ep.65
次はないよと言われましても。急に、マダムと呼べと言ってきたと思ったら、次の瞬間氷の矢が飛んできた。もし直撃してたら、10回死んでもお釣りが来そうな威力。かろうじて氷の矢だと分かった理由は、頬の傷に氷が付いているから。そして、室温がガクッと下がったから。おい、蛇も変温動物だろ。あんまり、よくないんじゃないか?
ってか、マダムと呼べってことは、名前がマダムだと判明したってことで良い?称号を隠すスキル、おそらく【隠蔽】は貴女の名前が分かれば、って話だったと思うんだが。自白したのもカウントされるの?まるで急展開。まあ、女店主だから、マダムが妥当ではあるのか?言語が違うから、詳しいニュアンスまでは測りきれないが。
マダム ???
???
【鑑定】してみたら、ご丁寧にマダムと名前が出ている。【看破】を使ってみても情報は変わらない。これ、喫茶店のジョンと同じ匂いがするな。”マダム、でいい”ってやつか。この街、名前伏せるやつ多くない?あまりにも、曰くがつきすぎてないか。
「悪いことするんじゃないよ。」
マダムがそう言うや否や俺の体が薄光する。何事かと思って、手足を見るが外見に変わった様子は見られない。不思議に思っているとアナウンスが。
[マダムにより、スキル【隠蔽】が付与されました。]
[同時に称号【魔女の監視】が付与されます。]
「は?」
何が琴線に触れたのだろうか。【隠蔽】はありがたいが、監視?普通に嫌なんだけど。呪いと言い換えてもいい。人から常に監視されて生きていくなんて、それこそ、死んだ方がマシだ。この世界では死ねないことは一旦棚の上に。それにお前、魔女だったのか。只者ではないとは思っていたが、魔女て。そう言うジョブがあるってことなのか。俺は魔法を使うんだが、魔男を名乗ってもいいの?
しかし、俺にも呪いが。ルー、俺もお前とお揃いだな。軽く考えていたが、こんな気分なのか。王都付近にいるらしい偏屈なやつは、ヒトも診れるのだろうか。早めに解呪してもらおうな。流石に、抗議の一つや二つしてやろうとマダムの方を睨むと、俺が言葉を発する前に、口を開き語り始めた。
「昔、それ使って悪いことしていた奴らがいてね。そのせいで、そのスキルは秘伝になったんだよ。教えたやつが責任とる形でね。」
「だから、悪いことするんじゃないよ。」
いつになく真剣な面持ちで圧をかけてくる。あ、これ、過去に相当悪いことがあったんだろうな。【隠蔽】だけでどうにかなるようなもんでもないと思うんだが。戦闘に直接関係ないし。この世界強いやつ多そうだし。その悪いことしたやつも強かったんだろう。ルーは【隠蔽】を持っていたが、どういうことだろうか。魔物の理は、ヒトとは違うものなのか。
「【隠蔽】には感謝する。」
文句を飲み込み、とりあえずスキルをくれたことの感謝を。監視がセットなら、どちらかを選ばなくてはいけない。葛藤の末、監視を享受することに。だが、これで称号も隠せて、大手を振ってギルドに出入りできる。そろそろ神殿の硬いベッドも恋しくなってきたところだ。風呂にも入れる。その間ルーはどうするんだろう。脱衣所においておくと盗まれたりするイベントでも発生するのかな。鍵付きだから大丈夫か?
「そういえば、ルー、何言いたかったんだ?」
「 」
風呂場でのルーの取り扱いを考えていると、先ほど、何か伝えたそうにしていたことを思い出した。蛇がいるわけでもなかったし。確認してみても今は背中で大人しくしているだけだ。なんだったんだろう。まさか、テイムされたこと自慢したかっただけか?可愛いところあるじゃないか。
「いてっ。」
ルーが背中に噛み付いてくる。ははっ。氷の矢に比べれば児戯のようだ。お前もあの氷の矢くらい強いの使えるようにならないとな。使えるようになると困るのは俺か。ちょっとした軽口を叩いただけで、背中にゼロ距離であのレベルの魔法撃たれたらひとたまりも無い。
「その蛇の好物は?」
思いがけず【隠蔽】も手に入り、薬草の販売も済んだ。辞去する前に、興味本位で蛇の好物を聞いてみる。カニ食えるなら、【隠蔽】のお礼に渡しても良いかなと思った。ルーは今のところ焼いたものなんだが、ここの透明な蛇はどうなんだろう。現実で考えると小動物やら卵やら食っているイメージがある。
「気分でなんでも食うよ。」
そうきましたか。てことは、気分が乗らなければ食べなくても良いということであってる?草原にいる鶏やらネズミやらと違って、魔法生物感はあるし、もしかしたら、食以外のエネルギー補給が可能なのかもしれないな。ルーはMP回復薬かけてるから、それか?ローナ食わせている方が安上がりなんだが。
「では、これをやろう。」
恒例のカニの身をマダムに。出物が少ないと聞いたし、マダムが食えなくても、蛇がなんでも食べられるなら、渡しても問題ないと踏んだ。手持ちで渡せるものがこれくらいしか無いのも事実。
「直接渡してやりな。」
そう言って、マダムはこちらへの関心をなくし、何か手近にあった書物を読み始める。蛇の話をしたから蛇に食わせてと捉えたようだな。まあ、間違ってはないが。でも近づくのルーが怖がるから、最小限にしたいんだよな。
恐る恐る定位置に近づいていくと、なんとなく勘づいているのか、蛇の姿を現し、下をちろちろと出している。あれにもなんか意味があるんだよな。薄ら知っているが、詳しくはわからん。爬虫類を飼う予定はなかったから、詳しく調べたりしてこなかったんだよな。
「ほら、カニだぞ。」
腕を最大限まで伸ばし、足でバランスをとりながら、カニの身を差し出す。俺は焼いて食ったが、美味かったぞ。気分で何でも食うと聞いたが、今はどんな気分だろうか。
バグン
甲羅ごと噛み砕く音が聞こえたと思うと、指先に軽く衝撃が。瞬きする間もなく、手に持っていたカニ身は消えていた。蛇を見ると、嬉しそうに丸呑みしているのがわかる。喜んでくれたらいいのだが、俺の手ごと行かれる可能性もあった?こういうやつの給餌を興味本位でやるもんじゃないな。今度やるなら、鎧で片腕防御してからじゃないと、幾つ腕があっても足らない。もし次があるならb、マダムに渡した方が安全だ。
GAKU
職業:旅人 Lv.9
HP47
MP60
STR11
VIT11
INT13
MID11
AGI14
DEX15
LUK15
スキルポイント(残10P)
所持スキル
【DEX強化】【LUK強化】【MP強化】
【水魔法Lv.3】【土魔法Lv.2】
【料理】【農耕】【工作】
【気配希釈】【精密操作】【魔力操作】【夜目】
【生活魔法】【鑑定】【看破】【破壊】【再生】【隠蔽】
称号
【豊穣神の加護】【欲望の僕】【冒険の始まり】【破壊と再生の使徒】【挑戦者】【踏破者】【友魔の始祖】【魔女の監視】




