追想:痛み
過去を振り返る。
つい昨日のように思い出される、闘いや、日常の些細な笑顔、仲間たちとの日々・・・。
心が、疼いている。
頭は絶えず痛み、しかしながら心の疼きの方が、私にとってはひどく痛かった。
徐々に頭痛が激しさを増している。
速く書き記さねば。
俺はその日、自らの命の余りというのを《声》から聞いた。
その《声》が聞こえるようになったのも、いわくその予兆の一つだという。
つまるところ、俺に遺された時間は僅かである。
この手記の筆者は近いうちにいなくなるのだ、この記憶を後世へと、正しく伝えることのできる者を捜さねばなるまい。
ここでいう正しさは正確さではなく、善悪の判断を憲法や法律、社会の言うそれではなく。
自らの美徳、善意、良心に従って判断できることである。
そのような者は、この記憶を記している《俺にとっての今》にはもういない。
いずれ誰かが伝えるであろう《その後の物語》を見聞すればわかるのだろうが、哀しいかな、その頃には恐らく俺はいない。
その語り口を、ぜひとも聴いてみたかったものだがそれは叶わないことを、俺は直感的に理解してしまった。
この記憶を受け取るのは誰だろうか。
その人はどんな風に世界を描くのだろうか。
世界の中で、あの人々は生きているだろうか。
とんだ醜態を書き記してしまったものだが、これは老人の戯れ言と思って飛ばして読んで頂いて構わない。
老いて暇の増えた身だ、喋るやら何か書くやらしか趣味のない、寂しい老人だと映ることだろう。
なんでも、この頭痛。
医者が診ても全く解らないらしい。
薬はもちろんない。
痛み止めが出たところで、それさえも効かない。
頭痛の原因は解っているのだが、それを言ったところで医者のような理性的職業に就いている人々は大抵、老人の戯れ言と相手にすらしない。
というのも、この頭痛は、かつて闘った女騎士にやられた傷の名残なのである。
その女が、またとんでもない怪力でな。
チョップ一発でも食らえば頭がかち割れるんじゃないか、と心配になるくらいだった。
名前をなんと言ったかな、あの人は・・・。




