第65話 失敗してもいい、という罠
失敗してもいい。
その言葉は、
優しかった。
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「気にしなくていい」
「最初から
完璧な人なんて
いない」
上司は、
笑って言う。
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「……ありがとうございます」
リーネは、
頭を下げた。
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本当に、
そう思っている。
失敗してもいいなら、
少し
楽だ。
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だが。
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失敗してもいい、
という言葉には、
期限が
書かれていない。
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午後。
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「この判断、
少し
遅れましたね」
指摘は、
穏やかだった。
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「はい……
申し訳ありません」
「いい、
いい」
「今回は
想定外も
多かった」
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責められない。
だが、
記録は
残る。
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数字は、
評価表に
反映されない。
だが。
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「様子見」
という
欄が
増えていく。
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別の日。
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「この件は、
難しかったですね」
「でも、
いい経験に
なったでしょう」
そう言われる。
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「……はい」
返事をする。
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だが。
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何が
良くて、
何が
悪かったのか。
説明は、
ない。
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失敗してもいい。
だが、
基準が
分からない。
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夕方。
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「……疲れました?」
同僚が
声をかける。
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「少しだけ」
正直に
答える。
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「でも、
期待されてる
証拠ですよ」
その言葉に、
笑う。
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そうだ。
期待されている。
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だから。
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失敗してもいい。
でも、
失敗し続ける
わけには
いかない。
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夜。
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「……どこまでが
許されるんだろう」
独り言。
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答えは、
返ってこない。
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失敗してもいい、
という言葉は、
限界を
教えてくれない。
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壊れるまで
続けていい、
とは
言っていない。
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だが。
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止まっていい、
とも
言っていない。
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リーネ・アルヴェインは、
その夜、
初めて
怖くなった。
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**失敗が許される
場所ほど、
限界が
分からない。**
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そして。
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限界が
分からない場所で
人は、
一番
無理をする。
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