遭遇
遭遇:そうぐう
出会うこと。
今回は、『あの事件の後』の話です。
綺麗な景色に、息は漏れるばかり。
ハルトは深い蒼に染まった森の木々を眺めて、思い出せない過去を思い出そうとして、静寂だけが鳴り響く時間を潰していた。
とどのつまりは、この少年は何も出来ず途方に暮れていたのである。
「はぁ・・・」
そうしてまた、ハルトはこの美しい景色に息をつく。
彼はまさに、かの画家の言うところの『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』というような、至極混沌とした心境であった。
「ここはどこなんだ・・・?」
自分は誰で、なぜ、いつここに来たのか。
そしてどこへ向かいたいのか。
何一つとして、理解していなかったのだ。
否、理解しようとしていなかっただけかも知れないが。
「・・・」
考えても、結局考えて分かることではない。
ひとまず、あるいはとにかく、出口のようなモノを探してみることにした。
かなりの時間、捜しただろう。
在ったら苦労はしなかったのだが。
作者が書いたこれまでの流れを見ていた貴方たちであれば無論、落ちてきたのだから、出口というモノがどれであるかという問いには『上だ』と答えてくれるであろう。
しかしながら、彼は記憶というモノがかなりの範囲で消えている。
もちろん、自分が誘拐されたことも。
自分に将来を誓った女性がいることも。
自らが旅をして出会った人々も。
・・・何年間分の記憶が抜け落ちている彼が考えていたことというならば、自分には受験があるのだから、こんな奇妙なところに長居している暇はない、といったところである。
「誰ですか、あなたは・・・?」
不意に声を掛けられ、ハルトの背中はビクン、と跳ね上がった。
「俺・・・か?」
貴方以外に誰もいませんよ、とその人は笑う。
金色の長髪が優しく、日の光を照り返す。
綺麗だ、と思った。
蒼い世界の中で金色に煌めく彼女は、『綺麗』以外の言葉では形容できなかった。
目鼻立ちは整って、薄い衣を纏ったその姿はまさに、地上に降り立った女神だった。
「貴女は・・・」
ふわりとその人から香る、儚げな花の香に言葉が出ない。
「大丈夫です。」
と、その人は座ったままのハルトを優しく抱き、耳元で囁く。
初対面の人に、ましてや異性に抱き締められているというのに、ハルトはそれを拒むどころか受け入れてさえいた。
「あなたは何も、恐れなくていいです」
なぜか、その行為に嫌な気はしていなかったのである。
「辛い思いをしたんですね・・・」
優しい。優し過ぎる、が、とても暖かく、そして凍てつくようなモノを感じた。
ハルトは慌てて、少し距離を置こうとした。
すると彼女が。
「気付いたのですね。私がただの者でないことに」
「ああ。あなたは・・・」
その人は、人ならざる者だった。
優しく、そして恐るるべき自由と愛の権化。
「フレイヤ」
予告なしで新キャラを出すのは楽しいですね。
どうも、あーもんどツリーです。
今回もご読了ありがとうございます。
章タイトルの革命というのはいつ起こるんでしょう。
話が早いかも知れませんが、ここで終わりの話を。
私、話を書くときになぜか《結末》が見えて、そこにたどり着くまでの話をその時々で考えつつ書いていくスタイルなんですね。
そして、この物語の結末。
神のみぞ知る結末、とまではいきませんが、そんな予想外のオチにしていく予定です。
できたらいいなぁ。
と、作者の呟きは置いといて。
次回もよろしくお願いします。
それでは。




