第85話 選ばれることの違和感
眠れなかった。
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嬉しいはずだった。
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推薦。
候補。
道が開く。
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かつての自分なら、
迷わなかった。
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速く、
高く、
証明したかった。
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「……でも」
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天井を見つめながら、
思う。
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あの頃は、
選ばれたかった。
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今は。
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「……選ばれ方が
気になる」
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推薦。
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それは、
評価の延長線。
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誰かが見て、
誰かが決め、
誰かが押し上げる。
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悪いことではない。
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だが。
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「……それで
いい?」
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胸の奥に、
小さな問い。
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止めることを
覚えた。
条件を
設計できるようになった。
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なら。
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自分の道も、
設計できるのでは
ないか。
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朝。
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会議室。
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「返事は?」
上司が
静かに問う。
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リーネは、
深く息を吸う。
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「……ありがとうございます」
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まず、
そう言う。
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「推薦は、
嬉しいです」
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嘘はない。
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「でも」
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一瞬の静寂。
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「今回は、
推薦という形では
受けません」
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空気が、
わずかに
止まる。
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「理由は?」
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「自分で
選びたいからです」
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上司の目が、
細くなる。
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「何を?」
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「上がるタイミングも」
「進む方向も」
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声は、
揺れていない。
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「今は、
まだ
ここでいい」
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「逃げではないか?」
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静かな問い。
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「違います」
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はっきりと。
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「急がないだけです」
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沈黙。
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長い時間のあと。
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「……そうか」
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上司は
うなずいた。
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「分かった」
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それ以上、
言わない。
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部屋を出る。
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胸の奥が、
軽い。
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昇進を拒否した。
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だが。
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後悔は、
ない。
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カイルが
廊下で待っている。
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「どうでした?」
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「断った」
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「……え?」
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「今は、
選ばれない」
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カイルは
驚いた顔をする。
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「もったいないと
思いませんか?」
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少し考えて。
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「思うよ」
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「じゃあ、
なぜ」
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「もったいないと
思えるうちは、
まだ早い」
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カイルは
黙る。
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「欲はある」
「上に行きたい気持ちも」
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「でも」
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「欲に
押されて
決めたくない」
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静かな答え。
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カイルの目が、
少しずつ
理解に変わる。
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リーネ・アルヴェインは
静かに思う。
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**選ばれる強さは、
もう知っている。**
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**次は、
選ぶ強さだ。**
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