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趣味人のVRMMO  作者: et al.
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55/72

ep.53

 

『この世界で初めて、プレイヤーによりダンジョンが攻略されました。』

 [プレイヤー:GAKUには称号【踏破者】とスキルポイントを付与します。]


「このタイミングなのか。」


 結局ボスで間違っていなかったカエルを倒した時点でアナウンスがなかったので、気を抜いていた。他の人がものすごい勢いでダンジョン見つけて、攻略した可能性も捨てきれなかったからな。でも、無事に取得できた。この世界で初めて、自分の欲が出た。いや、【欲望の僕】は抜きにして。さすがに自分でも無茶した気がする。そんなに武闘派じゃなかったのに。称号欲しさに舞い上がってしまったな。これからはまた少しの自制心を持って、生きていかねば。


「でも、頑張ってよかったな。」


 自分のプレイヤースキルの低さは自分が一番理解している。そして、王都までは確実に進まないといけなくなった。称号は非常に強力。先に進むにはどれだけあっても、惜しくない。できれば剣呑じゃないのをお願いしたいが。これからもチャンスがあれば狙っていきたい所存。攻略最前線なら、ボス討伐、エリア開放でどんどん突き進んでいくだろうし、俺にできるのは、自分の欲望の赴くままに行動することだけだ。自制が効かないのが玉に瑕だが、【欲望の僕】もそういう面では心強い。


 十数歩歩くともう、波打ち際だ。おい、カメレオン。お前海見たことあるか?こんなに広いんだぞ。うまい食いもんもいっぱいだ。


「兵太夫に釣竿もらってくればよかった。」


 この波打ち際や、岩場から竿を垂らすのもまた一興。今度あったら、この場所を教えてやろう。海を探していたし。見返りに竿を要求すればWin-Winだ。楽しみだな、釣り。釣りというより、それによって得られる、釣果が楽しみだ。


 歩いて回るのに数刻もかからない。漂流物から面白い考察でもとか考えていたが、綺麗な砂浜。ここから先に進むには船か泳ぐスキルが必要だな。少なくとも見える範囲に対岸はない。岩肌伝いに進むことができれば何かあるかもしないが、こちらは壁を登るのか飛ぶスキルが必要そう。誰にも教えなかったら、プライベートビーチにでもできそうなくらい。


「帰るか。」


 洞窟後なので、開放感に任せてしばしゆっくりしすぎた。これからまた洞窟を通らないといけないのが憂鬱だが、現状ここにいても何もすることがない。食い扶持のために、また畑を耕さなければ。


 帰り道はスムーズ。蟹にもコウモリにも合わず、外に出れる。ボスを倒したから、出なくなっちゃったのかな?やっぱり、蟹狩りしてからにすればよかった。


「腹へった。」


 とりあえず、城壁付近まで帰ってきて、一息つく。今日は起きてから、何も口にしていないことを思い出す。今日の行動量は俺の中でも一二を争うくらい多かったからな。それにコーヒーバフもない。畑が再興するまでは少し節約せねばならんのにも気をつける。お利口に留守番できたカメレオンにも、回復薬を奢ってやらなければ。ただ、薬草の買取なしに魔道具店にいくのも、気が引ける。蛇もいるし。


「  」


「ああ、わかったよ。」


 とりあえず、回復薬を優先することが決定した。蜘蛛戦で俺が使ってしまったからな。その後の予定は畑耕して、またレベル上げかな。【鑑定】【看破】の熟練度上げを目指していたが、いまいち成果が得られていない。こうなったらと視点を変えてみて、俺自身のレベルを上げれば、何かしら世界が変わるんじゃないかと思った次第。トノサマフロッグのドロップ品とか、増えた称号の確認とかもやっておかねば。どうも、この辺を後回しにしてしまう癖がある。


 ゴツゴツした岩場地帯を抜け、東門の方へ。そんなに日は経っていないのだが、ずいぶん懐かしく感じてしまう。衛兵さんに挨拶をし、また訝しんでみられるため、足早に坂道を上がっていく。この坂道も見慣れたもんだ。園芸店を探したい気持ちもあるが、まだなくても問題ない。道具にはこだわりたいし。


「また持ってきたのかい。」


「いや、今日はない。畑を荒らされてしまって。」


 魔道具屋に入ると、相変わらず仏頂面のババアがいつもの場所に鎮座している。出会い頭に【鑑定】【看破】を試みるも不発。それで気をよくしたからか、向こうから、納品を問うてくる。うーん。やっぱりまだダメだったか。何か革新的なことがないと、いけないんだろうな。今一番の近道はレベルアップからの転職だとは考えているんだが、それがダメだった時の二の矢も用意しておかねば。もう、数日冒険者ギルドには立ち寄っていない。そろそろほとぼりも覚めただろ。でも、称号見られて、絡まれるのも嫌だから、もう少しだけおとなしくしておかねば。


「荒らされた?」

「ああ、そろそろアレが出てくる頃かい。」


「アレ、とは?」


「そのうちわかるさ。」


 こいつ、そんなことしか言わねえじゃないか。だが、この季節に、この街の近郊で暴れるXがいると。目的が薬草なのか、目的の道中に俺の畑があったのかは今だ不明だが。今の気候からして、春、初夏と仮定すると、やはり冬眠明けか、温暖な気候に触発された4速歩行の生物説は硬いと思う。一度群生地の方に顔を出してみてもいいかもしれんな。群生地も荒らされていたら、薬草狂い確定だ。そうでなければ、事故だったと結論づけていい。


「じゃあ、何しにきたんだ。」


 色々考えていると、ババアが次の行動を促してくる。こいつ、客に向かってずいぶんな口を利く。元はと言えば、お前が情報を出し渋るから考えざるを得ないんじゃないか。


「回復薬を。」


 そう言って、ババアの目の前に回復薬2種を置き、金を渡す。こないだ金を置いて行ったのは伝わっただろうか。ちゃんと在庫管理とかしているのかな。まあ、万引きでもみかけようもんなら、蛇に丸呑みされそうな気配も感じるのだが。そのことを糾弾されなかったあたり、理解してくれているのだろう。


 金を受け取ったので、遠慮なく回復薬を。街の外に出たら、使ってやるからな。それまで、透明になっておけよ。すっかり蛇にビビってしまったカメレオンにそう伝え、魔道具店を辞去する。こないだ来た時に結構金ができたので浮かれていたが、無くなるのは早いな。





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