第72話 失望ではない、という優しさ
「……誤解しないでほしい」
上司は、
穏やかな声で
そう言った。
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「失望している
わけじゃない」
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リーネは、
黙って
うなずく。
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呼び出された
わけではない。
責められている
わけでもない。
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ただ。
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「少し、
役割の
調整を
しようと思う」
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「……調整、
ですか」
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「最近は
判断を
分散させているだろう」
「それは
悪いことじゃない」
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否定は、
ない。
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「だから、
君の負担を
減らそうと思って」
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優しい。
本当に。
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「……ありがとうございます」
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それ以外の
言葉が
見つからない。
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「期待は
変わらない」
「ただ、
今は
少し
様子を見よう」
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様子を見る。
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その言葉は、
柔らかい。
だが。
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少しだけ、
距離を
感じた。
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席に戻る。
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「……どうだった?」
同僚が
小声で
聞く。
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「……大丈夫」
そう答える。
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本当に、
大丈夫だ。
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責められていない。
評価も
下がっていない。
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それでも。
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任される量は、
ほんの少し
減っていた。
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判断の中心から、
一歩
外れる。
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代わりに、
別の名前が
呼ばれる。
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以前なら、
少し
悔しかったかも
しれない。
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今は。
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「……これで
いい」
そう
思う。
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だが。
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胸の奥に、
小さな
空白が
残る。
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夜。
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「……失望では
ない」
上司の
言葉を
思い出す。
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本当に
その通りだ。
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怒られても
いない。
評価も
落ちていない。
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ただ。
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期待の
形が
変わった。
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強く
押し出される
立場から。
少し
見守られる
位置へ。
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それは、
罰ではない。
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でも。
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以前の
自分には
戻らない。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
静かに
理解した。
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**失望ではない、
という優しさは。**
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拒絶よりも、
ずっと
静かに
距離を作る。
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そして。
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その距離の中で。
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自分が
何を
選ぶのかが、
ようやく
問われ始めていた。
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