バリエーション
「こ、こんにちは」
僕は凄いドキドキしていた。
「はじめまして、こんにちは」
目の前には、背の高い美人なお姉さん。
「私も猫飼ってるの。よろしくね」
今日は伯母さんの友達も遊びにくるって前から聞いていた。だから、心構えは出来てるはずだ。だけど……。
このお姉さんも、ナニカになるのかと思うとドキドキして仕方なかった。
「んなー! 白たあああん!!」
伯母さんの声が聞こえて僕はドキッとする。恐る恐る僕はお姉さんの方を見た。
「ねえ、あんまり大きい声出すのやめて」
大人の反応だ。お姉さんは大人だ。
僕は正直安心した。初対面の人が、ナニカになるのはさすがに耐えられない気がしていたから。しかし、僕はそこで安心するべきではなかった。
いきなり、お姉さんさんは床に四つん這いになって携帯を構えた。
ピッ、と携帯の音がする。動画を撮り始めたようだ。そのままお姉さんさんはお尻を突き出した格好で、長い手足を駆使してぬるぬると動く。
怖い。正直怖い。
ピッ、とまた音がした時にはお姉さんは頬を床につけ両手を上げてお尻が上がった、なんとも言えない体勢になっていた。
僕は身動きがとれずそのまま固まっていると、お姉さんはふう、と息をついてその場で正座をした。お姉さんはそのまま白の耳の後ろをくすぐると、白が嬉しそうにその手に顔を擦り付けた。
「白い仔猫。はあ、尊い。すき……」
そう言った後、何かに気づいたお姉さんは白の近くで拾ってものを持ち上げた。
「ねえ、ヒゲ集めてないの?」
「ヒゲですか?」
「私、羊毛フェルトみたいなぬいぐるみ作りたいから毛も勿論集めてるんだけど、ヒゲも集めてるの。ヒゲって希少だから宝物感あるでしょ? 専用の箱も売ってるんだよ」
「わあ、いいですね」
そう言って伯母さんとお姉さんさんはにこやかに会話を始めた。
お姉さんは穏やかだった。穏やかだったけど……。
僕はナニカの豹変にはバリエーションがあるのだとこの日学んだ。




