表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、妖狐になっちゃいました 弐  作者: yukke
最終章 永遠無窮 ~いつまでも変わらない妖怪達の存在~
127/131

第玖話

 ソルさんが僕の尻尾から手を離し、白狐さん黒狐さんへと向かって行きます。僕が相手するのは3体、後ろから迫ってくる球体型の妖魔と……。


「なん、なん……なんだあいつらぁあ?」


「分からない……が、倒す」


「そ、そそそ、それが良い」


 左右の目が非対称で、でっぷりと太った体型の妖魔と、妖精みたいな小ささの妖魔です。

 どっちも黒い体色をしていて、鬼のような角が生えています。鬼の身体を基準にして作ったのかな?


「あっつぅぅうう!! あぁぁぁあ!!」


 後ろから迫ってくる妖魔は叫びながら突っ込んでるし、とりあえず落下したままでは戦いにくいから、一旦空中に浮いておきます。

 そしてようやく辺りを確認できたけれど、ここは螺旋階段みたいな場所で、中央に大きな吹き抜けのある空間になっていました。


 その階段のところで、白狐さんと黒狐さんは戦っていたんですね。

 僕達は上から飛び降りるようにしてきたけれど、下が見えないことに少し焦りましたね。この階段、凄く長いです。


「先ずは後ろからですね」


 前を対処していたら、後ろから突撃されそうですからね。先に後ろの妖魔をやっちゃいます。


「御剱。大神斬(だいしんざん)!」


 こういうのはシンプルイズベストなんです。

 御剱をいつもの巾着袋から取り出した僕は、そのまま勢いを付けて横に振り払い、大きな真空の刃を飛び出させて相手を攻撃します。


「ぎゃっ!!」


 よし、思い切り壁の方に吹き飛んで、悲鳴を上げながら下に落下していきます。このまま下まで落ちてくれたら、残り2体になりますね。


「あ、あああいつ、やるやる、やるな……」


 太ってる方の妖魔は上手く喋れないんですか? 声もどもって聞こえにくいですね。


「でも、こ、こここ、これくらいで、お、おお俺達は倒れないぞ」


「へっ? あっ!」


 すると、その太った妖魔がさっき僕が斬りつけた妖魔を見て、丁度その場所に落ちてきた瞬間、両手を大きく変化させ、それを伸ばしてキャッチしました。そして、今度は僕の方を睨みつけます。


 まさか、それを飛ばすんじゃないでしょうね?


「うらぁぁぁあああ!!!!」


「危なっ!!」


 やっぱり投げてきました。思い切り投げました! 球体の方の妖魔は気を失っているのに、遠慮ないですね。

 咄嗟に避けたから直撃しなかったけれど、少し掠めましたよ。凄いスピードです。


「よ、よよ避けた……」


「うん。それでさっきの妖魔は完全にダウンしましたね」


 そう、球体の妖魔は壁にめり込んでしまい、しかも燃えた体が徐々に崩れていき、そのまま粉みたいになって霧散しました。完全に消滅しましたね。まさかトドメをこの妖魔がしてくるなんて……。


「ふん、ど、どどど、どうせ消滅してた。ゆ、ゆゆ有効活用してやっただけ」


「そうですか……」


 その後、僕は階段の方に着地し、残りの2体の妖魔に向き直ります。


 因みにソルさんの方は……。


「待て~! 燃やし尽くしてやる!」


『うわぁぁぁあ!!』


 3体の妖魔を追いかけ回しています。どんな太陽神ですか、あなたは……。

 白狐さん黒狐さんが凄く困った顔をしていますよ。こっちを早く終わらせて、手伝いに行かないといけませんね。


 いえ、それよりも……僕の力、全力だとどれくらいになるのかな? まだ試していなかったです。


「……ふぅ、仕方ないですね」


「ん、ど、どどどどうした? お、おお、俺達におそおそ恐れをなしたか?」


ちゃんと喋って下さい。聞き取りづらい。

 だから僕は、その妖魔の言葉を無視して、妖気や空狐の神通力を最大限まで解放します。


「なっ……!」


「この妖気は……椿か?!」


 毛色は一気に透明に近い白金色に、尻尾なんて光りの加減で輝いて見えるくらいになっていて、自分でもこの綺麗さにびっくりしちゃいました。それを見た白狐さん黒狐さんなんて、毎回呆然としています。

 全部の力を解放しただけでこうなるんて……僕はいったいどんなレベルの妖狐になっちゃったんだろう。ちょっと怖いです。


 だけど皆を、地球にいる僕の大切な人達を守れるなら。この力、惜しまないよ!


