そして、野田なら何か事情を知っているかと思い、連絡をしたという事。

野田はこの時点ではっきりと心当たりは無かったが、聞き覚えのある名前だったため、念の為に病院に連絡を入れた。

そして脳関係の患者のリストを確認すると、確かに川野奏海という名前がリストに入っており、詳しく調べると、現在入院中という事だった。

ここまではまだ野田にとっては「患者の一人の脳の状態に何らかの異常があったのだろう」と思えば良いものであったが、野田はその担当医の名前を見た瞬間、認識が変わった。

脳の病気で経過観察中で、既にほぼ完治に向かって順調だった患者が突然入院し、そしてその担当医が()であった事。

野田の中でこの一件に対しての認識は完全に変わった。野田は雅、そして雅の兄であり、野田にとっては生徒でもある中村賢悟の2人に連絡を入れ、野田が予定を消化し帰る事のできる2日後、病院に集まるよう指示を出した。


あいつ(、、、)が、こんなに早く動くとは──。

野田は埼玉に帰れない事を嘆きながら、苦々しい気持ちで思っていた。

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