二十八話『それぞれの開戦』
「逃げずに来たことだけは誉めてやろう。褒美に苦渋か辛酸か好きな方を舐めさせてやる」
「俺は甘い汁をすすることが仕事なんでお断りだ」
代表二人の挨拶が交わされ、代理戦争が始まる。
白雪さんが横で、マスター情けないとぼそりとつぶやいた内容には概ね同意だが黙秘しよう。
代理戦争開始と同時に僕らは各自が望んだ場所に飛ばされる。
場所は敵エリア、中立エリア、味方エリアで中立エリアと味方エリアにのみ飛ぶことができる。
マップが用意されていて詳細な場所に飛ぶことができるそうだ。僕は味方エリアと中立エリアの境目に飛ぶことにした。
「それじゃあ、武運を祈っているよ」
アダマスフィア家の嫡男で今回の原因、オーグ・フォン・アダマスフィアがにちゃっとした笑みを浮かべた。
そして僕は予定通り境目に転移した。
このとき白雪はアダマスフィア勢力のA級が6人いる森の奥地に転移させられていた。
そしてギルドマスターは予定通り敵がひしめく中立地帯の闘技場に転移させられていた。
僕はそのことに気付いていたが自分の使命を全うすべく動き出していた。
探知が得意な魔物の性質を使って、それを探し当てていた。
「A級6人で疲弊させた白雪を準備を整えた万全の俺が迎え撃つか。こりゃ最高の舞台だ。オーグの旦那は分かってやがるぜ」
「残念ながら貴方にはここで退場していただきます。」
「あ?欠片も魔力の感じねえあのときの餓鬼じゃねえか」
僕はS級探索者に宣戦布告した。
体内で魔物たちが暴れさせろとうるさい。
「なんでよ!」
「なんでA級6人で手も足も出ないのよ!」
「当然の結果。遊んであげる」
彼ら彼女らの攻撃は白雪の前で全て弾けて消えていく。
白雪VSA級6人の戦線は一方的な様相を呈していた。
「ねえねえ、あの開幕のにちゃっとした笑いは何だったの?これがその結果」
「クソが!この化け物が!」
「はは、よく言われる。かかっておいで坊や、人生経験の差を教えてあげよう」
誘いこんでギルド全員で【快晴】ギルドのギルドマスターをタコ殴りにしようとしていた彼らは皆地面に飲み込まれている。
目の前にいる男は地面や大気そのものに同化し、地震を起こし、地面に俺たちを呑み込み、嵐を巻き起こしている。
その姿は風であり地面であり、雨であり、空だった。
【快晴】ギルド、マスターのギフトは【天候】である。
「なんだこれ!びくともしねえぞ!」
「俺の最大火力で罅の一つも入らねえってのか!」
アダマスフィアのギルド員として雇われた陣地襲撃役の冒険者たちは自身の最大火力でびくともしない城壁に阻まれていた。
「今日も拙者は引きこもりでござるか。悲しいなあ。拙者を外の世界に連れ出すヒロインの一人や二人はいないものだろうか」
守備隊長は一人陣地の中で今日も元気に引きこもっていた。
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