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プロローグ
僕の伯母さんは、頭のいい人だ。
有名な国立大学を卒業して、大手企業に就職。異例の出世を果たし、その半生はまるで小説やドラマの主人公のようだと僕のお母さんは言った。
だから、僕が困ってどうしようもなくなった時、最初に思い浮かんだのは伯母さんの顔だった。
頭のいい伯母さんなら、きっと上手く解決してくれる。助けてくれる。そう思っていたのに。
どうしてこうなってしまったんだろう。
僕がいけなかったのか。
だって、こんなことになるなんて思ってもみなかったんだ。
神様どうかお願いします、助けてください。
「白ちゃぁぁぁあああああん」
頭がいいはずの伯母さんは、
もうちゃんとした日本語を話すことすら叶わない。
笑顔という言葉じゃ片付けられない、ゆるみきっただらしのない顔は、以前の伯母さんからは想像もつかない。
神様どうかお願いします。
伯母さんの外れてしまった頭のネジを、どうか元に戻してください。
そう願いながら、一匹の猫の前で人とは思えない何かと化した伯母さんを、僕はただただ見つめていた。