第86話 渡せる強さ
「……どうすればいいですか」
小さな声だった。
---
後輩のミアは、
資料を握りしめている。
---
「任されたんです」
「でも、
怖くて」
---
リーネは
椅子に座り、
静かに聞く。
---
「怖いのは、
何が?」
---
「間違えること」
「止めたら、
期待を裏切ること」
---
かつての自分の
言葉だった。
---
「止めてもいいよ」
---
ミアは
顔を上げる。
---
「え?」
---
「でも」
---
「止める理由は、
自分で決めて」
---
沈黙。
---
「私が
決めるんですか」
---
「うん」
---
「期待に応えるのも」
「止めるのも」
---
「選ぶのは、
自分」
---
ミアは
ゆっくりと
息を吐く。
---
「……じゃあ」
---
「一度、
整理します」
---
速くはない。
派手でもない。
---
だが。
---
自分で
選んだ声だった。
---
夕方。
---
「変わりましたね」
カイルが
言う。
---
「何が?」
---
「任される人、
じゃなくて」
---
「任せられる人に
なってる」
---
リーネは
少しだけ
笑う。
---
「そう?」
---
「はい」
---
少し考えてから、
言う。
---
「強くなったって
ことかな」
---
「どっちが?」
---
「両方」
---
速さも。
余白も。
---
夜。
---
机に向かう。
---
地位は
変わらない。
肩書きも
同じ。
---
だが。
---
景色は
少しだけ
違って見える。
---
焦りは
ない。
証明も
いらない。
---
選ぶことを
覚えた。
止めることを
覚えた。
渡すことを
覚えた。
---
リーネ・アルヴェインは
静かに思う。
---
**強さとは、
自分の選択を
他人に渡せることだ。**
---
そして。
---
選ぶことは、
まだ
終わっていない。
---
明日もまた、
選ぶ。
急がずに。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




