第97話 補正係数の秘密
議会を出たあと。
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NEAの会議室は
重い沈黙に包まれていた。
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誰も
すぐには口を開かない。
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レオンの条件。
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**一年以内に成果を出す。**
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それが
制度改定の条件になった。
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「……厳しいですね」
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数値算出局の
担当官が言う。
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「挑戦枠で」
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「一年成果」
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「普通は
無理です」
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その通りだった。
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研究。
技術開発。
新産業。
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普通は
三年。
五年。
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それでも
成功するとは限らない。
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「政治ですね」
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エレナが
静かに言う。
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「議会は
成功例を
欲しがる」
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「早く」
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「分かりやすく」
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局長が
ゆっくり言う。
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「つまり」
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「一年以内に
成果が出る挑戦」
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「それを
選ぶ必要がある」
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全員の視線が
リーネに向く。
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制度を
設計したのは
彼女だ。
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リーネは
少しだけ
考える。
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そして。
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「三種類あります」
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静かに言う。
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スクリーンが
点灯する。
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挑戦案件分類。
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短期型。
中期型。
長期型。
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「一年成果を
出すなら」
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「短期型です」
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官僚たちが
資料を見る。
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「具体的には?」
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「既存技術の
組み合わせ」
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「制度改革」
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「資源配分の最適化」
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つまり。
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完全な
新発明ではない。
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**制度型挑戦。**
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「研究ではなく」
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「仕組みの挑戦」
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局長が
うなずく。
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「合理的です」
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だが。
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数値算出局の
若い官僚が言う。
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「しかし」
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「それでは」
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「本当の挑戦では
ないのでは?」
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その言葉に
空気が少し変わる。
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リーネは
静かに答える。
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「いいえ」
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「これは」
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「制度を通すための
挑戦です」
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沈黙。
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NEAの官僚たちは
理解した。
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これは
政治戦だ。
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理想だけでは
制度は通らない。
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「まず」
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「成功例を
作る」
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「それから」
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「制度を広げる」
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エレナが
小さく笑う。
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「政治的ですね」
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「制度設計です」
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リーネは
淡々と言う。
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局長が
資料を閉じる。
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「では」
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「挑戦案件を
選びましょう」
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スクリーンに
候補一覧。
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都市物流改革。
教育制度改定。
エネルギー最適化。
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十数件の
候補。
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その中で。
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リーネの視線が
一つの案件で止まる。
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**地方都市産業再構築計画。**
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衰退都市。
人口減少。
産業空洞化。
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「……これですね」
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リーネが言う。
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局長が
眉を上げる。
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「難易度が
高すぎます」
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「だからです」
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リーネは
静かに言う。
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「成功すれば」
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「国家政策になる」
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沈黙。
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エレナが
資料を読む。
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「都市名は」
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ページをめくる。
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「――ヴァルト市」
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その名前が
会議室に響く。
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リーネは
小さくうなずいた。
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「ここで」
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「一年で」
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「成果を出します」
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それは。
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制度のための
最初の挑戦だった。
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