ep.15
参りました。このシスター押しが強かった。神の、というより、彼女の信奉者からの言外の圧というのをひしひしと感じた。誰だ、彼女のファンはそれほど多くない、近寄りがたい雰囲気があるから、とか言ってたやつ。出てこい。俺か。狂信者がうじゃうじゃいるじゃねえか。
「少なくて申し訳ない。これを。」
しかもあくまでこちらから自主的に寄進したことにしたいらしい。なけなしの50リルを渡す。これで、また無一文だ。しかも今回は本気のやつ。ウサギの皮も肉もない。だが、悪くない。元々少なかったんだ。これで逃げ道が消えた。金策への本気度も増す。結局こちらの世界に留まるには金がいることがわかった。しっかり、稼いでこよう。冒険者登録と宿代で550リルだ。最低限な。でも、今度からは彼女がいない隙を狙って出入りしよう。
「これはこれは、ありがとうございます。あなたに神のご加護が在らんことを。」
「私はタリア。またお会いしましょう。」
本当に少額だったが、彼女は噯にも出さない。プロだな。尊敬してしまった。しかし、名前はタリアか。ギルドのサリアちゃんとなんとなく似ているような。名も顔も。それを確認しようとしたが、俺との会話が終わったとみるや、彼女にお布施をし始める人々の群れに立ち向かうことはできなかった。
外は明るかった、いい天気だな。冒険日和だ。とりあえず、何が金になるのかを把握しに、冒険者ギルドへ顔をだす。昨日確認するのを忘れた。冒険者ギルドは昨日より賑わっている。休日昼間ということもあってだろう。中に入ると相変わらずサリアちゃんは大人気。今日は絡まれないように隅っこを通る。兵太夫もライト君も見当たらなかった。それぞれやりたいことやっているのだろう。負けてられないな。
受けられはしないが、ギルドに掲載されているクエストを確認する。需要があるってことだからな。魔物討伐や採取依頼、街中での手伝いまでさまざま。危険を伴うからだろうか、基本的には討伐のものが良い値が付けられている。まあ、最初の街だし大して差はない。あんまり難しそうなのがないのをみると、冒険者としてのランクが上がっていくと、難易度の高い依頼が受けられるようになっていくのだろう。その辺はうまくやっているんだろうな、冒険者危険がつきものだし、人材保護は大事だ。実力以上のことをさせてみすみす駒を失うわけにはいかないだろう。
クエストを眺めていると、やたら年季の入ったものを見つける。街中での依頼にしては割りのいい仕事であると思うのだが。内容は雑用とだけ。拘束もどのくらいかわからないから敬遠されているのだろうか。冒険者登録できたら受けてみようかな。長いこと拘束されるのはごめんだが、良い依頼料ってのは魅力的。話だけ聞いて合わなかったらキャンセルすればいい。
それにこの街には昨日使った門と反対の門もあることを知れた。昨日のは西門。草原が広がっており、奥には森が。出てくるのはウサギとか。ライト君の言っていたグレイウルフもクエスト対象だった。対する東門からは荒野が広がっているそうだ。出てくる魔物も少しレベルが高いそう。なんと、ゴブリンとか出てくるらしい。ファンタジー生物だ。俺にはまだ早いが、ロマンはありそうだな。
色々確認し外に出る。まずは、西門からだな。昨日のリベンジを果たそう。大きい門は開いていた。夜になると閉まるんだな。立っている衛兵は昨日とは違うよう。こちらはシフト制なんだな。いい雇用主じゃないか。軽く挨拶をして門を抜ける。昨日は暗くてわからなかったが、広大な草原。地面の起伏も緩やかで、先が見渡せる。プレイヤーも結構確認できるが、これだけ広いので密集していない。ウサギもそこらで草食ってるし、鶏のような魔物や、でかいネズミみたいなのも見える。魔物の取り合いにもなっていなかった。よかった、これで今日の食い扶持に困ることはなさそうだ。門から少し離れたところでウサギを探す。
「ちょっと緊張するな。」
まだそんなに時間は経ってないとはいえ、チュートリアル以来の戦闘だ。うまいこと行けばいいのだが。ドキドキしながら。ウサギを探す。戦闘条件は、周りにプレイヤーがいないこと、ウサギ一羽でいること、だろうか。あと環境音も気にしておかないとな。昼だから大丈夫だろうが。
条件に合うやつを見つけた。こちらに気づかず、呑気に草を食っている。周りに人も仲間も居なそうだ。お前もぼっちなのか、奇遇だな、俺もだ。だから仲良くしようじゃないか。チュートリアルの時は魔法で倒せた。気づかれないうちに魔法を当てて、もし、一撃で落ちなかったとしても、次を当てればいい。十分な距離もあるし。
「ウォーターボール!」
唯一覚えている水魔法を使用する。チュートリアル以来だが、無事当たった。流石に一撃では落ちなかったか、まあいい、相当なダメージが入っただろう。水の球が当たった時にダメージエフェクトとバックスタブという表記も出た。どうやらうまく奇襲できたらしいな。次を当てれば俺の勝ちだ。背後からの一撃に一瞬怯んだように見えたウサギも、身の危険を感じたのか身を屈めながら振り返る。はは、今頃気づいたってもう遅い。チェックメイトだ。ウォーターボールはCT入っている。ならば土魔法だ。
「マッドボ 」
「なんか、つの生えてんなあ。」
角ウサギ Lv.8
暴れウサギの変異体。暴れウサギよりも凶暴で動きも早い。




