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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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91/105

ep.89

 

「どう考えてもモンスター狩る方が効率いいじゃない。」


「料理は趣味だ。」

「継戦能力が低くてな。トータルで考えると、こっちの方が稼げる。」


「いくら継戦能力が低いからって、魔法使いでしょ?」


 MP回復薬で回復しながらなら、この辺の魔物なら戦えるじゃない、と続ける。俺が武器を持っていないこと、生産職でないことから、魔法使いと踏んだんだろう。よかった、昨日のうちに転職できていて。この流れで旅人ですって言わなくて済んだ。でも、遊び人になった弊害がこんなところで。


「いや、遊び人だ。」


 俺が遊び人と言った瞬間、TeAが残念なものを見るような表情に変わる。これは、そういうことなんだろうな。一般プレイヤーでは絶対に就けないレア職業だってのに。こちとら遊び人に星までついていたんだぞ。


「そう。」

「あと1セットちょうだい。」

「ソースはさっきと逆で。」


 残念な生き物を見るような目で、1,000リル寄越してくる。哀れみでもう1セット販売できるなら、まあ悪くないか。尊厳とガチャポイントなら、ガチャポイントだ。それよりも、遊び人の評価が気になるところ。掲示板なんかでは、各職のメリット、デメリットで揃っているだろうから。TeAは掲示板の使い手と見た。何か知っていることはないだろうか。手は動かしたまま、質問してみる。


「遊び人って、不遇職なのか?」


「逆に不遇職じゃないと思ってるの?」

「戦闘で経験値が入らないなんて、意味不明じゃない。」


 おい、言葉が強いぞ。こうやって料理をやったり、タコス売ったりしている間にも経験値は入ってくる。戦闘時にもらえる時のように一気に増えるわけではないが、ドットダメージの如くじわじわと増えている。


「あのね。結局このゲームは戦闘でもらえる経験値が多めに設定されているのよ。」

「いくら戦闘以外でもらえる経験値にボーナスが入るからって、微々たるものだし、遊び人にできて冒険者にできないことなんてないんだから。」

「まともな人間なら、確実に!冒険者を選ぶわね。」


 質問しなきゃよかった。直接的にまともな人間じゃないと評価を下されてしまった。TeAによる遊び人のデメリットマシンガンにノックアウト寸前。最後の力を振り絞り、タコスを提供する。ちょっと味変も兼ねて、猪肉の方で提供してみる。価値がわからんから、店売りの肉と同じ料金。どちらの方が美味しいだろうか。俺が味見した時の感想は、好き好きだろうなといったもの。味自体は猪肉の方が強いが、タコスとして、トータルで食べた感じは、店売りの肉の方がバランスがよかった。赤みと脂身の違いなのかな。


 それでも、遊び人の先駆者がいることは確定したかな。TeAも結構詳しく遊び人の情報を把握していたし、掲示板の住人に遊び人がいるんだろうな。掲示板に張り付いているなら、転職条件は満たせそうだし、妥当か。掲示板にずっといるような奴よりも転職が遅かった俺って一体。


 TeAはまた、顔の前でタコスを持ち凝視している。さっきと変わらんだろうに。もう、習慣となっているんだろうな。パブロフだ。写真撮ってから食べたら美味しいと、学習したんだろう。特別な訓練を受けています、とテロップを入れる必要があるかもしれない。


 今度は食べずに、懐にしまう様子を見せる。インベントリにしまったんだろう。便利だよな。次食うときも、熱々のままだ。


「ありがとう。」

「掲示板に載せてもいいかしら。」


「悪く言わないなら。」

「宣伝してくれ。街に報告はよしてくれ。」


「そ。」


 それだけ言って、彼女は去っていく。あ、連絡先聞いておけばよかった。しかも俺だけ職業開示してしまったし。なんか尊大な物言いになってしまったが、彼女がこの世界での食事系有名インフルエンサーだったらどうしよう。もしかしたら、星で評価されている掲示板のスレもあったりするのだろうか。衛生管理と、店主の対応がなっていないとか書かれようもんなら、明日以降の来客は見込めないだろう。全く否定できないし。石板だし、石皿だしな。


「だが、ポイントはもらえたぞ。」


 計画通り、ポイントは貯まっている。TeAとの一連のやり取りで20連、正確には22連分のガチャポイントが貯まった。この調子なら、110連は硬いな。



「それにしても暇だ。」


 TeAが去ってからというもの、パタリと客足が減ってしまった。まあ、見かけたのはTeAだけなんだが。手持ち無沙汰なので、遊び人に転職してから手に入った【道楽】という称号を確認してみる。


【道楽】

 職業:遊び人だけが得られる称号。戦闘以外の全ての行為においてLUKに小補正がかかる。


 またしても、運。これ、本格的にギャンブラーになれと言われている?戦闘での運はクリティカルとかに関与していそうだが、それ以外の運って何に関係しているんだろうか。時々いいものが作れたりするんだろうか。料理なんて、レシピとかを作って運要素を限りなく減らしてきた分野だろうに。その代わり畑では少し恩恵が受けられるかも。少し甘いのとかが取れれば、それを親にして増やせていけるかもしれないし。一代だけとか、そんな渋いことにはならないだろう。


「雨降らないうちに、作ってしまおうか。」


 さすが、雨季。雲行きが怪しくなってきた。雨が降ってきたら、現状の設備で屋台運営は無理。作り置きという形にはなってしまうが、食いもん雨で濡らすよりマシだろう。今のうちタコスを量産しておいて、インベントリにしまっておこう。この形式だったら、それこそデリバリーも可能だろうし。それから、鍋が空いたらまた新しいのを仕込んでおけば、隙間なく販売できるじゃないか。雨が降る前に、急げ!





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