「ふっ……!!」


「ぐぉ!」


「うぐっ!!」


 その後、全力を解放した僕は、目の前にいる妖魔をその輝く尻尾で掴み、ソルさんの下へと向かいます。

 因みに速さは光りの速さとほぼ同じですね。この2体の妖魔なんか、僕の姿を捉える事も出来ず、あっという間に捕まっちゃいました。


「な、なななんだ! こ、ここ、この速度は!」


「ぐっ……! 離れん! くそっ!」


「大人しくしていて下さい。君達はもう、終わりですから」


 ジタバタと僕の尻尾で暴れちゃってるけれど、たった1本の尻尾に捕まる程度なんだから、脱出なんて出来ないでしょう。


「1本じゃ不安ですね。3~4本に増やしておこうかな」


 ソルさんが追いかけ回している方の妖魔は、良く見たらどれも筋肉質な妖魔ですね。1本で全部捕まえられるか不安になってきます。念のため、この輝く尻尾を4本にしておきましょう。


「ソルさん! ちょっとその3体、こっちに来させて下さい!」


「えっ? あら、あなた何その姿? へぇ~やるじゃん。それじゃあ任せるわよ! 熱核球フレアボール!」


『ギャァアアアア!!』


「いや、嘘……倒した? って、ちょっとぉ!!」


 残りの3体を僕の尻尾で捉えようと思ったら、ソルさんがもの凄い熱量の炎の球体を作りだして、それで追いかけている妖魔達に攻撃、炎で包んだかと思った瞬間それを操って、こっちに投げ飛ばして来ました。


 それならついでにトドメ刺してくれたら良いのに。


「ソルさん! そこまでやったならトドメを!」


「そうしたかったけれど、厄介なのよね~この硬さ。あなたならなんとか出来るんでしょう? 気絶させといたのよ」


 確かに硬すぎて厄介ですよ。僕の攻撃でもビクともしないしね。だからこそ、この姿になって全力で攻撃してみたかったんです。


「もう……それは助かりますけど、割と本気ですよねこれ~」


 そのままソルさんから受け取った3体の妖魔を、しっかりと残りの3本の尻尾で掴み、僕はこの螺旋階段の中央に向かい、上へと上がります。


「ぐっ……くそ。解けん!」


「おのれぇぇえ!!」


 意識のある妖魔は暴れまくるけれど、僕の今の尻尾からは絶対に逃げられないですよ。


「悪いけれど、僕自身もこの力がどこまでの威力か分からないからさ、実験台になって貰うよ! 白焔帝(はくえんてい)――」


 そして、尻尾で捕まえた妖魔を思い切り上に掲げ、中央の遥か下、見えない程の深い深い螺旋階段の底目がけて、最大限の妖術を放ちます。


「――螺旋尾槍(らせんびそう)!!」


『グギャァァアアアア!!!!』


 白金色の尻尾の炎を槍のように鋭くしたもので、捕まえた5体の妖魔を貫くようにして叩きつけます。

 もちろん浄化の力も含めているから、妖魔だとひとたまりもありません。あっという間に身体がボロボロに崩れていっています。


 このまま床に叩きつけてしまいましょう。


「て~い!!!!」


 そして僕は、暗くなって底が見えない部分に尻尾がさしかかったところで、思い切り力を込めてトドメを刺しにいきます。

 でも、床はまだ遠いかなと思っていたのに、激しい衝突音が聞こえてきて、僕の尻尾にも凄い衝撃が走りました。


「あれ……? もしかして、床は案外近かったのですか?」


 ガラガラと何かが崩れる音が聞こえてきます。

 もしかして床が抜けた?! 嘘でしょう、この城の外は宇宙空間ですよ! このままだと、僕達全員宇宙空間に放り出されちゃいます。


「椿よ! 軽く我等を凌駕しているではないか!」


「5体を纏めて……俺達の存在意義が」


「2人は僕の旦那さんでしょうが! いや、それよりも、床が抜けたかも! 宇宙空間になっていたら、このまま外に吸い出されちゃいます!」


「あ~その心配はなさそう。や~っと見つけたわ~」


「へっ?」


 僕が慌てて2人に事情を説明したけれど、ソルさんがその場にやって来て、崩れた床を確認しにきました。そして何かを見つけたらしく、そう言ってきます。


「な、なんじゃ?!」


「天井が崩れた?!」


「上で何が……!」


 しかもその崩れた床の下から、声が聞こえてきました。この声、僕のお父さんとお母さん?! そしてもう一つの声は……忘れる事なんて出来ない、空亡の声。


 その下は、更に広い球体の中のような空間が広がっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